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1/もう1人の盗賊

あてもなく冒険者ギルドから店が多い町の方へ歩きながら、これからどうするかを考える。


また冒険者ギルドでパーティーを組むか?

いや、それではまた同じような事になるかもしれない。

ソロで魔族退治でもするか?

いや、ソロで戦うのに盗賊のスキルは向いていない。



答えがでないまま歩いていて、ふと思う。


今日の宿屋、どうしよう。


今までの俺は毎日魔族の討伐クエストをクリアし、その報酬でその日生活していた。


あの時のパーティーは5人いたのだが、それでも全員分賄えるほどの額が報酬としてでていた。なんでも命がかかっているからそれ相応の報酬はださないといけないとの考えでこうなっているそうだ。


今日の午前に討伐した中級スライムの報酬は、まだもらっていない。その状態で追放されたので渡してもらうこともできない。

全く酷い話だ。



そう考えていると、騒ぎが聞こえてくる。


「おい待て。泥棒がよぉ!!」

「警戒心なさすぎなんじゃない?おっちゃ〜ん。」

「くっそ。おい!」


聞こえてきたのは嘆くおっさんの声と、それを煽る女の声だった。


泥棒騒ぎか。盗賊のスキル持ちとしては気になる話だ。やることもないし、見に行ってみるか。


「“隠密”」


俺は隠密のスキルで姿を隠し、もうひとつスキルを発動する。


「“瞬発”」


この瞬発は走る力を最大まで上げるものだ。しかしこの能力は自分にしかかけれないため、パーティーにいる時は使えなかったのだが。


瞬発の効果で手に入れた速度で騒ぎの方へ走る。


「おいガキ!」


「へっへーん。追いつけないよーだ。」


「よっと。」


俺は女の手を掴む。


「へ?うわっ!」


女は勢いで転んでしまいそうになり、ギリギリの所で止まる。


「あっぶねー!てか誰!?なんで私に追いつけんだ!??」


混乱している女の元へ、さっきの声の主のおっさんが息を切らしながら追いつく。


「はぁ、はぁ、返してくれ、わしの金貨。」


「うっわ!追いつかれちゃったじゃんか!どうすんのこれ。」


女の問いに、俺は当たり前の答えを返す。


「いや返してやれよ。それおっさんのだろ。」


「イヤだよ!これがなきゃ食べるもんがないんだ。」


「それはわしもそうじゃ!」


女とおっさんが睨み合う。


「返してやれ、それはおっさんが稼いだもんだ。」


俺がそういうと、女は渋々金貨を差し出す。このまま騒ぎを大きくしたら、さすがに警備兵が来ると判断したのだろう。


「くっそ!私が失敗するなんて、覚えてるんだな!隠密!」


そう言い残し、女は消えてった。


「くっそ、またあの変な能力で逃げやがった!」


おっさんが怒りをあらわにする。


「おっさん金貨減ってないか?」


俺が質問する。


おっさんは確認をし、ほっと安心したような素振りを見せる。


良かった。取られてはいないようだ。


今度はおっさんが金貨の一枚をこっちに渡してくる。


「お前、取り返してくれてありがとな。これはほんのお礼だ。」


おっさんがこっちに笑いかけてくる。


「いいですよそんな。」


「こういうのは貰っとくのが筋だぜ、坊主。」


そう言われ、俺は受け取る事にした。


「ありがとな、じゃ。」


おっさんは最後にお礼を残し、走ってきた道を戻っていった。


「さて、と」


1人取り残された俺は、なんだかんだで解決した今日の宿代に感謝しながら、一つのことを考える。


あの女はなんだったのだろうと。


最後に女は確かに隠密のスキルを使って消えていった。最初に逃げていた時も煽っていたために場所がバレていたがおっさんの言う通りなら使っていたのだろう。


だが、問題は一つある。


隠密のスキルが使えるこの盗賊スキルは魔族用スキルであり人間でこのスキルを持つことはないと言われている。


だから俺は人間なのに魔族スキルを持つという体質に関して冒険者ギルドで何度も確認をされた。


俺もなぜこの盗賊スキルが開花したのかは分からない。しかしスキルは一度開花するとそのスキルしか使えなくなるので、とりあえずこのスキルを伸ばしている。


もしあの女も俺と同じで人間ながら盗賊スキルを持っているなら、その理由を解明することができるかもしれない。


「話を聞いてみるか。」


俺はあの女を追う事にした。


「“瞬発”」






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