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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第3章 王国叛乱
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61話 魔物を殺す術

吹き飛ばされた魔物の死体は騎士団によって回収されていった。


「まあ、及第点といったところか」


騎士達が働いている横で、私達は反省会を開いている。


「今回のことで理解したと思うが、戦場では何が起こっても不思議ではない。どんな状況でも気を抜かず、常に周囲を警戒しておくように」


「はい!」




「どう思う?」


「不自然ですね。これだけ魔物がいて、しかも混成で、C級とD級の魔物がいるのに、E級は一体も混じっていませんでした」


「E級の魔物は全て殿下達が倒してしまったとか?…失礼、冗談です」


「三十体というのも微妙な数だな。スタンピードにしては少ないし、自然発生するには多い」


「脅威度Cというのも、人為的なものを感じます。C級の魔物は強いですが、腕の立つ者なら生け捕りに出来ないこともありません」


「狙われたのでしょうか?やはり狙いはギルバート殿下?」


「ということは犯人は…」


「待て待て、まだ本当に人為的な介入があったと決まったわけではない。とりあえずは持ち帰り、団長から陛下に直接ご報告願おう」


「はっ!」


「やれやれ…しかし、成人もしていないギルバート殿下にまで…いや、滅多なことは言わないでおこう…」




大捕物もあり、日も暮れかけ。


今日はもう撤収である。


(結局私、今日は何にもしなかったな…)


秘匿されていることだが、私・モニカは聖女である。


よって殺生は厳禁。


魔物の討伐訓練には参加出来なかったので、今日一日森の隅で洗濯係をしていた。


皆には水と風の魔法と説明していたが、実際には浄化の魔法を使っていた。


浄化の魔法マジ便利。


大っぴらに傷を治したり出来ないため、最近は髪を洗ったり服を洗ったり生活魔法として運用している。


ギルバート様には、そんなことに神聖な力を使うな、と突っ込まれたが。


閑話休題。




魔力が余って仕方なかったので、撤収作業の合間に私は探知魔法の練習をした。


地面に魔力を流すまでは出来るようになったが、薄く広く伸ばすのが想像を絶する難しさだ。


(薄く広く…しかし感覚は残して…入ってくる情報を選別して…)


って無理だろ。


『雷剣の勇者』ことベルガー様にも出来ないことが、今の私に出来るわけもなかった。


「おや?」


その時、私の下手くそな探知にビクンビクンと妙な感覚が引っかかった。


暇だったので見に行くと、小アルミラージが出血して震えていた。


(さっきの上級魔法にでも巻き込まれたのか。不運な奴だ…)


周りを見回す。


誰にも気付かれてはいない。


私はこっそり治癒の魔法を使った。


(見殺しは可哀想って豚のオッサンも言ってたしね)


見殺しに出来ないとなると、介錯の出来ない私には助ける以外に方法が無い。


(魔獣を助けるなんて!ってオリヴィア様に怒られそう)


でも、例えそれが害獣だと知っていても、アライグマが倒れていたら助けちゃうし、シカだって私は助けるだろう。


このウサギも、あんまり可愛くはないけれど、見殺しにすることは出来なかった。


(お前、運が良かったな)


浄化の光がアルミラージを包む。


そして、アルミラージは穏やかな顔になり、やがて砂になって消えていった。




「…」


「モニカ、そんなところで何をやっているんだい?」


私が固まっていると、ラウレンツ様が心配してやって来た。


「ああ、魔物にトドメを刺していたのか。殊勝な心がけだね」


残っていたアルミラージの下半身を見て、ラウレンツ様はそう判断した。


「いや…」


違うんです。


本当に…本当に善意で傷を癒してあげようと思っただけなんです…。


(別に、トドメを刺そうと思っていたわけじゃないんです!)


と声を大にして言いたかったが、ラウレンツ様には私が聖女であることを隠しているので、結局言えず…。


「どうかしたのか?」


次いでやって来たのはギルバート様だ。


ギルバート様は私の秘密を知る数少ない人間の一人である。


が、ラウレンツ様が隣にいるし、今更説明する気も起きず…。


「遅いよ!」


と八つ当たりするに留めた。


「はあ?何を突然怒っているんだ。訳がわからんぞ」




騎士団の回収作業が終わると、森を出て、外に停留させていた馬車に乗り込む。


馬車は六台用意され、私はオリヴィア様と一緒になった。


ある程度舗装(地ならし)された街道を通っているはずなのだが、揺れに揺れてお尻が痛い。


狭いからか酔いはしないのだが、乗り心地は最悪であった。


揺られながら、私は浄化の力について考えていた。


「どうでしたか、モニカ。わたくしの上級魔法は!」


「え?ああ、うん、良かったと思いますよ?」


「もう!さてはちゃんと見ていなかったのでしょう!」


「いやいや、見てましたよ。あれですよね、周りの騎士の人がポカーンってなってたやつですよね」


私は慌てて、ポカーンとした顔を実演して見せる。


それでオリヴィア様はフフッと笑ってくれた。


「まあ、そうでしたの?実はね、撃った私も驚いてしまって、周りのことは目に入っていなかったのです」


「それは勿体ない。じゃあギルバート様の間抜け面も見逃してしまったわけですね?」


クスクス笑うオリヴィア様は紛う事なき美少女であった。


(あんなに小さかったオリヴィア様も、もう十一歳か…)


未だ未だ子供だが、年々美人になっていくオリヴィア様を見ていると、中々感慨深いものがある。


時の流れは速いなあ、と一人年寄り臭いことを思った。


「…ところで、モニカ、今度当家が主催する晩餐会について、相談したいことがあるのですが…」






「…失敗したか」


「申し訳ございません、猊下」


「護衛が減り、好機に見えましたが、やはりエルダー卿が側にいる間は手出し出来ませんね…」


「聖女の力だけでも確認したかったのだが…仕方あるまい。当初の予定通り、ジギスバルト王子に渡りをつけてもらうとしよう。そして聖女モニカは必ずや我らの教会へ…」

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