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第13話 記憶のない国

6/4文章の見直しを実施しました。

6/11再度見直し。



 ティエラが統治する予定のオルビス・クラシオン王国。


 統治者である国王の座を継承する際には、必ず三つの神器を必要としている。


(だけど、今、城には玉の守護者であるルーナが所持する宝玉しかない……)


 ティエラ、というよりも王国が本来所持していた神鏡は、先の剣の守護者が起こしたという事件の際に紛失していた。


(以前、調査をおこなっているとルーナから聞いていたけれど……まだ神鏡が発見されたという報告は受けていない……)


 そして、神器の一つである神剣は、事件を起こしたというソルが所持したままである。


 これまでにも神器のない状態での即位がなかったわけではない。けれども、そうした場合には、加護が受けられず、国内で災厄が起きたという伝承が残っているそうだ。


(だから、三つの神器が揃ってから即位した方が良いのよね……)

 

 けれど、城から出ていったソルから神剣を取り戻すことは、かなり難しいと考えられていた。



「神器が揃わぬまま、姫様が即位した場合、玉の一族からも反発が出てもおかしくはありません。そもそも、鏡の神器がなき今、姫様が王族だと言う証明もしづらいと言えます」


 ルーナが、ティエラにそう伝える。


「それに……剣の一族がどこかから、偽の王を祭り上げてもおかしくはない」


(王族だと証明出来ない上に、偽の王まで出てきたら……)


 そう言われ、ティエラは不安を覚えた。



「ですが、今回の国王暗殺の一件は、まだ王国内の上層部の者たちしか存じておりません」



 そう――。



 国王が亡くなったというのに、妙に城内が落ち着いていると感じていたのは、一部の貴族達しか真実を知らなかったからだ。


 国王の死は、大多数の者達にはまだ隠されている。


(ほとんどの貴族達には、お父様は病気で身体を休めていると知らされているそうね……)


 元々、国王は病気がちだった。成人が近くなっていたティエラに、癒しの力が移行していたこともあり、彼の体力は著しく低下していた。そのため、なんとかごまかせている。


(そもそも、私が驚かされたのは――)


 王国の城だと思っていた建物は、ティエラが住む城の一角でしかなかったのだ――。


 これまで、ティエラは最低限の侍女や騎士にしか出会わなかった。だからこそ、彼女が記憶喪失になっていることも、周囲には気づかれずにいる。


 だが、これからも大丈夫なのかと言われるとそうでもない。


(私の誕生日も近いらしいし――)


 この国では、十七になると成人とみなされる。

 病気がちな国王が、次の誕生日に十七歳を迎えるティエラへと、王位を継承するという流れ。その流れを、ルーナが作ったそうだ。


(継承の場に、国王であるお父様が現れないのはおかしいと皆分かるわ……)



「姫様のお誕生日までに、どうにかしたいのですが……」



 ルーナは伏し目がちに、ティエラに告げる。

 国王暗殺と彼女の記憶喪失を隠すために、彼がかなり魔力を消耗しているのを知っている。

 体力の限界近いところで、ティエラへの時間を割いてくれていることも……。


「仮に神器が揃わずとも、貴女の伴侶となるこの私が、姫様を無事に女王陛下へと即位させてみせます」


 ルーナの優しい蒼い瞳。


 ティエラの女王即位の儀の際に、彼女とルーナとの婚礼の儀も同時に行われると、ティエラは聞かされている。


(ルーナは、優しくて、とても魅力的な男性……)


 このまま記憶がない状態で夫婦になったとしても、きっと彼女を大事にしてくれて、幸せな日々を過ごせるだろう。



 けれど、どうしても――。



 紅い髪の青年と出会って以来、彼のことが引っ掛かってしまう自分がいる。



(ソル……私の幼馴染みで護衛騎士だったという……)



 ティエラの記憶が戻らないまま、即位の儀と婚礼の儀は残り三月に迫っていた。






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