表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Peace Bird Air Company  作者: どんゆう@Project_Catty
2/5

PBA238便

Peace Bird Air Companyの実質第1話にあたるお話です。

飛行機が飛び立つ為の準備シーンや交信シーンがくどいほどあります。

しかもその殆どが多少は調査したものの、いい加減であることは否めません。

それでもよかったら読んで頂ければ幸いです。



「はぁ~」女社長はため息をついた。特大に重苦しく不景気なやつだ。

「どうなさった?姫様(女社長)」じいさんが問う。

「言うまでもありませんよ、後見人(じいさん)。人間、ため息をつくときは不景気な時です。」ムスっと女社長は答えた。

「今回のフライト以降のスケジュールです。必要とはいえ一か月以上も社員研修で仕事無し、収入無しなのですから…」再びため息をつく。

「ははぁ、その件ですか。しかし姫様、人間一回ため息をつくと一つ幸せが逃げる、というのを聞いたことがありますぞ?」じいさんは表情を変えずに返す。

「じんぺーさんから聞きましたよ。確かに今後暫くはえらい赤字だそうですな?Peace Bird 1~4号機であるF-14D(R)とその整備機材及び予備部品のアメリカへの返却、そして新しく導入する6~13号機の機種転換訓練と整備運用訓練。本来なら大赤字どころか尻に火が付いて夜逃げモノですな。しかも訓練は訓練で本来最低数か月掛かるのに、一か月で済ますなど無茶ですからな?」とじいさんはカカと笑う。

「笑い事ではありません!後見人(じいさん)。それと姫様はやめてください!」女社長はヒステリーを起こす。

「しかもです!」ダンッと机を叩く。

「イルクーツク飛行機生産工場のやつら、ウチのSu-35SUBMK 4機に加え、Yak(ヤコブレフ)-130 4機を抱き合わせ購入で契約させられたんですよ!で、契約後にイルクーツクに視察に行ったら行ったで件のYak-130は作っていてもSu-35SUBMKは作っていない。どこで作っているんだ!と聞けばコムソモーリスク・ナ・アムーレ航空機工場で作っている。今度はスホーイ設計局になんで最初からそこを紹介しなかったんだ!?と怒鳴り詰めたら、ケロッとした顔でSu-35Sという機種自体はコムソモーリスク・ナ・アムーレ航空機工場で作っているので、うちのもそこで作っている。しかし輸出機なので名目上イルクーツクで作って(やって)いることになっている、と。何故そんな事にしたんだ!?と問い詰めたら、そうしないとイルクーツクとヤコブレフ設計局が潰れるからだと。ふざけるのもいい加減にしろ!と怒鳴りましたが、今度はもし解約するなら違約金と今までの工数分を支払い、更に作り途中の機体の引き取り手も連れてこいと!お陰でじんぺーさんにはこっ酷く叱られ、余りの怒りで頭が沸騰して鼻血吹きそうになりながら気絶しかかってぶっ倒れそうになってましたよ!これで研修後以降に収入が全く無かったら、いくら私のポッケ(資産)でもカバーしきれません!」彼女のイライラは本来無い筈のカンストを超えている。スホーイ設計局からみればまさにカモ(世間知らずのお姫さん)ネギしょって(ドデカい財布を持って)やって来たので詐欺ったと。簡単に引っかかった自分の間抜けさが余計怒りを増長させた。余りにも悔しいのでもう一度八つ当たりで机を蹴とばす。

「では…もう止めたら如何です?姫様…既に終わった事です。あのような過去は忘れて、静かで平穏な別の暮らしされてみては?」とじいさんは少し優しく女社長に問いかける。

「それは出来ません…後見人(じいさん)。」女社長は自分の席から窓際へ歩いてブラインドを指で開いた。丁度Peace Bird 1号機が飛び立つところだった。その光景をを忌々しげに眺めながら

「この会社はあの後悔と悲しみを他国とその民にさせない為に興したのですから。それと…私の過ちの証拠であるアレを手に入れ、二度と人の手に渡らぬよう国連の保管庫に預けなければあまりにも無念すぎて潰すにも潰せません。ましてや平穏な暮らしなど送る気にもなれませんよ。」とじいさんに振り向き答えた。その声には幾許かの悲しみが含まれていた。

「とはいえ」とじいさんが返す。

「こちらもロシア政府国防省やスホーイ設計局に我儘をしたのですから、お相子ですな。」

その答えに女社長は呆れながらも少し噴き出して笑ってしまった。

ここは北アイルランド ロンドンデリー空港の一角にある、Peace Bird Air Company本社の役員室。

ジュネーブ国際空港支部と同様に施設の土地を無理やり買い取り、機材、備品の整備や業務用の建物を施設したのだ。両空港ともこの会社に対して勝手に敷地内に建物を作って居座る賊の様なモノと認識されている。但し、ジュネーブ支部は建物がプレハブより少しマシな3BEA程度のショボさに対し、本社は比較的綺麗でおよそ300BEA位の豪華さだ。


