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転生したら女の子だったのでせめてSランク冒険者になる  作者: ゴブリン・A・ロイド
第4章 S級冒険者
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100話 蘇生

前回投稿2年前ですってよ奥さん。びっくりねオホホ


前回までのあらすじ

ゾンビに襲われたリンク(元ラウレンツ)少年は死ぬ寸前で主人公に助けられた

 オールムの街の上空で、私は浄化の魔法をラウレンツ様に使った。


 ポーション大量摂取による『過回復症状』も問題無く浄化で治せた。


 ラウレンツ様は自分で風魔法を使い、私の腕の中から離れていった。


「二つほど考えがあります」


「やっぱり、モニカは凄いよ!俺は何も思い付かないのに…」


「まずゾンビ達をぶっ殺します」


「ちょっと待って」


 眼下では千体近いゾンビが街壁に殺到し、今にも街の中へ雪崩れ込んでしまいそう。


 討伐自体は浄化で砂に変えてしまえば簡単なのだが、しかしゾンビの中にはラウレンツ様の知り合いも混じっているという。


 出来ることならば助けたい。


 私の浄化は死後短時間であれば死んだ人間を蘇生させることも出来る。


 ここで問題になるのは、ゾンビが『死んだ人間』なのか『魔物』なのか、という点だ。


 『死んだ人間』なら浄化で蘇生出来る可能性はある。


 だが、『魔物』として判定されてしまった場合は砂にして消してしまう恐れがあった。


「そこで一度ゾンビを殺してしまうのです。死んだゾンビは『ただの人間の死体』だと思いませんか?」


 普通にゾンビを浄化するよりは蘇生確率も上がるのではないか。


「ただ、一つ問題があって」


「一つなのか…」


「聖女である私は殺殺生厳禁なので、ゾンビの殺害はラウレンツ様に任せることになります」


「!」


 ついさっきまで人間だったゾンビ。


 中には知り合いもいて、それを若干十一歳の少年が殺さねばならない。


 蘇生のためとはいえ、この案はラウレンツ様の精神的負担が極めて大きいのだ。


 ラウレンツ様は血の気の失せた顔で言った。


「…それしか方法が無いなら、やるよ」


「そこで第二案です」


 第二案は第一案よりも更に現実感の無い案になる。


 正直、成功率は相当に低いだろう。


 が、もし成功すれば誰も人を殺さずに済むかもしれない。


「第二案は、私の魔力でゾンビを人に戻してから浄化で蘇生させる、というものです」


「魔力で人に戻す?そんなことが可能なの?」


「分かりません。第二案は私の特異性に期待した賭けです」


 なお、ここで言う『特異性』は『ネクロマンサーである』ということだが、


「確かに…『聖女』の君ならもしかしたら…」


 ラウレンツ様はそういう風に誤解した。


(…ネクロマンサーになった人間は魔物扱い。ラウレンツ様にも言わない方がいいか…)




