50話 エピローグ
『何故だ、何故人間ごときに我がブレスが防がれる…!』
「モニカ!!」
「いけます!!」
七発目から一切間を置かず、水竜は八発目のブレスを放つ。
飛行部隊が慌てて距離を取る。
私と竜の一騎打ち。
だが、相殺するだけならもう怖くない。
『GYAOOOOOOOOOOOOOO!!!!!』
「ライトニングブラスト!!!」
青と黄色の魔力の柱が、空中で衝突する。
視界を埋め尽くす純白の閃光。
相殺八個目。
「うおおお!」
「また防いだぞ!」
「すげえぜ嬢ちゃん!」
「あの子は一体何なんだ!?」
「きっと地上に舞い降りた天使様だ!」
『何故だ、何故死なない…!どうしてまだ生きているのだ!!』
水竜は次のブレス生成を始める。
ムキになってブレス攻撃に固執しているのか。
「やべっ!」
しかし、それが私にとっては一番まずい。
三連発は魔力が持たない。
「回復を!!!」
膨大な魔力の収束に、大気が重力に逆らって昇る。
伝う汗の冷たさに震える。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
その時、声を張り上げ、竜に向かって、ベルガー様が飛んで行った。
その身に輝く雷を纏って。
さしもの竜も、雷の剣を持つベルガー様を無視することは出来ない。
雄叫びに反応し、ブレスを霧散させ、代わりに十の水球を創った。
「ベルガー様!」
注意を引くためやむを得なかったが、水竜側の準備は万端整ってしまう。
あれでは近付けない。
また、反転して距離を取るしかない。
と、誰もが思っただろう。
しかし、ベルガー様は退がらなかった。
竜へ向けて加速する。
一か八かの勝負に出た。
避け切れば勝ち、出来なければ死ぬ。
勝負は一瞬で着いた。
一発目はギリギリで避けた。
二発目で体勢を崩された。
三発目が身体をかすめた。
四発目が直撃した。
五発目が。
六発目が。
七発目。
八発目。
九発目。
十発目は、放たれなかった。
空に大量の飛沫が舞った。
飛べない私達は、ただ地上で息を呑み…
「ベルガー!!!」
眩い光が、ラウラ様の身体から溢れて飛んだ。
「ラウラ様!」
騎士達が駆け寄ると、ラウラ王女様を包んでいた黄金の輝きは消え失せている。
何が起きたのか、空に目を戻すと、水が二つに割れていた。
中心には、無傷のベルガー様が立っていた。
その身に黄金の輝きを纏って。
その姿はまさに、
「勇者様だ!」
ベルガー様が再び飛ぶ。
残った水弾を斬り飛ばし、ついに竜へと肉迫する。
竜は複数の傷口から夥しいほどの血を噴射した。
ベルガー様は大上段に剣を構えた。
『GYAOOOOOOOO!!!!!』
「はああああああああああ!!!!」
「いけえええええええええ!!!!」
「ベルガー!」
「伝説に名を刻め!」
竜の赤い血を、黄金の輝きが吹き飛ばす。
そして、
『GYAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』
「うおおおおおおおお!!!」
「わああああああああ!!!」
「おおおおおおおおお!!!」
竜の絶叫に、王都中から歓声が上がった!
そして私は貴族になる。
第二章完