ジュネーブ支部では今回のフライトについて各々が準備を進めていた。

おっちゃんたち整備グループは使用機材であるPeace Bird 2号機の最後の整備とチェックを格納庫(ハンガー)で進め、書類作成のお姉さんは飛行に必要な書類を次々と処理していた。

「やっかいだなぁ。」機長は飛行計画を受け取り、呟いた。

「どうしたんです?」書類作成のお姉さんは不思議そうな顔をして聞く。

「あーっとですね。天候の項目を見ていたのですが、どうやら地中海で比較的勢力の強い低気圧があるもんで。」機長は苦い顔で答える。

「あー、あのメディケーン(地中海小規模台風)ですか。かなり中心気圧が低いようですね?風雨が心配です。」と書類作成のお姉さんもの表情も少し陰る。

「それもそうなんですが、高高度まで影響がでているらしく迂回するしかなさそうなんです。ですがそうなると当初の計画の到着時刻より2,3時間ほど遅れそうだなと思いまして。あと確かに風雨の影響も確かに気になりますね。事前の情報はあっても、実際はどうなのか飛行してみないとなんとも。」と機長は答えた。

普通の旅客機にとって低気圧でもかなり危険な脅威で、それを見分けるXバンド気象レーダーで状況を判断し大概は迂回をするのだが、それをつかみきれない天候も偶にある。機長は自販機からココアを買うと、事務所へおっちゃん達整備組が入ってきた。どうやら一時休憩のようである。

「あー、まいったまいった。」部屋に入る早々、おっちゃんがぼやく。

書類作成のお姉さんはどうしたんです?と聞く。

「いやぁね、第2エンジンがご機嫌斜めでね。」とデッチもぼやく。

「そうそう。デッチは怪しい所をチェックしまくって、ボクもFADEC(デジタルエンジン制御)に何度もテストプログラムを走らせたり回路やコネクタ接続を確認したんだけどね~。」ボクッ娘のホウコウも困ったように話す。他の整備員たちは思い思いの場所で休憩を取る。

第二エンジンは推力だけで無く機内発電機の一つでもあり、これがストールするとアビオニクスや通信系、FCS(火器管制)等に大きな影響を及ぼす場合もある。

「うわっ!おっちゃん、それ大丈夫なんですか?」と慌て気味に機長が質問する。

「んー、無茶をしなければ壊れないと思うんだが…」と曖昧な返事を返す。

デッチも「動くには動くし問題は無さそうなんだけど、気に入らないノイズと余計な微弱振動があって…とにかく気に入らないだよ。おっちゃん、2番を降ろしてみる?」

「流石にそんな時間はねーなぁ。」とおっちゃんは腕時計を見る。

ホウコウは「まぁこれで2号機もラストフライトだし、騙し騙しで飛んでみてよ。」と機長をなだめる。

既に1号機はアメリカ海軍に引き渡せるように完全に整備してあるのでこちらに変更することは出来ない。

ゲンナリしながら機長はココアを啜る。気象、エンジンと今回のフライトは不安要素が多かった。

「ま、フライト準備時刻ギリギリまで粘ってやるよ。このおっちゃん様達にまかせておきな。」

フライト準備時刻まであとおよそ7時間くらい。まだ多少の時間はありそうだ。そして丁度このタイミングで乗客(パッセンジャー)がやってきた。彼は国連ナイロビ支部環境計画の至急の書類を運ぶ事務官である。これから彼と契約書を交わし、搭乗前の耐減圧テスト、耐Gテストを受けてもらう。問題が無ければ搭乗許可が出る。

「そういえば機長。」書類作成のお姉さんが声をかける。

「こう言うと失礼というか不躾というか…少し前から雰囲気が変わりましたね。」

機長にはピンとこなく、?という表情をする。

「以前は何というか…無機質というか、まるで機械かコンピュータのようなものに話しかけている感じがして。返事も感情が感じられないような、はい、か、いいえのようだったのに、最近は少し愛想があったり困ったときは正直に困った顔をする。何となく人間味のある喜と哀と楽といった雰囲気が出てきたような…あ、ホントに失礼でした。ごめんなさい。」と済まなさそうに謝った。

機長はそれとなく話を聞いて「そうですか?」とだけ答えた。


機長は格納庫に駐機してあるPeace Bird 1号機を見ていた。

戦闘機では今主流の低視認配色(ロービジー塗装)にレドームと主翼先端、各尾翼先端に少し濃い蒼が塗られている。垂直尾翼にはPeace Bird Air Companyの社章である国連憲章の旗を掲げるマンガチックなハトのマークが描かれている。

