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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第2章 水竜討伐
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40話 ラウラ①水竜迎撃作戦〜影武者〜

目を覚ますと馬車の中でした。


「お目覚めですか、ラウラ様」


「フリーダ…何故私は馬車に…?一体、どこへ向かっているのですか?」


フリーダは私の筆頭側仕えです。


馬車には他に、女性騎士のカサンドラも同乗していました。


「ここは北の森でございます」


「北?…ええと、私は確か城でお父様と…」






数刻前、王城内、謁見の間。


「お前は安全な場所で隠れていなさい」


お父様は椅子に深く腰掛け、そう言いました。


隣には宰相のエーミールだけを侍らせています。


「出来ません。もう隠れているわけには参りません。竜の狙いは私なのです」


今日は水竜との約束の日。


「私がいなければ、万一の場合…」


「言葉を慎め。我々フィルリオ王国軍に万一などあり得ない」


「しかし…」


「案ずるでない。お前の身は私が必ず守ってやる。絶対に、竜になど渡すものか」


そこでエーミールが手を鳴らすと、扉が開き、二人の人間が入ってきました。


一人は顧問のエルダーで、もう一人はヴェールを纏った女性。


私はその女性を見て驚きました。


彼女は私に瓜二つだったのです。


「貴女は…マチルダ?」


マチルダは私の従者。


そして、私の影武者でもあります。


化粧を施し、髪型を整え、意図的に私に似せた彼女は、まるで鏡を見ているよう。


「マチルダには一年俗世から離れて生活させた。…祝福を受けることはなかったが、致し方ない。いよいよとなれば、マチルダを影武者に立て、竜を騙す」


「そんな、竜を騙すなんて!それに、それではマチルダが…うっ!」


そこで私の記憶は途切れます。


あの場にはエルダーがいたので、恐らく魔法で何かをされたに違いありません。






「ああ、何ということを…」


揺れる馬車の中で、私は頭を抱えました。


私の身代わりで、マチルダが…。


否。


真に恐ろしいのは、その身代わりが看破されてしまった場合です。


そうなれば、マチルダだけでなく、多くの人々が犠牲に…。


「ラウラ様、お気を確かに」


震える肩を、フリーダが抱きしめてくれます。


「ご安心下さい。きっと全て上手くいきます」


「フリーダ…」


その言葉の直後、馬車が急に止まりました。




「くっ…!何事ですか!」


カサンドラがカーテンを開けて外を見ます。


フリーダが悲鳴を上げます。


私も、外の光景に息を飲みました。


道の先を、大量のゾンビが埋め尽くしていたのです。


「な、何故これほどのゾンビが…!?」


北の森は危険性の低い場所です。


魔物の数自体少なく、一番強い魔物でも精々がオーガ程度。


ゾンビが出るという話も聞いたことがありません。


ましてこの数。


数十…否、視界を埋め尽くすゾンビの群れは、確実に数百体か、それ以上。


ゾンビ一体は低級の魔物ですが、数百ともなれば当然、危険性は遥かに高まります。




「申し訳ありません。このゾンビ共、突然現れたため気付くのが遅れました」


外で護衛に就いていた騎士の一人が窓のそばへ来て言いました。


「この数が突然?馬鹿な!ここは戦場跡地ではないのだぞ!」


ゾンビが生まれるには遺体が必要になります。


戦場跡地など、条件次第ではゾンビが大量発生することもあると聞きますが、しかしここは街道の最中。


これほどのゾンビが自然発生するなどあり得ないことでした。


カサンドラが唇を噛みます。


「…ラウラ様、この道はもう進めません。ここは三人残って食い止めます。未だ王都からはそう離れておりません故、一旦お引き返し下さい」


「引き返せですって!今王都に戻ったら…ラウラ様は…」


フリーダは声を荒げますが、進めないものは仕方がありません。


陽は既に沈み、今から街道を外れるなど出来ないのです。


進むか戻るか、二つに一つ。


「ゾンビが動き出しました!」


「さあ、お早く!」


叫び、カサンドラは馬車から飛び降りました。




私達は道を戻ります。


護衛の騎士は残り二人。


「…こうなっては、少々危険ですが、東に行くしかありません」


東の平原は魔王領に通じているため、出現する魔物は強力です。


「フリーダ、もう逃げるのはやめましょう。魔物にやられ、無為に命を落とすくらいなら、国の為にこの命を捧げるべきです」


初めから、そうすべきでした。


「何故なら、私は…」


そこで、またも馬車が止まりました。


まさかと思いました。


恐る恐る外を伺いました。


しかし、外にゾンビの姿はありません。


「こんばんは、ラウラ様。来ると思っておりましたよ」


代わりに、ハンデルセン公爵が道を塞いでいたのでした。

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