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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第4章 S級冒険者
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83話 魔女の隠れ家

「どうして魔女のお婆ちゃんがこんな所に?」


「それはこっちの台詞だよ。お前さん死んだんじゃなかったのかい?」


しまった、藪蛇だ!




お婆ちゃんは林の奥に進んで行った。


進むごとに木々が増え、もう林というより完全に森である。


お婆ちゃんの手元には火の球が燃えていて、私は魔物の襲撃がないか気が気でなかった。


「着いたよ」


低木の目隠しを越えると、その向こうには開けた空間があった。


「テントだ!」


二本の木にロープを渡し、そこに布を掛けて簡易的なテントが作られている。


右手にも同様のロープがあり、洗濯物が吊るされていた。


(物凄い生活感だ!)


「何を呆けてるんだい。さっさと着いて来なしゃれ」


「えっ、ここが隠れ家じゃないんですか?」


「もっと奥だよ」


更に先まで着いて行くと、


「はえーすっごい…」


隆起した地面に、洞穴が大口を開けて構えていた。


「これ、お婆ちゃんが魔法で作ったんですか?」


「そんな無茶な真似、出来るとしたってあんたぐらいさ。自然に出来た洞穴に間借りしているだけじゃよ」


というお婆ちゃんであったが、中には下り階段があり、降りた先には木製の扉も作られていた。


途中に水の満ちた瓶があって、お婆ちゃんは杓ですくって一杯飲んでいった。


虫とか浮いてないか心配に思ったけれど、嗅ぐと仄かに薬のような匂いがした。




扉をくぐると、また下り階段があった。


石の天井からは沢山の鍋が吊るされている。


蔦のような植物も垂れていたが、よく見ると紐で縛ってあった。


「採ってきた野草を干しているのさ」


階段を降りると、六畳くらいの空間に物がびっしり配置されていた。


壺、テーブル、棚、壺、炉、物置、壺、壺、壺。


(どこで寝るんだコレ?)


手前の壺には植物が茂っている。


観葉植物ではなさそうだ。


炉に火を入れると、部屋の中はすぐに温かくなった。


煙はどこかから逃がしているらしい。


「残り物だけどスープがあるでな。火にかけ直すから、少し待ってな。そこの物置の上にでも座っておいで」


スープはキノコと野菜がメインだったが、追加で塩漬け肉を突っ込んでくれた。




「美味しい!仄かに果物みたいな香りがする。このお肉も凄く柔らかいし、一体何のお肉を使っているんですか?」


「人間の赤ん坊さ」


「ブフーッ!!」


「クァックァックァッ!冗談さね!」




「そういえば、しばらく姿を見ていませんでしたが、お婆ちゃんはずっとこの隠れ家に?」


私は子オークの肉(結局赤ん坊ではあった)を食べながら話をした。


「そうじゃよ。私は面倒事には関わらない主義でね」


冗談めかして笑う魔女。


だが、その瞳には暗い色が漂っている。


百年前まで、魔女は異教徒として迫害されていた。


今でこそ白魔女と呼ばれ、公に認められてはいるが、


「この手の政争なんかには、関わらないに越したことはないのさ」


ということであった。




「そういえば、あんたの浄化には死人を生き返らせる力があるんだってねえ?」


ギクッ!


「聖人には色々な伝説があるけれど、死人を生き返らせるとは初耳だねえ」


ギクギクッ!


「しかも死んだはずのお前さん自身も生き返っている。私がどれだけ驚いたか分かるかい?こんな夜中に誰かが探知に引っかかったと思ったら、死んだはずの聖女様だったんだからね。初めはゾンビじゃないかと疑ったよ」


ギクギクギクギクッ!


「ゾンビといえば、もしや、あんたネクロマンサーかい?」


何て勘の鋭いお婆ちゃんなんだ!


「ま、まさか。私は聖女ですよ?ネクロマンサーとは相容れない存在ですよ。ハハハ…」




人を殺さないとネクロマンサーにはなれない。


だが、人を殺したら聖人にはなれない。


「確かに、そうなんだよねえ…」


考え込む魔女を前に、私は冷や汗が止まらなかった。


(いっそ白状してしまおうか?相手が魔女なら…いや、しかし…)


ネクロマンサーは魔物扱いだ。


死者を復活させることは魂への冒涜であり、教会で禁忌事項に指定されているのである。


もし私がネクロマンサーだとバレたら、S級冒険者どころかS級の魔物に認定されてしまう。


だから私は王都を出る時、誰にも何も言わないと決めたのだ。


「…ま、言いたくないなら言わなくてもいいよ」


「えっ、いいんですか?」


もっと厳しい追求を覚悟していた私は、つい確認を取ってしまう。


「お前さんには一度命を助けられているからね。今日のところは見逃してやるわい」


四年前、獣人達に捕まっているお婆ちゃんを私は助けた。


(自分が脱走するついでだったけれど…)