この機体も2号機ももうすぐアメリカ合衆国へ返還される。その後はモスボール(乾燥保存)か解体、もしくは博物館行きだろう。1号機のロット番号は159610、2号機は159013。両機とも89年リビア シドラ湾事件での実戦経験機で、それをD(R)型として改修した機体だ。大体のF-14ファンはこのD型が物語に出てくると喜ぶものだ。

またアメリカ支部にある3号機,4号機のロット番号はそれぞれ160403,160390となっている。この2機も81年リビア シドラ湾事件での実戦経験機で、計4機の実戦経験があるF-14D(R)を入手した時、女社長(姐さん)はとても興奮して喜んだという。あの人は変にマニアックだ。

機長は1号機へ歩き、機首に手を触れていた。思えばこの2機とはそれなりに長い付き合いだったと感じた。

2006年にアメリカ合衆国海軍から完全退役、今の今まで何年もずっと飛んできた筈だった。時には味方ではない存在に囲まれ、また時には会社規定により非殺傷での格闘戦(ドッグファイト)を余儀なくされることもあった。何故なら国連のチャーター機が防御とは言え戦闘行動をするのは国際問題になるからだ。

機長は何となく感傷的な気分になっていた。頼もしい飛行機だったと。隣ではおっちゃん達が2号機の整備を続けていた。しかし聞こえる話では第2エンジンのご機嫌は直らない様で、このまま飛行させる形に決まったようだ。これがF-14D(R)として、2号機として最後のフライトなので完調にして飛びたかったが仕方ない。ふと目的地の方向、南を見ると微かに黒い雲が垂れ込み始めていた。


出発時間である18:30の2時間前、事務官の飛行適正テストが無事終わり契約書も交わした為、フライトの準備を始める。肉体的に負荷が強いテストなので、現在彼には十分な休憩をとってもらっている。機長は再び事務所でフライトプランを確認している。航路はここ、ジュネーブ国際空港を18:30に離陸、高度34000feet(フィート)(1フィートは0.3048メートルなのでおよそ10363m)でイタリア上空を通過、そのまま地中海を超えアフリカ大陸のエジプト、スーダン、エチオピア、目的地のケニアにあるナイロビへ到着する。しかしそこでふと気づいたことがあった。

「書類作成のお姉さん、今更なんですがなんでウチ(PeaceBird)で飛ぶんですかね?」

「?どうことです?」と顔所は首を傾げた。

「基本的にウチは航路もしくは目的地が危険地域の場合に高速で乗客を送る航空会社ですよね?ですが今回の航路を見る限り、紛争のある国の上空は飛びますが飛行に支障をきたすほど危険と訳でも無いですし、ケニアも空港自体は危険というほどでは無いです。時間的にも他の民間航空会社を使っても11時間程度、どんなに遅くても15,6時間で着きます。そうすると現地時間でも朝6時から11時位には到着できると思うんです。ナイロビ支部の登庁時間は知りませんが、そのくらいに着けば書類の到着も間に合う気がします。更に言えば運賃。他社なら恐らく800ユーロ(1ユーロ¥128と計算でおよそ¥10万程)もあればお釣りがきます。ウチの場合その10~100倍かそれ以上払わないとペイ出来ないので飛ばせられません。なんでウチなんでしょうね?」

「確かにそう言われればそうですね…。でもこの依頼はジュネーブ支部と正式に契約を交わしたモノですし。」書類作成のお姉さんも疑問に持ち始める。

「念のため、ジュネーブ支部に問い合わせますか?」

「いえ。契約書を交わし、運賃も支払われているなら気にする必要は無いと思います。」今回のフライトに不安要素がまた一つ加わった。天候、微弱なエンジン不調、意図不明な契約…

楽な遊覧飛行とは行かなくなったようだ。


丁度各書類を確認し終わった後におっちゃんが事務所に入ってきた。棚の上にあるクリップボードを手に取り、一枚の書類を挟む。飛行前に行う外観チェックリストだ。機長はおっちゃんに付いて行き、二人で一緒にチェックを始める。

