15話 王立学園入学
「ではこちらをお受け取り下さい。特待生を示す腕輪なので、学園内では常に身に付けて失くさないように。入学式は三日後、三時課の鐘までに教室に入っているように。ようこそ、フィルリオ王立学園へ」
受かった。
翌日、ヨハンが帰る前に買い物に行く。
ノートやペンを買うのかと思ったら木の板を渡された。
ナイフで刻めってさ。
(試験で使った魔法道具を貸したりはしてくれないのか…高いらしいからなあ…)
紙が高価なので、こっちの世界では耳学習が基本だそうだ。
記憶力には全く自信がないので不安だ。
制服とかも無いので、汚れ避けにマントを購入。
大きなそろばん的な物を買うか聞かれたが、使い方が分からないので断った。
暗算で頑張れ。
「じゃあ、お父さんは帰るぞ」
「うん、じゃあね。次会うのは五年後だね。ヒルダおばさんによろしく」
「休みには帰って来るんだぞ!あと、どうしてもと言うならモニカも帰ってもいいんだぞ。学校は水竜騒ぎが収まった来年からでも…」
くどくど。
中々馬車に乗ろうとしないので、私が尻を蹴飛ばす形で別れを済ませた。
水竜は四月以内に再び現れる、という噂がある。
あと四ヶ月で、前に現れてから丁度一年になるそうだ。
そして二日後、入学式の日。
一時課の鐘で目を覚ます。
二階の元物置き部屋・現私の部屋から起き出して、一階へ降りる。
井戸で水を浴びて、身支度を整え、朝食を取る。
先にカスパーさんが家を出た。
見送ったら荷物の確認、余った時間はリック君と遊んで過ごす。
「そろそろ行った方がいいんじゃない?」
学園までは徒歩十分。
まだ早いけれど、五分前行動は基本だ。
「行ってきます」
学園に着くと学生で一杯だった。
どいつもこいつも良いオベベを着ていやがる。
学生は半分が貴族で、もう半分が裕福な平民だ。
私も一番上等な服を着て着たけど、浮いてないだろうか。
ドキドキしながら一年生校舎を二階へ上がる。
お城のような内装を突っ切り、最奥の特待生教室へ。
「ここか…」
周囲に学生はいない。
特待生クラスは十人と聞いている。
深呼吸を一つ。
こういうのは最初が肝心。
五年間上手くやっていくために、まずは笑顔で挨拶だ。
その後は何やかんや上手いこと頑張れ。
(よし、行くぞ!)
ガチャリ。
「ん?何だお前。ここは平民の来る場所じゃないぞ」
「あ、そうなんですか、すいません、間違えました」
バタン。
「…」
あれ?
教室ここで合ってるよな?
「おい、扉の前で何をしている?」
「ひえっ」
気付いたら後ろにシルバーなイケおじが立っていた。
「あ、すいません。教室を間違えてしまいまして。つかぬ事をお聞きしますが、一年生用の特待生クラスってどこにあるのでしょうか?」
「何を言ってるんだ。さっさと入れ。もう鐘が鳴るぞ」
イケおじに背中を押され、再入室。
丁度よく三時課の鐘が鳴った。
「全員いるな。お前も空いてる席に座れ。私が特待生クラスを受け持つエルダー・バルトロメオだ」
やっぱり教室間違えてなかった。
そして九人分の視線が刺さる。
私以外全員貴族だ。
服を見れば一目瞭然だった。
飾りっ気の無い私の服に比べ、彼らの服はボタンやらスリットやらフリルやらの装飾で一杯だ。
あぁ…私今完全に浮いてるよ…。
私は縮こまりながら誰もいない扉側最奥端っこの席に座った。
「今日は各自の自己紹介の後、授業について説明して終了だ。前列から順番に始めるように」
「俺の名はギルバート・フォン・フィルリオ。第三王子である」
「ラウレンツ・フォン・リングシュミットです。よろしく」
「わたくしはオリヴィア・フォン・シュタインと申します。仲良くして下さいませ」
「ロジーナ・ビッテンハイムと申します。お見知り置きを」
「アグネス・ウィリアムズと申します」
「ダニエラ・ブルクハウトと申します」
「ドミニク・フォン・エスペランサです」
「エッカルト・コンラディンと申します」
「マルコ・ヴィーラントです。よろしくお願い致します」
よし、OK。
全員覚えるのは不可能だ。
一番派手な第三王子の名前だけ覚えた。
あ、先生の名前忘れた。
てか王子様と同級生なんですけど、どうしたらいいんでしょうか。
「も、モニカと申します。あの……よろしくお願い致します」