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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第2章 水竜討伐
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47話 カサンドラ① 騎士

私の名前はカサンドラ・バルヒエット。


ラウラ様の近衛騎士だ。


今、眼前にはゾンビの群れが広がっている。




「エラ、カーリン。二人は先行して、暫し時間を稼いで下さい。私はその間に、上級魔法を用意します」


「はっ!」


指示に従い、二人がゾンビの群れに飛び込んで行く。


ゾンビはざっと数百体はいる。


もしかすれば、もう一桁多いかもしれない。


対して、こちらは三人だけ。


増援は望み薄。


勝機があるとすれば、弱点である火属性魔法で一気に殲滅する他にない。


部下を先行させるのは少々気が重いけれど、上級火魔法を使えるのは私だけなので、仕方ない。


私に出来ることは、一刻も早く、この魔法を完成させることだけである。




右手に炎、左手に風。


二つの魔法を重ね合わせ、広範囲に炎の風を巻き起こす。


「燃えろ!ファイアーストーム!」


私の詠唱に合わせて、エラとカーリンが後ろに退がる。


同時に、炎の風がゾンビ共に着弾。


次々とゾンビが燃えて倒れていく。


「はあ…はあ…やったか!?」


私の魔力量はそう多くない。


上級魔法は日に何発も撃てない。


一応、魔力ポーションは二本だけ持っているが…。


「た、隊長!」


「…くっ!やはりダメか!」


私の炎はゾンビを五十体ほど燃やして消えた。


数を減らしはしたが、大した変化があるようには見えない。


倒れたゾンビを踏み越えて、ゾンビの後ろからゾンビが出てくる。


「あ、悪夢だ…」


エラが弱音を吐いたが、咎める気にはならなかった。




「せい!」


「はあっ!」


「ファイアーストーム!」


都合四度。


同じ流れを繰り返して、私の魔力は底をついた。


ポーション二本も既に空。


(うっ…魔力切れが…)


身体が一気に重くなる。


「もう…嫌だ…」


目の前には、依然、変わらず、ゾンビの群れ。


既に数百体のゾンビを倒したはずだが、全く減ったようには見えない。


あと何体倒せば終わるのだろう。


痛む頭で、剣を抜く。


ここからは、私も剣で戦うしかない。


足がすくむのは、魔力切れの所為だと思いたい。




斬る、斬る、斬る。


いつまでも湧き続けるゾンビの群れを、私達三人は斬り続けた。


三人固まって、互いに背中を預けながら戦う。


しかし、これだけ多勢に無勢では、敵の攻撃を全て捌くことは出来なかった。


「きゃあっ!」


「カーリン!」


左側を担当していたカーリンから悲鳴が上がる。


カーリンは地面に引き倒されていた。


そこから先はあっという間。


陣形が崩れ、背後からもゾンビに襲われ始める。


「い、いやあああああ!!」


ゾンビの群れに押し潰されて、エラの姿が見えなくなった。


「エラ!カーリン!うわあああああ!!」


激情に任せて、目の前のゾンビに渾身の一撃を食らわせる。


しかし、それは悪手だった。


大振り過ぎて、次が出ない。


剣を持った右腕にゾンビが噛り付いてきた。


「ぐぅっ!」


ゾンビを剥がそうと左腕で殴る。


が、後ろからゾンビに体当たりを受けて、態勢が崩された。


目の前のゾンビに身体がぶつかり、


「ぐあっ!」


首筋に噛み付かれた。


殴られ、蹴られ、全身から血が吹き出る。


引っ張られた髪がブチブチと抜ける。


腕の骨は砕かれ、剣も既に落としてしまった。


そこまでだった。


もう、反撃の芽は残っていなかった。




(すまない…エラ、すまない…カーリン、申し訳ありません…ラウラ様…)


私が弱かったばっかりに。


若く優秀な騎士を二人も散らせてしまった。


恋もせず、理想の騎士像を追い求めて、二十五年。


その最期が、これか。


(…お父様、お母様、先立つ不孝をお許し下さい)


私はゾンビに食べられて死んでしまうけれど。


どうか、どうか、


(ラウラ様だけは…)




「おらぁ!」




目を開くと、見知らぬ男の腕の中だった。


銀の髪が目に映る。


瞳は綺麗な緑色。


「知ってるか?ゾンビに食われて死ぬと、ゾンビになるらしいぞ。あんた危なかったな」


(…何が、起こったの?)


ぼやけた意識が、徐々に戻る。


気付けば、身体の痛みは消えていた。


男の手には、空になったポーションの瓶。


(ああ、そうか)


私はこの男に助けられたのか。


「貴方は…」


「俺はヨハン。通りすがりの衛兵だ」

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