ますは機首前方左側。ボーディングラダーの出し入れ、ピトー管、全温度プローブ、迎角センサー、M61A1バルカン砲の発射口、同排煙、薬莢排出機構に異常が無いかの目視チェック。次に機首正面へ移動。レーダーホーンの傷や凹みの有無、ホーンを上げてAN/APG71レーダー、IFFアンテナの視認。閉じて風防温度制御機、UHF/ADFアンテナ類のチェック。機首右側に回り給油プローブの出し入れ異常が無いかのチェック、右側ピトー管、全温度プローブ、迎角センサー、緊急ラムエアダクトの目視チェック。かがんで機首下にあるAN/AAS-42 IRST及びテレビカメラユニット、付近のアンテナの目視確認。前脚およびその格納部と内蔵装置をチェック。格納部にはジャイロユニット、火災探知装置、液体酸素装置、乾燥剤タンクなどが積まれてている。前脚の着陸灯とアプローチライトのチェックも忘れない。そのまま後方へ行き、第2エンジン吸気口と可変ランプの確認。

「おっちゃん、ここが例の問題点?」機長は一生懸命中を覗いている。

「いや、奥のエンジンそのものだな」かなり悩まし気におっちゃんは答えた。そのままチェックを続ける。

梯子(タラップ)を使い、機体上部に上る。右側吸気口上部にあるリレーボックス、付近のAN/APR25アンテナをチェック。問題は無さそうだ。更に機首真後ろのエアデータコンピュータも確認。接続等に異常に見える部分は無い。目立つ補助空気取り入れ口にも外観では変な部分は見られない。そして重要な左主翼。翼の上には汚れ一つなく、へこみなど当然ない。スポイラーも前縁フラップ、後縁フラップも綺麗である。

再び梯子を下り、今度は機体下側のチェックを始める。主翼先端の翼端灯、更に先端の編隊飛行用ランプを確認。ひび割れはない。主翼下面も滑らかで美しい。左主翼取り付け部にはステーション8にAIM-9Mサイドワインダー、ステーション7にAN/AAQ-25 LANTIRN夜間低高度赤外線航法および目標指示システムが搭載されている。本機体は戦闘目的ではないので必要無さそうな装備ではあるが、自己防衛、特に夜間低視認状態での地上攻撃物の早期発見として使われる。当然この2つの装備も調べられ、問題は無い。主脚もグリスアップ等充分であり、チェックOK。少し後ろにあるパネルを開けるとエンジン補器。その部分もチェック。そのまま更に後方へ行くと件のエンジン付近である。エンジン下カウルにあるフィンと内蔵のUHFブレードアンテナ、横についている全遊動式水平尾翼もチェック。これらも外観では異常は見られない。垂直尾翼及び追突防止灯も異常なし。当然垂直尾翼も綺麗である。社章である国連憲章を掲げるマンガチックなハトが誇らしげに映える。今度は真後ろ。燃料排出ドレーンは見た目問題無し。着艦用アレスティングフック、使わないが問題なし。チャフフレアディスペンサーも、取り付け及び個数に問題は見当たらない。尾端灯も割れなど無し。更に回り左後方。先程とは反対に水平尾翼チェック。エンジンカウル下のフィンをチェック。そのまま左主翼下のチェック。ここも汚れ一つない。翼端灯、編隊飛行用ランプも異常なし。主脚も右同様に十分に整備され、抜けは無い。ステーション1,2にはAIM-9Mサイドワインダーが装着されている。これも自己防衛用。固定具合も問題無し。梯子で上にのぼり、左補助空気取り入れ口、リレーボックスをチェック。取り入れ口の変形は無し、リレーボックスのリレーもすべて嵌まっている。左主翼上面のスポイラー、前後縁フラップも異常なし。主翼も綺麗なものだ。梯子を下り、最後に機体下側に潜り込む。この辺りには操縦翼面のリンケージや油圧系があるが、ここも入念に出来るだけチェックを行う。ここが破損すると「なんてことだ!もう助からないゾ♡」もしくは「絶体絶命DEATH☆」となる。規定で必要な外観チェックを機長が主導でおっちゃんが補佐と説明で全て行い、問題が無い事を確認した。クリップボードに挟まれたチェックリストの項目にチェックが付いていることを確認し、機長はサインをする。そしてそのままおっちゃんに渡す。飛行前には必ず行う事で、時間は30分程要した。これでフライト準備は整った。機長はフライトスーツに着替えるためにそのまま事務所のロッカーへ向かう。おっちゃんはクリップボードを書類作成のお姉さんへ提出し、乗客に同じようにフライトスーツへ着替えさせる為、ロッカーへ案内する。


18:00少し前、駐機場にポツポツと雨が当たるようになってきた。機体の始動を始める。

機長はコクピットに乗りこむ。

機体の周囲には整備員が機体確認とマーシャルを務める。

正面はおっちゃん、右側はデッチ、背部はホウコウ、左側も整備部の人だ。

おっちゃんは両耳に両腕を当て、インターコム通話可能のサインを出す。機長はそれに対しサムアップ、確認を返答する。デッチ、ホウコウ、整備員も同じようにサムアップを返す。

