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幕間という名の小休止

6/3文章の見直しと会話を追加しました。




「もう、本当に一体全体どうなってるんですか~~? 姫様に忘れられるとか~~。グレーテルはすごくショックなんですけど~~」


 そう話す女性の名は、自称通りグレーテルと言い、ソルの付き人をしている。

 長い黒髪を、左右の高い位置でリボンでまとめ、肩先まで垂らした髪型をしている。そして、使用人が着る黒を基調としたワンピースに、白いフリルを多くあしらったエプロンを着用していた。


「グレーテルさんほど、印象の強い女性もいらっしゃらないんですけどね~~」


 グレーテルに返すのは、糸目の男アルクダだ。アルクダも、グレーテル同様、ソルの付き人の一人だ。アルクダは、ツンツンとした淡いピンク色の髪をしている。釦ではなく紐で結ぶ若葉色の麻の上衣に、茶色の下衣を身に付けていた。

 一見すると、貴族の嫡男であるソルに仕えるような見た目をしていない。


「アルクダさんにそう言われるのは、グレーテル、なんだか釈然としないんですけど~~」


「そうですか? 僕としては僕ほど印象が薄くて、仕事しない男もいないと思ってるんですけどね」


「え~~アルクダさん、印象は薄くないですよ~~、仕事はしないですけど~」


 二人は延々とお喋りを続けている。


「そもそも僕はあのお姫様苦手なんですよ。ソル様が無茶するから。大体ソル様が無茶して、大変になるの僕なんですから」


「え~~、姫様を苦手とか言うなんて、やっぱりグレーテルはアルクダさんとは仲良くなれそうにありません~~」


「グレーテルさん、そんなこと言わないでくださいよ~~」


 本当に二人は、ただ喋り続けているだけだ。

 間延びした二人の不毛な遣り取り。それを端からみていたソルは、ため息をついた。


「それにしても、ソル様!」


「……なんだ?」


 グレーテルが、突然、ソルを大きな声で呼んだ。

 挙げ句の果てに、彼女は主であるソルを指差した。


「姫様のドレス……! かんっぜんっに! ルーナ様の好みでしたよ!」


 彼女は強い口調で言い切った。


「は……? ティエラのドレス……?」


 先程再開したティエラの格好を、ソルは思い出した。

 胸元の開いた白いヒラヒラしたドレスだった気がする。

 

「寝る前ぐらいの時間だから、ああいうドレスを着てることも時々――」


「いいえっ! あれは記憶を失った姫様に、あんな格好やこんな格好をさせてますよ! 絶対にそうです! グレーテルが断言します!」


 ソルの答えを遮るように、グレーテルは叫んだ。

 ティエラは、落ち着いた色合いのドレスを好んで着ていた気はする。

 ただ、寝る前に限っては、リボンの多いドレスをティエラが着ることもあった。


「それで?」


 グレーテルは息を吸い込み、ソルに向かって一気に捲し立てた。


「最近、どこかの誰かさんの好みか何か知りませんけど、姫様はずーっと地味目な格好が多かったから、可愛かったなぁって!」


「は――?」


「グレーテル、ルーナ様は苦手だけど……姫様のドレスの好みは、ソル様よりもルーナ様寄りなんですよ~~!」


 ソルは彼女に何も答えなかった……。


 現状で抱くべき感情ではないかもしれない。


 ウムブラとヘンゼルという優秀な付き人を持つ、白金色の髪と蒼い眼をした気に食わない青年――。

 ソルはルーナのことを、今日ばかりは羨ましいと感じずにはいられなかった。





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― 新着の感想 ―
[一言] こちらでははじめまして(*´ω`*) ウムブラとアルクダ。 ヘンゼルとグレーテル。 そして、ルーナとソル。 鏡を通して対比するような存在がミステリアスで、続きが気になります(*´ω`*) …
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