表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

餅角ケイのエッセイ単品寄せ集め

祖父を抱く

作者: 餅角ケイ

実話です。





 数年前より癌を患っていた祖父が90歳で逝った。亡くなる一月ほど前に入院したらしいが、私が最後に会ったときは歩行もしてピンピンしていたから、未だに受け入れられず、祖父の自宅に行けば「おお〜」とか言って普通に出迎えてくれそうな気さえする。



 連絡が入ったのはちょうど国家試験があった日の翌日で、「もしかしたら試験が終わるまで待っててくれたのかな」とか「昨日部屋にビュンビュン飛んでいた奇妙な光は祖父だったのかな」とか色々なことを考えた。


 私の国家試験の前日に父親(祖父の息子)が命に関わる病気を発症した疑いで救急車で搬送され入院となってしまったため、父は祖父の葬式に参加できなかった。

 どうして重なってしまったんだろう。実の親の葬式に出られないだなんて。父がとても不憫に思え、私にとってはそのことがかなりショックだった。

 また、一人暮らしに早く慣れるため、とかねてから早めに引っ越し業者を予約していたのだが、それも裏目に出る形となってしまった。祖父の葬式の数日後に引っ越しを控える形となり、今までの人生の中で類を見ないほど心も体もバタバタした一週間になった。


 ちなみに父は手術を受け無事に退院した。「場合によっては葬式が2つ重なっていたかもしれないな」とか病院のベッドで母の前で呟いていたらしい。笑えねえ。


 父の緊急入院。国家試験。祖父の葬式。引っ越し。多分この一週間のことは一生忘れないと思うし、父も同じように私に言っていた。



 話を祖父に戻す。90歳だったが、手先が器用な人で、身の回りのことは自分一人でやっていたし、最後までボケずにいたのだからすごいなと思っている。濁音まじりの方言がきつすぎてたまに何を言っているのか分からなかったけれど。

 実家とは距離がやや遠かったので頻繁に会いにいけたわけではなかったが、それでも幼いころから可愛がってもらっていた。赤ん坊だった私を抱っこしてくれたこともあったらしい。


 そんな私が大きくなって、今度は私が骨になった祖父を抱いた。かつて祖父に抱かれていた孫が、今度は祖父を抱っこする。なんともいえない変な感じだ。

 皆で車で寺に向かう途中に、たまたま私は祖父を預かることになり、一時的に膝の上に乗せて抱いていたのだ。すっかり小さくなってしまった祖父は、まだほんの少し温かかった。


 葬式にも最後まで参加したのに、たまにどうしても死を実感できない。けれどたまに「ああ、おじいちゃん亡くなっちゃったんだな」と思えるときもある。今はまだどっちの気持ちもあるもんだ。とにかく、本当に天国や極楽浄土があるのなら、幸せにしていてほしい。おじいちゃんありがとう。おばあちゃんにもよろしくね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ∀・)すごくリアルなエッセイだなと思って読ませて頂きました。そこにある確かな家族愛に心が奪われたようでもありました。お爺様、きっと素敵な人だったんでしょうね。この話を赤裸々に語られた作者様に…
[一言] 実話と聞いて、何と感想を書いていいんだろう、そもそも書いていいんだろうかと迷いましたが、その時の忘れられない体験が切々と伝わる良い文章だなと思いました。 お祖父様はきっとケイさんの試験やお…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