1話 転生した
俺の名前は田中太郎。
どこにでもいる普通の高校一年生だ。
ある日、学校から帰る途中、レトリバー、シェパード、ボルゾイの大型犬三匹を連れてチャリで散歩を敢行する渋いオッサンとすれ違った。
(か、かっけえ〜)
と、目を奪われながら車道へ出たところトラックに衝突した。
享年十五歳。
死因:ワンちゃんであった…。
「いや、死因はワンちゃんではない」
気付けば俺は真っ白な空間にいた。
目の前には灰色の衣を纏った中性的な美人が一人。
(ああ、ここはあの世に違いない)
直感的にそう思った。
となれば、目の前に立っているこの人は神様だろうか。
「あなたの死因は居眠り運転による交通事故です」
「ああ、トラックの人寝てたんだ」
やっぱりか、と思った。
いくらよそ見をしていても、流石に信号機くらいは確認した覚えがあった。
「あの日死ぬのはあなたでなく、あの運転手の筈でした。あなたは死ぬべき人間ではなかったのです」
ちなみに運転手は轢いた衝撃で目を覚ましたため、生存しているらしい。
「車は結構な音を立てていたはずですが、まさか犬に気を取られて気付かない人間がいるとは」
『幼児以下の危機察知能力だな』って言われた気がするけど返す言葉もなかった。
(灰色気味のパッとしない人生だったが、死に方までこんな感じとはなあ)
特に未練があるわけでもないが。
いざ死んでみると何とも言えない気持ちになった。
(ああでも、せめて彼女の一人くらいは作りたかった…)
しかし、余所見していた俺が神様を責められるわけもなし。
「えっと、俺…私はこの後、どうなるんでしょうか?」
神様相手にタメ口はまずいかと思い、言い直した。
「今回のことは私の監督不行き届きです。お詫びになるとは思いませんが、あなたが望むならもう一度、人生をやり直すことが出来ます。ただし別の人間としてですが」
「それはもしや…いわゆる『転生』ってやつですか!?」
転生。
某小説投稿サイトで流行りのアレか。
スライムになったりするアレだ。
「…質問してもいいでしょうか?転生先は、元の世界じゃなくても良かったりします?」
俺は無理を承知で聞いてみた。
転生するなら異世界の、それも中世ファンタジーが良い。
魔法のある世界で、ゲーム的なステータスを確認しながら、チートでサクサク無双して、現代食で金儲けして成り上がって、あわよくばハーレムとか築けちゃう…そんな感じの第二の人生が?
「可能です」
「まじで!?そういうことなら、もう全然、はい!転生する方向でおねがいしゃす!」
俺は勢い込んで答えた。
トラックに轢かれて死ぬあたりから鉄板の流れ。
よく見る転生モノの黄金ムーブ。
これはもう間違いないぞ!
転生先の世界の希望を伝え、転生しても人間でと念押しし、両方神様から了承頂くと、俺の胸は期待で高鳴った。
段取り完璧。
直後、俺の体は不思議な光で包まれ、視界が暗転し…
いざ行かん、なろう系の世界へ!!!
かくして俺は女の子に転生した。
おいおい。