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ゆるふわ教訓話(童話?)

お題は「曇り」「テント」「きわどい主人公」ジャンルは「童話」

図書館にて、宿題を終えた二人の高校生が自習室から出て廊下を歩いていた。

彼らは普段ならこの後に近くのコンビニに立ち寄って買い食いをするところだが、今日はふらりと児童室に立ち寄る運びとなった。

二人は幼少期を思い出して書架から絵本を手に取り、パラパラとめくりながらたわいもない雑談を始めた。


「うわー、これとか小さいころに読んだわ。懐かしいなぁ」

「俺もそれ読んだわ。てか、その話って改めてみるとえげつないよね。悪者とか最後は火あぶりになるし」

「まあ、童話って結構残酷な描写が多いし、設定がきわどい主人公とかも多いよな。いじめられてたり、親を殺されてたり」

「もっとゆるふわで教訓みたいなものがないストーリーの方が疲れないよな。例えば……」



きょうは まちにまった たろうくんのたんじょうび。

たろうくんは まえからほしがっていたテントを おとうさんにかってもらいました。

たろうくんのすきなきいろで さんかくのかたちをしたテントです。

そして ちょうどそのひは おてんきもよくはれた ぜっこうのキャンプびよりでした。

なので おとうさんはたろうくんをキャンプにさそいました。

「たろう せっかくだし おとうさんといっしょに ちかくのはらっぱでキャンプをしようか」

「うーん きょうはいかない」

しかし たろうくんは おとうさんのさそいをことわりました。

きょうは きのりしなかったのかなぁ と おとうさんはおもいました。


つぎのひもいいおてんきで おとうさんはまた たろうくんをキャンプにさそいました。

「たろう いいてんきだし きょうこそ そとでキャンプをしないか?」

「おとうさん さそってくれて ありがとうね でも きょうもいかない」

でも たろうくんはキャンプにでかけようとしません。

そんなことも あるさ と おとうさんはおもいました。


でも つぎのひも またつぎのひも そのまたつぎのひも いいおてんきでしたが たろうくんは キャンプにでかけませんでした。

おとうさんは たろうくんのかんがえがわからなくて とてもふしぎになりました。

どうして たろうくんはキャンプにいかないのだろう?

どうして たろうくんはテントをほしがったのだろう?


さらにつぎのひ 

きょうのおてんきは くもりのちあめのよほうで そとであそぶのにはむきません。

おうちのまどからそとをのぞくと くろいくもがやってきていて いまにもあめがふりだしそうな そらもようでした。

おとうさんも きょうはテントをはっても そとであそべないし キャンプはしないほうがいいなぁ と おもいました。

だけど たろうくんはウキウキしたようすで テントをもってそとにでていきました。

それをみたおとうさんは たろうくんをとめます。

「たろう もうすぐあめがふりだすから おうちにはいりなさい」

「いいや あめがふるからテントをはるんだよ おとうさんもてつだって」

そういって たろうくんは テントをはりはじめました。

ふしぎにおもいながらも おとうさんは たろうくんのもくてきがきになって テントをはるのをてつだいはじめました。

そうやって ふたりできょうりょくして テントをはりおえると ちょうどあめがふってきました。

「さあ おとうさんもいっしょにテントに はいろう」

たろうくんは そういって うれしそうにテントにはいっていきました。

つづいて おとうさんものそのそと テントにはいりました。

「かんいっぱつ ぬれずにすんだね さて たろう きょうにかぎって テントをはろうとしたのはなんでなのか おしえてくれるかな?」

おとうさんは きになっていたぎもんを たろうくんにたずねました。

すると たろうくんはあおむけにねそべりながら こういいました。

「ぽつぽつ テントにあたる あまつぶのおとを なかからこうやってきいてみたかったんだ それでね テントのそとがわをつたう あまつぶのかげを みていると なんだか あめのなかにいるのに ぬれないのがふしぎで ワクワクするけど このテントのなかだけが せかいからきりとられたみたいで さびしいような そんなかんじがするの」

「ふむ どれどれ おとうさんもやってみようかな」

おとうさんはたろうくんのよこにねころびました。


なかなかおちつくじゃないか。


ぽつぽつ ぽつぽつ あめのなかに ひとつだけたたずむテントのなかで そのねいろだけがひびいていました。



「毒にも薬にもならないけど、こんな感じでどう?」

「割とそれっぽくていいじゃん、3点」

「3点ってなんだよ! 何点満点中だ?」

などと童話らしきものを即興で創作しつつ会話が盛り上がってくると、彼らの背後から音もなくニュッと司書のお姉さんが現れた。

彼らは意識の外から突然に現れたお姉さんにたじろぎ、驚きの声を漏らした。

「もう、そんなに驚くことないじゃない。それと、ここはおしゃべりする場所じゃないよ、わかってるよね?」

図書館の常連である彼らはお姉さんとは雑談することもある間柄で、普段からこのように砕けた接し方をされていた。

「す、すみません。置いてあった絵本が懐かしくてつい童心に返って……」

「騒いでしまってごめんなさい」

「ちゃんと謝れて感心です」

お姉さんは腕を組んでうんうんと頷いてからこう切り出した。

「そういえば、さっきのちょっとアンニュイなお話、最初から聞いていたけどなかなか良かったよ。3点満点中3点!」

「えっ、そのくだりを入れてくるってことは、僕らの話を全部聞いてたんじゃないですか。立ち聞きはよくないですよ。というか話してる人はすぐ注意しましょうよ」

「会話がヒートアップしてきたら注意しようと思ってたの。立ち聞きと言われても“壁に耳あり障子に目あり”と言うでしょ。今回の失敗を教訓にしたまえ!」

 お姉さんはなぜかふんぞり返って得意げに言い放った。

「なにか使い方が微妙に違うような気がしますが……。ただ、それを言うならお姉さんが学ぶべきは“親しき中にも礼儀あり”ですよ」

それを聞くとぐうの音も出なかったようで、ごまかすように彼女は首をかしげてニコッと笑ってみせた。それに合わせて彼女の黒髪のポニーテールがふわりと揺れた。

これは童話なのか…?

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