14話 王立学園入学試験
王都に着いた翌日には入試である。
入試会場は学園内の一室を使う。
三時課の鐘を聞いて私は家を出た。
学園は平民の街と貴族街の境目にある。
平民街側に一年生から五年生までの校舎、訓練場、菜園、教会があり、貴族街側に高等学園と貴族向けの学生寮がある。
開閉式の校門をくぐれば大きな広場があり、中央には前国王様の銅像がそびえ立つ。
分野毎に分かれていた学校ギルドを統合したのが前国王様なんだとか。
広場は三方を建物に囲まれている。
右が低学年用の校舎群だ。
一階には馬鹿でかい講堂が入っていて、二階が教室になっている。
一年生用の教室に入ると、シルバーなお婆さんが待っていた。
「お初にお目にかかります、わたくし副学園長のフローレンツィエ・アンブリッジと申します」
「初めまして、本日受験致します、モニカと申します」
「は、初めまして、父のヨハンです」
副学園長が試験官で、親子揃ってビビり上がる。
実質的な学園のトップは副学園長で、学園長は名前だけその辺の貴族が貸しているらしい。
これは粗相の無いようにしなければ。
挨拶の後、ヨハンは別室へ促される。
私は羽ペンと薄青い紙を貰った。
紙には両面とも何も書いていなかった。
また、ペンはあってもインクがない。
「両方とも魔法道具です。開始の合図と共に問題が浮かびます。間違えた際は羽でなぞれば消えます。試験時間は30分。準備はよろしいですか」
今回の追加募集は上位クラスの穴埋めが目的だ。
水竜騒ぎによる辞退者は、地方領地の上級貴族の子に多かったらしい。
上級貴族の子ともなれば事前にある程度教育を受けている者が多い。
成績下位者の繰り上げでは、クラス内の格差が広がり過ぎて穴埋めに適さないとして、追加募集と相成った。
つまり好成績でないと要件を満たさない。
…という話を昨日初めて聞かされた。
そんなこと前日に言われても!
と思ったが、ここまで来た以上、腹をくくるしかない。
王都に来るだけで小銀貨10枚も払っているのだ。
一応歴史やら地理やら予習もしたし。
「準備出来ました」
「では試験を始めて下さい」
副学園長が指を鳴らすと紙に問題が浮かび上がった。
問1、この国の名前を書きなさい。
フィルリオ王国
問6、578+632=
1210
問10、小金貨1枚で羊皮紙10枚(羊皮紙1枚で小銀貨1枚と大銅貨4枚)を買いました。釣銭を大銀貨を用いて答えなさい。
大銀貨5枚と小銀貨3枚と大銅貨2枚
筆記試験は3分で終わった。
試験が終われば部屋を移って面接である。
「お二人共、どうぞお掛けになって下さい。畏まらなくて結構ですよ。学園では身分の上下はありませんから」
前身が平民向けの学校ギルドなので、建前上はそうなっている。
「はい。カスパー先生からもそう伺っております」
実際は違う。
王立学園として国の管理下にあり、運営費を貴族の寄付で賄っている以上、学内でも身分の別はある。
カスパーさんは教師だが平民なので、貴族の生徒には強く出れないと言っていた。
いわんや私達をや、である。
「そうですか。では、いつくか質問を致します」
まずヨハンが学費について聞かれた。
「元Bランク冒険者ですんで、学費くらいは」
「お父様は明日フライシュルトへお帰りになるとのことですが、モニカさんは一人で学園に通えますか。不安は無い?」
「それは本当に不安で…」
「はい、問題ありません」
「将来就きたい職種などありますか」
「特に決まっておりません。学園で知識を広げてから進路を決められたらと思います」
「そうですか。試験結果は大変良好でした。怠ることなく勉学に励めば、良い進路が拓けるでしょう」
お、これは受かったかな?
「他に何か得意なことはありますか?」
「一応剣術が出来ますが、素人に毛が生えた程度です」
「む…」
オークに負ける程度だからね。
素人レベルで間違いない。
「お父様に教わったのですか?」
「はい」
「良いでしょう。最後に、魔法は使えますか?」
「ま、魔法ですか…使えません」
「使えない?本当ですか?」
「え、はい」
「そうですか…」
……おや?
これはもしや、魔法使えないとダメな感じ?
ここまで来て、私落ちるの?
背中を冷たい汗が伝っていった。
小金貨=12万円
大銀貨=1,2万円
銀貨=3千円
大銅貨=500円
銅貨=100円