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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第2章 水竜討伐
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27話 魔法使いになった日②〜森〜

「はぁ…」


魔法学の補講を終え、私は一人、歩きながら大きな溜息を吐いた。


結局、今日の補講で私に魔法が発現することはなかった。


騎士の…えっと…ぶ…べ…?


あ、ベルガーだ、ベルガー様様。


まずベルガー様に魔力を流してもらったが、私は魔力を感じられなかった。


次にエルダー先生と二人がかりで魔力を流してもらったが、結果はやはりダメ。


エルダー先生の用意した仮説は二つとも外れ、それで今回の補講はお開きということになった。


「散々気を持たせておいて…先生め…」


気落ちした私の悪感情はエルダー先生に矛先を向ける。


しかし、心の底ではエルダー先生に非がないと分かっていて、そのことが更に私を暗い気持ちにさせるのだった。


(みじ)めだ…)


「はぁ…」


何度目かも知れない溜息を吐くと、前方から甲高い金属音が聞こえてきた。


私は茂みをかき分けて、コッソリ木の陰から顔を覗かせる。


数メートル先で冒険者らしき男女数人が一匹のオーガと戦っていた。


私は今、街の外の森に入っている。




一時間ほど前。


補講を終えて家に帰ると、ベルタおばさんが針仕事をしていた。


「手伝いましょうか?」


「あらあら、モニカちゃんはお客さんなのだから気にせず(くつろ)いでいればいいのよ」


私の申し出は笑顔でやんわり断られた。


既に私の家事スキルの無さはバレてしまっている。


王都へ来た初日は「女の子なのだから」と半ば強制的に家事を手伝わされたものだが、わずか数日でこの見限られようである。


「当てが外れた…暇だ…何しよう…」


何か仕事をすることで沈んだ気持ちを紛らわせようと思ったのだが、断られてしまっては無理にとも言えない。


とりあえず自室に引き上げ、藁を敷いたベッドの上に寝転ぶ。


「いや、このままじゃいかん!」


生活費は父・ヨハンが出しているとはいえ、こんな使えない居候があって良いのか、いや良くない(反語)。


だってこれニートだよニート。


異世界に来てまでニートって…しかも魔法も使えないニートとかマジでただのニートじゃん!


居候してから私がやった手伝いといえば、リック君5歳と遊んであげたことくらいだが、そのリック君はキッチリ家事の手伝いを仕込まれているのである。


「私も何か貢献しなければ…」


でないとこの鬱々とした気持ちに呑まれてしまいそうだった。


鬱を払おうと異様に大きな声で独り言を言っている自覚が、さっきからある。


「何か私に出来ることといったら…」


かくして私は二年ぶりに剣を手に取り、街を出て森に入り、先述のオーガと冒険者に出会ったのである。




「くそっ!こんな森の浅い所でオーガと出くわすなんて!」


「水龍の影響がもうこんな所にまで!」


「くっ、きゃああ!!」


「しまった!エミリイイイイィ!!!」


女性冒険者がオーガに吹き飛ばされた。


それを見て、様子を伺っていた私は移動を開始した。


(よし、あれは無理!ここはスルーで!)


雑魚魔物なら助勢も辞さないところであったが、Cランクのオーガが相手では分が悪かった。


かつてDランクのオークにやられた私がオーガに(かな)う道理はないのである。


南無三。


「エミリーはやらせん!ぐあああっ!!」


「あ、アウグストおおおおおおお!!」


(まあ5対1だし大丈夫だろ)


大体私は冒険者じゃないし、今は食えそうな獲物を狩って家計に貢献するのが目的なのだ。


オーガの肉は硬くて臭くて不味いと聞くので、そういう意味でも管轄外であった。


(まあ、こっちの世界の食い物って大体硬かったり臭かったり酸っぱかったり苦かったりで不味いんだけど…)


料理技術が未発達の上、品種改良も進んでいない食材ばかりなのだ。


他にも不味さの要因は様々あるだろうし、多少は許容するほかないのである。


「今だ!俺ごと撃てえええええ!!!」


「じょ、ジョナサーーーーン!!!!」


(何か…鹿とかいないかな…。馬刺し食べたい…)




暫く進むと地面に動物の足跡を見つけた。


隣りにはコロコロとしたう○ちもあり、拾った枝で潰すとまだ乾燥しきっていなかった。


(近くにいるかも)


足跡はそこそこ大きい。


(これも魔獣かな)


と、思ったがとりあえず追ってみると…。


「そっちに行ったぞ!」


「分かってるよ!せいやっ!」


「くそっ!なんて素早さだ!」


やはりというか何というか、またしても魔物と冒険者に遭遇した。


しかも今度の冒険者は十歳くらいの少年二人である。


(駆け出し冒険者かな?)


対する魔物はアルミラージ。


確かEランクくらいだったはずである。


角の生えた兎で、サイズは大型犬ほどもある。


二人は細身の剣で果敢に斬り込むが、兎は苦もなくソレをかわす。


「はあああああっ!!」


少年が雄叫びを上げ、大上段から剣を振り下ろす。


余裕で避ける兎。


(…相手の足が速いのは分かっているだろうに、何でそんな大振りなんだ…)


しかもビビっているのか随分遠くから剣を振っている。


ちょっと後ろへ下がるだけでも剣の間合いから外れる。


(手助けした方がいいのかな?いや、ピンチってほどでもないし…あー、ゲームとかだと横入りってダメなんじゃないっけ?)


やっぱスルー安定か。


と思ったところ、兎のタックルで少年Aがぶっ飛ばされた。


「うわあああああ!」


「エゴーーーーン!!」


少年Bは慌てふためき、兎に背を見せて少年Aの元へ駆け寄って行く。


距離が開いたとみるや兎は頭を下げ、角の先を少年達へ向ける。


金色の角が光を帯びて、先端に魔力弾が形成されていき…。


私のぶん投げた石ころが兎の目玉に直撃した。

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