「APU始動開始」機長は宣言し、両腕をキャノピーからだし、Tの字のサインを出す。各員が確認をした後、機長は左コンソールのAPU始動スイッチを入れる。30秒ほどして真後ろから小さいが甲高いタービンの音が聞こえ始める。APU始動。そのまま左手の人差し指と中指を上に指し、次はグーにして上腕を持ち上げ同様に左腕を回す。これは第1エンジン始動のサイン。第1,第2スロットルレバーがアイドルの位置にある事を確認し、燃料ポンプのスイッチを入れ、次に第1エンジン駆動スイッチを入れる。APUから圧力空気が第1エンジンに送られ、ファンが回転を始める。同様に30秒ほどすると第1エンジンは始動し安定した回転を始める。エンジン吸気温度異常無し、排気温度異常無し。エンジン回転数アイドリング規定値で異常無し、燃料流入量正常。油圧系正常。並行してエンジンの発電機も電力を発生。各アビオニクスを始動し始める。飛行操縦装置、無線、航法装置、各種レーダー及びアンテナ始動。火器管制システムチェック。同時に機内モニターコンピュータも並列で各システムに異常が無いかチェックし始めている。後部席に回りアナログの高度計、気圧高度計、燃料計、時計を確認する。同じものが機長席にもついており、同じ値かをチェックし問題無し。右コンソールにあるECM(電子戦妨害装置)をONにし、いつでも使える状態にする。そしてレーダー・ミサイル警報装置も始動。最後に左パネルのレーダー操作パネルのレーダーモードをパルスドップラーモードに設定。また上下方向も前方中心に設定。これは空中の飛行物体の探知の為に使う。戦闘機ならではの特殊な装備だ。このレーダーの性能は現在の戦闘機のそれと比較しても劣る部分は無く、探知距離は300kmを超える。機長は再び前席に戻りハーネスや酸素吸入パイプを機に繋いだ。そしてコックピット横にタラップが配置され、乗客がやってくる。装備が重いためよたよたと歩いていた。整備員の手を借りて、なんとか後部席につく。そのまま整備員がハーネスと酸素吸入パイプを機に繋ぐ。

「事務官殿、Peace Bird 2号機へようこそ。歓迎します。」と機長は挨拶をする。

「あ、ああ。宜しく頼むよ機長。」緊張のせいか、声が上ずっている。

「まだ飛行準備に時間が掛かりますが、少々協力をしてもらう場面がある為説明をさせて頂きます。」

「ああ、お願いするよ。」協力と聞いてドキッとしたのだろうか?事務官は更に不安げになる。

「まず契約の通り、今回の飛行では事務官殿の命と安全が第一です。その為に本機には脱出装置があります。頭の上にある二つの輪っかを強く引けばそれが作動します。緊急時に私が指示を出しますので、それに従ってください。次に口に付けている酸素マスク。これは8000feet以下なら外していても良いですが、それ以上の高度になると低酸素症を起こす可能性があります。これも指示がありましたら付けてください。ご心配でしたら飛行中ずっとつけていることをお勧めします。」

「わかった。」少し落ち着いたのか、返事も明瞭になってきた。

「最後にですが、ちょっと難しいお願いがあります。」

「?」

「基本的には各パネルは触らないでほしいのですが、一部は緊急事態時に操作して欲しい装置があります。」機長がそう言った後、整備員が2枚ほど紙が挟まれているクリップボードを事務官に渡す。

「このクリップボードには一部の警戒装置の操作方が書いてあります。それを私の指示があったときに操作及び報告してください。場所と手順はその紙に書いてあります。なに、簡単な操作ですよ。」