 方針が決まったので、私達は地上へと降りていった。


「とりあえず第二案から試します。その間ラウレンツ様には時間稼ぎを頼みます」


「分かった」


 地上には動いているゾンビが未だ千体近く残っている。


 対する兵士と冒険者は数十人ほどで、おまけに全員が疲れ切っている。


 つまり、これからの時間稼ぎはラウレンツ様が一人でやるしかない。


「風よ!」


 ラウレンツ様の風魔法で着地する。


 街壁の外、時間稼ぎのために少し離れた場所に降り立ったが、ゾンビ達はすぐに気付いてこちらへ向かってきた。


 私は地面に両手を着いた。


「始めます!」


 探知魔法の要領で地面に魔力を流す。


 作戦の第一段階はゾンビの接する地面全てに魔力を流すこと。


 その後に地面からゾンビの足へと魔力を伝わらせ、ゾンビの体内を調べるのだ。


 本当は一体ずつ直に触って魔力を流したいところだが、相手の数やラウレンツ様の負担を考えると時間が足りないように思われた。


「巻き上がれ!」


 迫り来るゾンビが風魔法で吹き飛ばされる。


「おお」


 私は思わず呟いた。


 百体近いゾンビがこちらへ接近を試みていたが、その悉くがラウレンツ様の風によって押し戻されていた。


 風魔法は広範囲攻撃において他の魔法属性より秀でている。


 その分威力は劣りがちだが、今はそれもプラスに働いている。


 吹き飛ばされたゾンビはすぐに起き上がり、また近付いてきて、また吹き飛ばされる。


 殺さず、しかし時間は稼ぐ。


 ラウレンツ様は完璧に任務を遂行していた。


「美しい風だ」


 私はラウレンツ様の風魔法に一瞬目を奪われた。




 次は私の番だ。


 私の方も地中への魔力展開は終わった。


 一部の地面が隆起したり陥没したり割れたりしたが、些事だ。


 で、ここからが正念場だ。


 第二段階では千体近いゾンビへ同時に魔力を流し込むという極めて難しい魔力コントロールが要求される。


 繊細な魔力調整は私の最も苦手とする作業だが、どうにかするしかない。


「フゥー…」


 私は大きく息を吐いてから、一気に魔力を上方へと引き上げた。


 目指すはゾンビの足の裏。


(いっけえ!)


 ッパァン!!


「あ」

 

 魔力を侵入させた直後、凄まじい爆発音が響いた。


 そして、ゾンビ達の足首が一斉に吹き飛んだ。


「…」


 どうやら、魔力を流し過ぎたらしい。


 辺り一面にはゾンビ達の足と鮮血が撒き散らされた。


「モニカァ!?」


「ご、ごめんなさああああああい!!」


 ラウレンツ様はゾンビを傷付けないよう手加減して魔法を使っていた。


 が、私の失敗で全てのゾンビが悲鳴を上げてぶっ倒れた。


 台無しである。


「後で絶対治すので許して!」


 なお、ゾンビ達が倒れて地面との接地面が増えた結果、先ほどよりも魔力の侵入が容易になり、二度目のトライで第二段階はクリアとなった。




 ここからは第三段階だ。


 魔力で体内を探り、ゾンビを普通の人間に戻す方法を見つけ出さなければならない。


「うっ」


 魔力で見たゾンビの体内は酷いことになっていた。


「身体中がグチャグチャだ」


 ゾンビの体内ではもの凄い勢いで魔力が巡っていた。


 それがゾンビの正体だった。


 死した肉体を魔力で強制的に動かしているのだ。


 無理矢理動かすために過剰なまでの魔力が体内を巡り、代償として身体の内側はボロボロになっている。


 内臓が破け、骨が欠けて、血管は破裂している。


 削げた肉片は穴から落ちて、このまま放置すれば徐々に白骨化が進んで行くのだろうと思われた。


 なるほど確かに外法である。


 死体に対して一切の配慮が無い。


 死体を単なる道具、人形として使い潰す魔法が死霊術(ネクロマンシー)なのだ。


(仕組みは大体分かった。これなら浄化でいけるか…?)


 死体が魔力で動かされているだけなら、『魔物』とは別モノなのではなかろうか。


 『魔物』でないなら浄化では滅されず、人として生き返るのでは?


