101話 エピローグ
ちなみに2年空いた理由は100話で4章完結予定だったのにどうあがいても無理だと気付いてテンション下がったからです。
再開した理由は感想貰ってテンション上がったからです。
チョロい…でもなろうの作者なんて皆そんなもんって聞いたことあるから…
ゾンビを蘇生させた後、私達は人目を忍んでラウレンツ様改めリンクの家へと向かった。
長身薬の効果は丸一日続くので、元に戻るまでどこかに身を隠す必要があったのである。
幸いと言っていいのか、街にはほとんど人が残っていなかったため、誰にも見咎められることはなかった。
「で、どうして死んだはずのモニカがここにいるの?」
「ラウレンツ様こそ処刑されたはずでは?」
私の記憶が正しければ、叛乱に加担したリングシュミット家は一族郎党処刑されたはず。
もしやラウレンツ様もネクロマンサーだったのかしら?と一瞬思った。
「ギルに逃がしてもらったんだ。それで、脱獄を手引きする代わりに獣人国へ行ってオリヴィア様を助けてくるよう頼まれた」
聞けば私達の目的は同じであったため、今後は二人で獣人国へ向かうこととなった。
情報を交換していると昼になり、家の外も騒がしくなってきた。
避難していた人々が街に戻りつつあるようだ。
それと同時に、私の耳は階段を上がって来る足音も捉えた。
「ドンドンドン!おい、坊主いるか!」
ノック音と扉が開くのはほぼ同時だった。
部屋に入ってきたのはヒゲの生えた老婆で、
「べ、ベンヤミンさん、どうかしたんですか?」
「何だ、戻ってたのかい。帰っているなら一声かけな!」
ベンヤミンという老婆は、どうやらこの宿の女将さんらしかった。
私は咄嗟にベッドの影に飛び込んでいたが、危うく見つかるところであった。
「ご、ごめんなさい。俺が帰った時には誰もいなくて…」
「客だよ。兵隊さんが下に来てる」
「す、すぐ行きます!」
ラウレンツ様はチラッと私に視線を投げてから部屋を出ていった。
そしてすぐに戻ってきた。
「モニカ、一緒に夜逃げしない?」
事の次第はこうである。
まず、人々をゾンビの呪縛から解放した『仮面の大魔法使い』を街中の兵士が探し回っているらしい。
それについては想定の範疇で、長身薬の効果さえ切れれば問題ないはずであったが、
「俺も領主様からお呼びがかかっている、らしい。上級魔法を連発したから、目に止まってしまったんだと思う」
「ああ…それはまずいですね…」
ラウレンツ様は元死刑囚、現脱獄犯である。
領主のオールム様とも以前に面識があるとのこと。
顔を合わせれば即座に逮捕されてしまうかもしれない。
「もうこの街に長居は出来ない。今夜にでも街を出ないと…」
それはつまり、またしても冒険者になる機会を逸するということであった。
「…やむを得ませんね。あーあ、本当は冒険者登録だけでもしたかったなあ」
「え?モニカは未だ冒険者登録していないの?」
「それがまあ、色々ありまして…」
「本当に?俺はてっきり『例のA級冒険者』が君なのかと思っていたよ」
「『例のA級冒険者』?」
A級冒険者・グローネン。
超一流の剣士にして、超一流の魔法使い。
その剣は竜をも屠り、その魔法は天候すらも操る。
圧倒的な力を持ちながら、決して驕らず、慈悲の心で弱き者を助けて回る、救世の冒険者。
「いや、全く知らない人ですね…」
「俺は君がそう名乗って活動しているものと思っていたんだけれど…」
「いやぁ、偽名付けるにしても『グローネン』は無いですね。一応考えてはいたんですけど、使う機会も特に無くて…」
「へえ!どんな名前か聞いてもいい?」
「『クロ』とか」
「何それ?」
ネ『クロ』マンサーから取ったとは言えない。
「まあ、確かに『グローネン伝説』の中には覚えのある話もありますね」
ゴブリンの大集落を単騎で殲滅したとか、大湖の怪物退治とか、前人未到の迷いの森を突破したとか。
しかし、身に覚えのない話もまた多い。
金鉱脈を発見して大金持ちだとか、エルフの彼女と死に別れたとか、実は指名手配犯だとか。
「つまり、グローネンさんの話とモニカの話が、どこかで混ざってしまったと」
「多分…」
そして、私には『グローネン』という名を、つい最近聞いていたことを思い出した。
「実は私、心当たりがあるんですけど…」
「実は俺も、心当たりがあるなあ…」
話し合いの結果、今回のゾンビ復活も含めて、全ての功績を詐欺師が産んだ『架空のA級冒険者・グローネン』に擦り付けることに決まった。
そして、夜が明ける前に私達は街を抜け出し、獣人の国へと向かったのだった。
◾️王都の冒険者ギルド会議
ゾンビの大氾濫から数日後。
「えー、本日の議題は『石仮面の聖者・グローネン』についてです」