その紙には電子戦(ECM)パネル及び操作スイッチと正面パネル右にある各種警告灯についての報告の仕方が書いてある。

「安心してください。今回のフライトでは恐らく使わないものですから。」と機長は事務官の緊張を和らげようとする。確かに今回は使うことは無いと思いたい。しかし万が一は想定しておかないとならない。再び事務官の了承の声に緊張が走る。安心してください、万が一ですよと機長は緊張をほぐそうとする。そして再び機体の始動の続きをおっちゃんに伝える。そろそろ雨あしも無視できない位になってきた。機長は人差し指だけ立てて下腕を持ち上げ、クルクルと回す。第2エンジンの始動だ。第2エンジン駆動スイッチを入れる。30秒程して甲高いエンジン音が響き始める。いつ聞いてもいい音だと機長は思う。おっちゃんやデッチ達が言うような微弱な振動とノイズは感じられない。機長はあれ?おかしいと疑問に思った。次におっちゃんが両腕を広げ、主翼拡張のサイン。スロットル横の可変後退翼操作レバーを一番奥のAUTOにセット。直ぐに主翼が20°の位置に広がる。おっちゃん、デッチ、ホウコウ、後部の整備員からOKの返事とサインが返ってくる。次は各動翼の動作チェック。おっちゃんが右腕を前に出し、水平安定板のチェックを促す。デッチ、ホウコウと後ろの整備員が確認担当だ。機長は操縦桿を手前に引き、上昇位置と伝える。3人からOKのサイン。次に操縦桿を奥に押し、その後右、左に動かす。各動作もOK。次におっちゃんは左手を突き出し右手を引く。これはラダーのチェック。左ペダルを踏み、機首が左に向く方向へ動翼が動く。今度は逆の指示が出て、右ペダルを踏む。さっきとは反対に右方向へ向くように動翼が動く。最後におっちゃんが両手をグーにして、それを胸の前で合わせる。これはスピードブレーキ開放サイン。スピードブレーキレバーを操作し解放。問題なく稼働し再び閉じる。そのまま両手を開き上下に合わせる。これはフラップのチェック。この場合は全下げ位置の指示。フラップレバーを最大に引き、フラップが拡張ていることを確認。これもOKの回答が来る。次は両手の人刺し指をT字に交差し、フラップハーフのチェック。OK。最後に両手を貝のように手を合わせフラップ全閉を指示。フラップは完全に格納された。これでおよそ飛行に関するチェックは終了となる。おっちゃんは前脚の着陸灯点灯指示をだし、着陸灯をONにする。離陸時にはフラップは最大開閉にする必要があるのでおっちゃんが再びフラップ最大拡張位置のサインを出す。フラップが再び最大拡張される。最後に各翼端灯のスイッチを入れ点灯していることを確認。これで離陸準備完了だ。両親指をあげ、小指同士を合わせたT字サインを出す。これで車輪止めが外される。キャノピーをクローズ。同時におっちゃん達4人はハンガーへ移動する。気圧高度計、電波高度計を標高430mに設定。時間は丁度18:30。

「さあ発進しますよ、事務官殿」と合図を送る。

機長はラジオのチャンネルをジュネーブ国際空港のコントロールタワーの周波数に合わせる。

「タワー、こちらPBA238便。飛行準備完了。本社駐機場前で待機」と連絡をする。

「PBA238便、こちらタワー。了解。指示があるまでその位置で待機。」

「タワー、PBA238便了解、待機する。天候状態をを知りたいので教えて欲しい。」

「PBA238便、了解。天候報告担当に繋ぎます。」管制官はチャンネルを天候報告担当に繋ぐ。

「こちら天候報告担当。PBA238便、ルートを知らせてください。」

「PBA238便、飛行ルートは離陸後イタリア上空を飛び、地中海横断、HECA(エジプトのカイロ国際空港)へ向かい燃料を給油。その後はHECAにて天候情報を報告してもらいます。」

「こちら天候報告担当、PBA238便、進路確認了解。イタリアから地中海にかけて現在高度40000feet付近までメディケーンあり。その為、東から西への強い風と激しい雷雨。風速およそ25m/s。また部分的に雹が発生する可能性あり。十分留意してください。」それを聞き、機長はやはりかと思う。

「こちらPBA238便、天候報告担当、情報ありがとう。チャンネルをタワーに切り替えます。良い夜を。」

「こちら天候報告担当官、了解。そちらも良い夜を」それを聞き、機長はタワーへチャンネルを合わせる。

「タワー、こちらPBA238便。天候確認を完了。誘導路(タキシーウェイ)に入りたい。誘導の指示を待つ」

「PBA238便、こちらタワー。誘導路進入申請了解。現在左方向から接近中のEZS643(イージージェット・スイス643便)の後に続いて進入ください。滑走路は方位23。」左をみると2番目に来る飛行機がそれらしい。ランプ手前を通り過ぎるのを待ち、過ぎたらすぐに右に曲がりEZS643の後に続く。前方の旅客機に比べてこちらは小さいが、キャノピーによる視界が広いため、事務官は興味深そうにきょろきょろと首を回してあたりを眺めている。暫くすると、EZS643便の前の機が滑走路上を加速し去っていく。EZS643便が滑走路に入り、目の前で離陸準備を始める。PBA238便は手前のHolding Positoin 23で待機。数十秒後にEZS643便も滑走し飛び去る。今度は自分たちPBA238便だ。事務官がふとさっきまでいた誘導路を見ると、その後ろに並んでいた数機の飛行機のパイロットや乗客が興味深そうな目でこちらを見ていることに気付いた。機長は少しだけ愉快そうに笑い滑走準備を始める。スロットルはアイドルから20%。主脚ブレーキは全閉じ。機体後部が持ち上がり、まるで獲物を狙う肉食獣のように見える。