お年寄りには優しくしておくものだなあ、と私は思った。




「誰にだって隠し事はあるものさ」


「お婆ちゃんにもあるんですか?」


「この家自体が秘密の隠れ家じゃよ」


「外に天幕張ってありましたけど、見つからないもんですか?」


「こんなとこに来るのは、迷子か、後は追放刑になった犯罪者くらいのものじゃ」


「…それはそれで大丈夫なんですか?えっと、魔物の襲撃とかも?」


「無いね。四方に魔除けの香を仕込んである。いるかい?魔女謹製・魔除けの香」


「下さい」


「一包み銀貨一枚だよ」


「金取るんですか!?」


「当たり前さね」




「その辺にある物も全部表には出回っていない品だよ」


「あの、ずっと気になっていたんですが、あの剣も何か、特別な一品なんですか?」


壁には一本だけ剣が飾ってあった。


「それは、既に滅びた『人食い民族』の骨から作った『人骨剣』さ」


「ひ、人食い民族!?」


「聖人の骨に比べると何枚か落ちるけれど、中々の名剣じゃよ。ただ、私は剣なんか振るえなくて、少々持て余してる。お前さん、いるかい?」


「ええ…ちなみに、お幾らですか?」


今、私は丸腰である。


人の骨の剣なんてゾッとしないけれど、武器を調達出来るならした方がいいような気がした。


「金貨数十枚ってところかねえ」


「それは、買えないです…」


墓を出る時にいくらかお金は持ってきたが、数百万円もの待ち合わせは流石に無い。


「待ちな。金が無いなら、あんたの髪でもいいよ」


「え、髪ってそんなに高く売れるものなんですか?」


「そんなわけないだろう。綺麗な長い髪でせいぜい金貨半分くらいさ。ただし、あんたの髪は別だよ。聖人の髪だからね」


「はあ…えっと、肩口くらいまでで大丈夫ですか?」


魔女のお婆ちゃんはニンマリ笑って頷いた。




「こいつは私が作った惚れ薬の原液さ。うっかり飲むと薬の世界から帰ってこれなくなる」


オーケイ、分かった。


どうやら、この部屋には物騒なものしか無いらしい。


「き、気を付けます」


「十倍くらいに薄めるのが適量じゃ。いるかい?一瓶金貨一枚でいいよ」


「結構です」


「そういえば、お前さんは王子の婚約者だったね。じゃあいらないか」


「こっちの小瓶の液体も、何か秘密の薬なんですか?」


「んん?それは未完成品だよ」


多分またろくな薬ではないだろう。


そうは思ったが、しかし怖いもの見たさで私は聞いてみる。


「一体何の薬なんですか?」


「脚を伸ばす薬さ。欲しいって奴が多くてね。毛生え薬と似たようなもんじゃよ」


「…何か、急に平和な話になりましたね…」


「聖女だったことを隠すなら、何本か持っていくかい?」


「頂けるんですか?」


「金は取るよ。ただ、未完成品じゃからのう。持続時間は一日しか持たない上、飲むと激痛が走るから、まあ金貨一枚でいいよ」


「激痛が…」


しかも、結構高い。


(でも、何本かは売ってもらった方がいいかもしれない…)


「…ちなみに、性別を変える薬とかはあったりしませんか?」


「無いよ。何だい、あんた生やしたいのかい?」


「いえ、まあ…。あ、脚を伸ばす薬は三本下さい」


「三本でいいのかい?五本買うなら防寒用のマントと変装用の仮面も付けるよ?八本買うならおまけでもう二本付ける」


やだ、お買い得!




私の所持金は墓からくすねてきた金貨が十枚、大銀貨が五枚、銀貨が十枚だ。


しめて百十万円ほど。


初めての旅であったため、当面の生活費に困らないよう多めに持ってきてはいたのだが…


(むむむ、流石にここで八十万の出費は痛い…)


「七本で一本オマケとかには…?」


「路銀を残すにしても、金貨二枚で足りるんじゃないかねえ?」


「そ、そうですか?じゃあ、八本下さい」


押しに弱い私だった。


かくして金貨八枚を失った。


「う、持ちきれない…」


「おやおや、専用の入れ物がいるようだねえ。革造りの良いものだけど、銀貨五枚でいいよ」


「う、下さい…」


めっちゃボラれた。

主人公の所持品

・金貨2枚(24万)、大銀貨3枚(3万6千)、銀貨10枚(3万)(計306,000円)

・長袖の服(男物)

・長ズボン(男物)

・木彫りの面

・フード付き防寒マント

・怪しい剣

・皮のポーチ

・魔除けの香3つ

・長身薬10個

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