「『グローネン』というと、最近南部で活躍している冒険者のことだな」
「名前だけは以前から聞いたな。水竜を斬っただの、妖精の国を発見しただの、未発見の金鉱を見つけ大金持ちになっただの、眉唾な噂ばかりだったが…実在していたのか」
「以前の噂については真偽定かではありませんが、『ゾンビの大氾濫』を収めた件については目撃者が多数います」
「しかし、『聖魔法』を使い死人を生き返らせたというではないか」
「聖人の出現は数十年に一度ではなかったのか?」
「王女殿下、英雄聖女に続いて三人目の聖人とは。間隔が短過ぎでは?」
「南部の連中が嘘を吐いているのでは?」
「そう思い、都合四度別々に調査員を送りましたが、上がってきた報告は全て『疑う余地無し』でした」
「「「「「うーむ」」」」」
「加えて言うなら、裏付けどころか『ゴブリンロードの集落』の撃破、『大湖の怪物蛇』の討伐、前人未到の『迷宮の森』の踏破等々、依頼にすればA級超え確実な話がいくつも出てくる始末で…」
「まあ、冒険者の活躍は喜ばしい話ではある。これで我々冒険者ギルドの評価も上がるというもの」
「それなのですが…何度調べてみても『グローネン』なる人物は冒険者ギルドに登録されてはいないのです」
「何だって!?」
「何かの間違いでは?『グローネン』はA級冒険者なのだろう?」
「噂ではそうでしたが、B級C級まで遡っても『グローネン』なる人物は見つかりませんでした」
「では、やはり存在しないのでは?」
「しかし、一千体ものゾンビの群れを一瞬にして消し飛ばしたのは『石仮面の人物』で間違いないのです」
「そしてここからが本題なのですが、『石仮面の冒険者』を王都へ召喚するよう、王命が下っています」
「何と…」
「その『石仮面の冒険者』は未だオールムに?」
「いや、ゾンビを撃退した後、行き先も告げずどこかへ消えてしまったらしい。現在は消息不明だ」
「ふーむ、それでは召喚も何もありませんな」
「事実をそのまま公表するしかないのでは?そもそも冒険者でないなら我らには関係の無い話」
「その通りだ」
「いや、待て。一度良く考えてみよう。もし『仮面の聖人』が冒険者でないと分かったらどうなる?」
「何か問題が?」
「そうか、囲い込みか!」
「然り。現在の王家は何よりも『聖人』を欲している」
「ユリウス陛下は最近伏せりがちだというし、レオナルト先王様はポーションが飲めない体質ですからな」
「もし冒険者ではないことが知れれば、まず間違いなく王家は囲い込みに動くでしょう」
「なるほど。出来ることなら冒険者ギルドに留めておきたい、とそう言うわけですな?」
「確かに、何と言っても『聖人』ですからな。冒険者ギルドと関係が切れるのは惜しい」
「元々無かった関係でもですか?」
「無論だ。冒険者ギルドに聖人が所属しているとなれば我々の影響力は大いに高まること間違いが無いからな」
「しかし、どうするのです?『石仮面』を今から探すにしても、王家の召喚命令をそう長く待たせるわけには…」
「ひとまずこっそり『石仮面の聖人』を冒険者登録しておけばよいのでは?」
「A級冒険者の所在を把握していないのでは冒険者ギルドの管理能力を疑われてしまうぞ」
「確かに…」
「やはりどうしようも無いのでは?」
「一つ名案を思い付いたぞ。『S級冒険者制度』を使ってはどうか」
「「「『S級冒険者制度』?」」」
「S級冒険者には広範な裁量権が認められている。つまり、居場所を把握しておらずとも問題はないのだ」
「なるほど、それなら確かに前例があります」
「過去のS級冒険者も変わり者揃い。いや名案ですな」
「功績的にも十分なものがあり、また元々A級冒険者という噂でしたから、ごく自然にS級昇格は受け入れられるでしょう」
「お待ちを。件の冒険者は仮面を被っております。その上我々も顔を知らないのでは名を騙る偽者が大勢発生するかもしれませんぞ」
「それは実際に聖人の力を使わせて確かめれば良いだけよ」
「それは…冒険者ギルドの受付が混乱しそうですが…」
「そこはそれ、現場の仕事である。我らには全く関係のない話よ」
「「「「「確かに」」」」」
「では、『石仮面の聖者・グローネン』をS級冒険者とすることに異論のある者は?」
「「「「「異議なし」」」」」
かくして『仮面の聖者・グローネン』はS級冒険者となったのである。
第四章完
5章についてですが書くかどうか分かりません。
主人公もS級になったので(なってない)切りも良く、仕事も忙しくなったのと、また内容的に戦争描写が必要なため時勢的に不適切かもしれないからです。
戦争も流行病も現実からは無くなって欲しいですね。
ではまたいつかどこかで。