「PBA238便、こちらタワー。滑走路クリアー。出発を許可します。」管制官からの許可が下りる。

機長は念のため見える範囲で滑走路上及び誘導路、その交差路を視認。特に障害物は無いように見えた。

「タワー、こちらPBA238便。滑走を開始する。」そして主脚ブレーキを解除し、スロットルをミリタリー位置(アフターバーナーを使わない最大推力)に引き上げる。推力は103kN x 2=206kN、比較的大型旅客機であるボーイング787の推力の284kN x 2=568kNと半分以下だが、機体重量は1/8しかない。その為加速力は旅客機とは比べ物にならない。排気ノズルは最大に開き、蒼い炎がそこから吹きだされる。最初F-14D(R) Peace Bird 2号機は機首を上下し、まるで前に進むことをイヤイヤしているようだったが、速度が上がるにつれ空を飛ぶ喜びを思い出したかのようにぐんぐん加速していく。その凄まじい轟音と加速は、誘導路上の飛行機の中の人たちもいつも見ている管制官も驚きの顔でそれを見送る。

「V1(離陸決心距離:この時点ではもう滑走中止できない速度)…ローテート(機首上げする速度 回転やポテトではない)。」と機長は淡々と管制塔へ状態を報告する。機首を上げて上昇し、高度が十二分になったところで着陸脚を収納、フラップも引き込む。機長はV2(安全飛行速度)になったことを確認し管制塔へ報告する。

「タワー、こちらPBA238便。離陸しました。」

「PBA238便、こちらタワー。チャンネルをLIMM(ミラノ航空管制センター)の周波数に合わせ、機首方位1-3-5,高度34000feetで向かってください。良い夜を。」とジュネーブ国際空港からの通信が終わる。

「PBA236便、タワーへ。ありがとう、良い夜を」と機長も挨拶をし、イタリア方面へ上昇しながら機首を向けていった。

「事務官、如何です?楽しめましたか?」と聴いてみると彼は非常に楽し気に

「ああ、凄い加速だ。ジェットコースターなどとは比較にならないほど楽しかったよ。」と少し息を荒げにしながらも満足げに答えた。


30分ほどで直ぐにイタリア半島に入った。現在高度は予定通り34000feet、速度は460knot/hである。可変後退翼は68°、矢じりの様に見える最閉位置。前方には黒い雲がみるみると迫ってきている。天候情報通りのメディケーン。問題は右へ迂回するか、左に進路を取るか、もしくはメディケーンの上空を飛ぶかだ。右を通れば向かい風だが距離は近くなる、しかしリビア付近を通るため緊張を強いられる。

逆に左側に向かえば追い風になり速く進め燃費も良くなる。但しカイロ国際空港へは遠回りになる。上空通過は少し判断が遅かったかも知れない。今から上昇すると急上昇になり煽られて危険である。機長は判断に悩んだが、元々のコースである左側を選んだ。ふと機長はさっきの事を思い出した。なぜウチで飛ぶことになったのかだ。

「事務官、そういえばなぜウチの便で飛ぶことにしたのですか?思ったのですが、民間航路でもだいたい同じ時間には着きますし、上空での危険空域もほぼ無いです。しかも運賃は安いと思うのですが…」

事務官はその質問について、不思議そうな顔をした。

「え?私は上層部から君たちへ予め説明はしてあり、この便で来てくれと言われただけなんだが?何も知らないのかい?」

「え?ウチは便の予約は受けましたが、事情説明などありませんでしたよ?なるほど、そういった事情ならば機密扱いかもしれませんね。窓口側でも何も聞いていないと言っていましたし。」機長も幾許かの疑問を含んだ声で答える。

「いやぁ、でも今日この業務があってよかったよ。明日は私の誕生日でね、このところジュネーブ支部に缶詰だったからついでに休暇を取って家でのんびりしようと思っててね。」と事務官は嬉しそうに答えた。

誕生日…何故か自分には無いモノと思った。

「うーん、だったらジュネーブ支部もこんな疲れる乗り心地の悪い飛行機より、ファーストクラスやビジネスクラスを取った方が気が利いてると思うんですがね。」少し呆れ気味に機長は答えた。10時間以上こんな飛行機に乗せられれば疲れるどころではない。エコノミー症候群が起こってもおかしくない。

「でも珍しい体験だし、この際じっくり味わうとするよ。疲れを含めてね。」と事務官は朗らかに答える。到着した時の事務官の感想が楽しみだ。きっともう二度とごめんだと言うだろう。

「誕生日と知っていたら何か差し上げたいところでしたが…そうだ、エチオピアかケニア付近に近づいたらもう少し珍しい体験をして頂くというのはどうでしょう?」と提案をしてみる。

