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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第3章 王国叛乱
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55話 オリヴィア② モニカ

「ええっ!?モニカが子爵になって、ギルバート様の第二婚約者に!?」


お父様からそう告げられて、わたくしは天地がひっくり返るような思いでした。




モニカはわたくしの友人です。


モニカは平民でしたが、才能に溢れ、王都の学園で特待生となり、そして三ヶ月前に突然姿を消しました。


別れも告げずに消えたモニカを、わたくし達は大いに心配しましたが、一月前に消息だけが判明します。


救国の三勇者。


その一人がモニカでした。


何でも魔法で竜のブレスを防いだそうです。


わたくしは何かの間違いではないかと思いました。


モニカは五ヶ月前まで、全く魔法が使えなかったのです。


(とにかく、話をしなければ)


そう思い、学園で待っていたのですが、モニカは一向に姿を見せません。


どうしているのか、宰相であるお父様に尋ねても、何も教えてはくれませんでした。


それが、今日になって急にこれです。




「安心しなさい。いくら救国の神子とはいえ、元は庶子の出。正室はオリヴィア、お前だ」


そのような心配はしていないのですが…。


いえ!


よく考えたら、それが最大の心配事でした。


あのモニカがギルバート様の第二婚約者!


モニカはわたくしの目から見ても可愛い容姿をしています。


学があり、才もあり、男子の視線がモニカを追っているのは皆気が付いていたことです。


しかし、わたくし達は友達でした。


平民では恋の相手に釣り合わないからです。


それがどうでしょう。


モニカは最早、爵位持ちの貴族です。


陛下公認のギルバート様の婚約者です。


どうしましょう。


ギルバート様はもう、わたくしの方を見てはくれないかもしれません。




翌日は土の日で、学校は休みでした。


王城では晩餐会が開かれ、お父様とお母様は城へ向かいました。


王家主催の特別な会なので、わたくしのような子供は出席出来ません。


しかし、王族のギルバート様と、自身が爵位を持つモニカは出席しているはずです。


複雑な気持ちでした。


二人に会えなくて残念なような。


会えなくて良かったような。


二人だけが会っていることに焦るような…。


もう、自分で自分の気持ちが分かりません。




翌日、学園へ行くと、やはりモニカの姿はありませんでした。


「おはようございます、オリヴィア様。聞きましたか?モニカが子爵になってギルバート様の…」


「ダニエラ様!?いきなりそのお話は…」


ダニエラ様が元気良く話しかけてきて、ロジーナ様が止めに入りました。


「おはようございます。ダニエラ様、ロジーナ様。ええ、聞きましたわ。とても、その…驚きましたわね」


自分の笑顔が、引きつっているのを感じます。


扉を開けた時、わたくしは、中にモニカがいなくてホッとしました。


(ああ、なんて嫌な人間なのでしょう…)


あれだけ心配していたモニカのことを、今ではいない方が良いと思っているなんて…。




教室にはギルバート様もいませんでした。


「おはようございます、ラウレンツ様。ギルバート様は未だいらっしゃっていないのですか?」


ラウレンツ様は水竜騒動で一時自領に帰っていましたが、水竜討伐後すぐ学園へ戻ってきました。


「おはよう、オリヴィア様。未だ来てないよ。今日は来ないかもしれないね」


そういえば、今日は元ハンデルセン公爵の処刑の日です。


元公爵家の処刑ともなれば重要な国事です。


処刑には王家の方々も参列されるかもしれません。


「では、今日はこれで全員…」


揃った、と言おうとした直後、教室の扉がゆっくりと開きました。


「…お、おはようございます…」


そろーり、小さな声で挨拶を述べつつ、背中を丸めて、何か後ろ暗いことでもあるかのように、金色の髪の可愛らしい少女が、教室へと入ってきて…。




「モニカ!!」


「わぁ!お、オリヴィア様!…お久しぶりですね?」


気付くと私はモニカに飛び付いていました。


「本当に久しぶりですわ!急にいなくなって、心配したのですよ!」


「す、すいません!ほら、やっぱりオリヴィア様怒ってるじゃないですか!」


「それはお前の所為だろう」


モニカの後ろにはギルバート様とエルダー先生もいました。


「おはよう、ギルバート様。モニカとエルダー先生は久しぶりですね。処刑には行かなかったのですか?」


「おはよう、ラウレンツ。いや、もう血生臭いのはウンザリでな」


「あ、右に同じです」


「後がつかえてる。早く入れ」


エルダー先生に促され、全員自分の席へと向かいました。




「良かった…怪我は無い?少し髪が伸びましたわね」


「やあ、ご覧の通りです」


相変わらず、無闇に腰の低いモニカ。


服も変わらず男物。


あれだけ心配したり不安になったりしたのに。


貴族になって救国の勇者にまでなったはずなのに。


全く変わりないモニカの姿に、不安は全て、風に吹かれた雲のように、どこかへ消えてしまいました。


「やあ、モニカ。ギルバート様の婚約者になったんだって?」


「うえ!?…まあ、その…色々あって?」


モニカはチラチラとこちらを見ます。


その姿がおかしくて、私は少し笑ってしまいました。


「別に、構いませんわ。元よりわたくし一人でギルバート様のお相手が出来るとは思っていませんでしたから」


わたくしは咄嗟に見栄を張ります。


「怒ってませんか?」


「怒ってなどいません」


「…本当に?」


「だから、怒ってないと言っているでしょう!」


「やっぱり怒ってるじゃないですかー!」


「…そろそろ、授業を始めてもいいか?」


エルダー先生の言葉に、皆で笑い合いました。




その時、私は気付いたのです。


私はギルバート様が好きですが、モニカのことも大好きで。


何より、皆がいるこの教室が、他のどんなことより大、大、大、大好きなのです!

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