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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第4章 S級冒険者
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82話 神様から授かった新たな力

私の背にはゴブリンが三、四体乗っていた。


両腕両足は押さえ込まれ、もがいても抜け出せない。


そしてゴブリンの一体は、私の尻を両手で滅茶苦茶に揉みしだいている。


『ゲヘヘ…』


(ひぃ!こ、こいつら、私で()()()()()やがる!)


舌舐めずりの音が聞こえた。


私の背でナニかがムクムクと大きくなるのを感じる。


怖気が走った。


例えるなら、身体中を汚い虫が這いずり回っているような感覚だ。


「うおおああああああああ!浄化!浄化!浄化!浄化!」


私は大慌てで浄化を周囲にばら撒いた。


『ギャッ!?』


『何ダコレハッ…』


『ギャァァァァァ…』


ゴブリン共は全滅した。


「はあ、はあ、あ、焦った…。ううううう気持ち悪い!まだゴブリン共の感覚が残ってる、浄化!」


自分に浄化を使い、汚れた身を何度も清めた。




「…ファイア」


起き上がった私は周囲を警戒する。


が、もう魔物の姿は無いようだった。


代わりに、砂が大量にぶち撒かれている。


(ゴブリンの砂だ…気持ち悪)


今、私はゴブリンを全員滅してしまったが、特に何の後ろめたさも感じていない。


虫を潰すのと変わらない感覚だった。


(殺すのに慣れた?…いや、今のは正当防衛だった)


それに、連中の会話が聞こえたから。


「ゴブリンは本当に下痢糞野郎だったな。早く冒険者に絶滅させられればいいのに。何のために生きているんだアイツら。って、今はそれよりも…」


他に考えなければならないことがある。


私は何故、ゴブリン語を理解出来るようになったのか?




「…やっぱり、アレの所為だろうか?」


私は神様から追加で一つチートを授かった。


何でもいいと言われたので、私は悩みに悩んだ。


そして選んだのは、男体化でも瞬間移動でも異世界スマホでもなく。


『動物と会話する能力』であった。


…振り返ってみると、何故瞬間移動にしておかなかったのか、悔やまれて仕方がない。


瞬間移動があれば今頃獣人国に着いていたかもしれない。


しかし、AとBで悩んでいる時に突然Cの選択肢が現れると、Cを選んでしまう人間が私であった。


(犬や猫とお喋りするのは小さい頃からの夢やってん…)


「それでまさか、魔物の言葉まで分かるようになるとはなあ…」




考えることはもう一つあった。


「何故こいつらは私を簡単に見つけられたんだろう?」


私は自分の右手を見た。


火の球が煌々と燃えていた。


「これじゃーん」


その後は火球を消して歩くことにした。


これ以上、暗い森で魔物に襲われるのは御免であった。


(死んでも大抵は復活するらしいけれど、それでも死にたくはないし)


なるべく危険は避けようと思った。


「探知」


火を消したら真っ暗になってしまったので、探知魔法を広げて歩みを進める。


これなら魔物の不意打ちも防げる。


ただ、問題はやはり寒さであった。


「うう…寒い…寒いよお…」




元々この国の気温は低めである。


十月にもなれば半分冬だ。


日中は未だそれなりに温かいけれど、夜の冷え込みは相当に厳しい。


恐らく気温は一桁台。


加えて、この寒々しい林の中。


私は凍える身体をさすりながら我慢して歩いた。


自分の長い金髪を首に巻いてマフラー代わりにする。


「ピュー」


が、吹き抜けて行く寒風が一瞬にして心を折る。


「アババババ、あ、あかん。こ、これはもうどうしようもない」


私はこれ以上進むことを諦めた。


「い、いっそ寝てしまおう。ひ、日が登れば多少はマシになるはず…」


私はオークの木を背にしゃがみ込んだ。


(め、目が覚めたら日が昇っていますように)


そう念じながら、私は身体を丸めて目を瞑った。


こんな寒い中で寝たら死んでしまうかもしれない。


しかし、とにかく寒過ぎて、その時私はもう何も考えられなくなっていたのであった。




(……寒い!)


寒すぎて寝れねえ!




「アババババババ…」


(や、やはり火を焚こうか?)


しかし、魔物は火を恐れないモノも多い。


少なくともゴブリンには効かなかった。


(そうだ!葉っぱを集めよう!)


落ち葉をかき集めて身体の上に被せれば、多少は暖かくなるのではないか?


(多少の汚れや不衛生さは、浄化を使えばどうとでもなるし。それだ!)


「エアー!」


私は風魔法で落ち葉を一か所に集める。


そして、その上に寝た。


落ち葉のベッドである。


土は冷え冷えで、直に横たわると体温を持っていかれてしまうのだ。


そして、掛け布団代わりに自分の身体の上にも落ち葉を被せた。


(あんまり変わらない…)


でも、無いよりはマシな気がした。


「ピュー」


集めた葉っぱは、風に吹かれて飛び散った。


私はもう一度集めた。


「ピュー」


散った。


もう一度集めた。


「ヒュ…」


今度の風は弱々しかった。


が、葉っぱは身体の上からズリ落ちてしまう。


落ちた葉を拾おうとすると、その動きでまた別の葉が落ちる。


何とかしてもう一度被り直す。


「ヒュ…」


「アババババババ…」


そもそも隙間が多過ぎて、全然風を防げていなかった。


布でなければ防寒効果は無い。


「くっそおおおこうなったら筋トレだ!動けば身体も温まるはず!うおおおおおお腕立て、腹筋、背筋、スクワットォ!」


「ピュー」


「寒い!」




前世では、人間社会の煩雑さに不満を覚えたものだ。


どうしてこんなに面倒事が多いのか、何故学校に通わなければならないのか、他人と群れなければならないのか、レールの敷かれた人生の何が楽しいのか、いっそ自然に帰れば自由で楽しいのでは?


とんでもない。


今、私は家が欲しかった。


寒さを凌げる屋根と壁が欲しかった。


寝ていても野獣に襲われない安全地帯が欲しかった。


誰でもいいから人間に会いたかった。


安全が担保されるなら、いくらでも勉強するし、うだつの上がらないサラリーマンの人生だって、現状と比べれば天国に思える。


「そうだ!土魔法だ!土壁で風除けを作ろう!」


私は土魔法で壁と屋根を作ると、そこに小さくなって収まった。


囲いの内側に火球も作る。


魔獣達の目に映らないように。


(でも、魔法を使いながらでは眠れない…)


しかし、凍死するよりは断然マシであった。


即席の小屋の中で、私はじっと夜が明けるのを待った。




「こんなところで何をやっているんだい?」


その声にはっと顔を上げる。


また魔物か、と思ったのだが、目の前にいたのは人間だった。


「ま、ま、ま…」


「そこじゃ寒いだろう。家へ来な。茶ぐらい出すよ」


「魔女のお婆ちゃん!」

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