(…いや待て、早まるな)


 確かに浄化一発で解決するならそれが一番だ。


 しかし『待て』と心の中で警鐘が鳴っている。


 何かが心の片隅に引っかかっていた。


(…そうだ。私は以前、ゾンビを浄化で消し飛ばしたことがある)




 あれは私が二度目に死んだ日のこと。


 ゾンビの上位種であるリッチは浄化の光に触れると砂になった、とギルバート様が言っていた。


(上位種は別か?いや、違うな)


 リッチが浄化で砂になるならゾンビもそうなる可能性は高いだろう。


 それに直感が「ゾンビは魔物だ」と言っている。


 無根拠だが、私の中のネクロマンサーがそう囁くのだ。


 私はゾンビの体内を更に調べることにした。


 侵入させた魔力を元からあったゾンビの魔力の流れに乗せて、全身に行き渡す。


 ほどなくして、魔力の発生源がゾンビの身体中央鳩尾(みぞおち)付近にあることを突き止めた。


(魔石みたいなものは無い。でも確かにこの辺りから始まっている)


 リッチには核となる魔石があったが、ゾンビには無かった。


 格が無いからゾンビは斬られても死なないのだろうか。


(いや、身体の真ん中に風穴を開ければ多分死ぬ。一部を斬ったりしても意味が無いだけだろう…)


 ここだ。


 ゾンビをゾンビ足らしめているのは魔力発生源のここ。


「ラウレンツ様、浄化を撃ちます」


「何か分かったの!?」


「魔力の発生源を見つけました。浄化するなら多分そこしかありません」


「凄いね、ゾンビの魔力の発生源なんて、今まで誰も見つけられなかったのに!」




 私は疑問に思った。


 割とあっさり見つかったゾンビの弱点が、何故今まで知られていなかったのだろうか。


 これまでゾンビの倒し方といえば全身を燃やすくらいしかなかった。


(誰も調べなかったのか?そんな馬鹿な)


 私は魔法が使えず悩んでいた頃のことを思い出した。


 あの時、エルダー先生の魔力は私の身体に上手く流れなかった。


 魔力の属性が合わなかった所為ではないかとベルガー様まで呼んできてもらったのだが、結局ベルガー様の魔力も感じることは出来なかった。


(そうだ。私の魔力は灰色だった)


 私は聖女であり、ネクロマンサーだ。


 色にしたら白と、黒なのではないか。


 黒い魔力でなければゾンビの身体に流せないのだとしたら…。




(って、今は余計なこと考えている場合じゃない!)


 私はちょっと考えてから、ゾンビ達への魔力侵入を辞めた。


 そのまま地面伝いに浄化を流そうかとも思ったが、鳩尾に辿り着く前にゾンビ自体を消し飛ばしてしまいそうで、辞めた。


「ラウレンツ様、ゾンビを一体だけ通してほしい。出来れば、死後時間が経っていなさそうな、蘇生出来そうな人を!」


「了解!」


 試しにゾンビ一体の鳩尾を浄化してみるのだ。


 それで機能停止したら、全身に浄化をかけて生き返るかを試してみる。


(というか、最初からゾンビ一体を調べていればゾンビ達の足首を爆散させずに済んだのでは?)


 しかし、今更考えても後の祭りである。


 ぶっつけ本番なのだから何もかも完璧には出来ない。


 匍匐(ほふく)前進で向かってくるゾンビ達のうち、一体だけが風の魔法に飛ばされずこちらへ来た。


 私はまず地面を隆起させてゾンビを転がし、仰向けにした。


「浄化!」


 鳩尾に浄化の魔法を放つと、鳩尾周辺だけが砂となって消えた。


 そしてゾンビは動かなくなった。


 ここまでは想定通り。


 やはり鳩尾辺りがゾンビの核。


 そして次が、最後にして最大の問題だ。


 格の無くなったゾンビは果たして人間なのか。


「蘇生始めます、浄化!」


 太陽の如き光が動かぬゾンビの身体に降り注ぐ。


「お願い!生き返って!」


 これでダメならゾンビを蘇生させることは出来ないだろう。


 第一案の『先に殺せば浄化で生き返るのでは』作戦も恐らく失敗する。


 やることは大して変わらないのだから。


 そして、結果はすぐに分かった。




「う~ん」


「あ…」


「う~ん…何か…」


「あ…あ…」


「何か…あったけえなあ…」


「アーブラさん!!!」

明日21時にもう1話投稿予定です

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