「?どういうことだね?」

「せっかく戦闘機に乗って頂いているんです。燃料に余裕があればマッハ超えや戦闘機らしい機動も味わってみるのも良いかと思いまして。あの付近なら空域が空くかもしれません。」悪戯気な提案に事務官は喰い付いた。

「ああ!ぜひお願いしたい!こんなことは滅多に体験できない!楽しみにしているよ!」と、とても喜んでくれた。

その瞬間、機体が風にあおられ始めた。暴風圏内に入ったようだ。

「事務官、これからメディケーンの暴風圏内に入ります。かなりの揺れが予想されますので体をシートにしっかり預けてください。」

あっという間に風雨は強くなり、機体は木の葉が舞うように激しく揺さぶられ始めた。先にもあったが、この機は旅客機と違い小型で軽量な戦闘機である。いくら推力が高くても荒波にもまれる小舟のようなものだ。ザーッという強い雨も機体を叩きだす。思ったより激しい風雨。機長にはメディケーン、つまり強い低気圧下を飛んだ経験が無かった。今その事に気づき、緊張が走る。オートパイロットを使っているとはいえ、操縦にかなり苦戦している。アンチアイスをONにし、もう少し楽なコースが無いかと考え、正面パネルにあるMFD(多機能ディスプレイ)の右側を気象レーダーモードに切り替えた。表示には緑から赤へ変化する降雨のエリアが表示される。左右に大きな赤い雨域があり、その間は繋がっている。しかし二つの間最初は黒で次に赤、そして黄色、緑となる細い通路状のエリアがあった。奥はそのまま弱まっていくように見える。ここなら比較的楽に抜けられるかもしれない。高度をまず38000feet、次に40000feetに上昇しながら通っていくのが賢そうだ。早速現在飛行している航空地域管制であるLGGG(アテネ航空管制センター)に進路と高度の変更要請を行う。

「LGGG、こちらPBA238便。メディケーン回避の為、進路を機首方位1-2-0、高度38000feetに変更を申請します。」

「PBA238便、こちらLGGG。機首方位1-2-0、進路変更可能です。ですが上昇は3分ほど待機して下さい。現在高度36000feetに貴機の後ろからMSR598便(エジプト航空598便)が接近中。追い越し完了後に指示を出します。」

「LGGG、こちらPBA238便。了解。機首方位1-2-0、に変更。LGGGの指示後に高度38000feetへ上昇します。」機長は答え、進路を1-2-0に向ける。機体はますます強まる風雨で煽られ、気を抜けばバランスを崩し墜落するかもしれないと内心思った。心の中でMSR598便に早く追い抜いてくれと願っていた。1分、2分と少しずつ時間は経過するが、とてもゆっくりに感じじれったい。なんとか機体を安定させつつ3分が経過した。しかしLGGGからの指示は来ない。そろそろ何とかしたいのでこちらから連絡をする。

「LGGG、こちらPBA238便。そろそろ高度を38000feetに上昇をしたい。後続のMSR598便は追い抜きましたか?」

「PB238便、こちらLGGG。現在MSR598便は高度36000feet、貴機のほぼ真後ろにいます。後2分程待機をしてください。追い抜きが完了次第、こちらから指示をします。」その回答を聞き、機長はくそ!と思った。しかしLGGGもこの低気圧で管制に大混乱が生じ、声に混じってイラつきを感じたので仕方ないなと冷静になる。では、それなら少々危険だがこちらも減速してやり過ごそう。

「LGGG、こちらPBA238便。現在こちらの速度は460knot。430knotまで減速し、MSR598便の先行をさせようと思います。同一高度に別便はいますか?」機長は少し冷静になって問い返す。

「PBA238便、こちらLGGG。430knotへの減速可能です。後方に別便はいません。しかし機速が落ちますので十分注意して下さい。」

「LGGG、こちらPBA238便。了解。機速を430knotまで下げます。」同時に両エンジンのスロットルを40%の位置へ下げる。速度が下がり、可変後退翼が前方に広がる。気象レーダーを見ると丁度黒い通路状のエリアに差し掛かるところだった。上空に大きな気配を感じた。恐らくあれがMSR598便だろう。もう1分程待とうと思った瞬間、機にまるで石つぶてが投げつけられるような音があちこちから聞こえ始めた。しかもコンコン、という感じではなくガガガという機関砲を浴びせられたような勢いだった。機長は何が起こった?と驚く。しかし即座に雹だと理解する。キャノピーが割れないか、とか機種の塗装が剥げるのではないかと心配をした。しかし待っていたのはもっと悪い事態だった。

「機長!」事務官の叫び声が聞こえる。いや、それを聞く前に既に理解していた。計器類を見るまでもなく第2エンジンからの排気音が無くなっていた。エンジンが失火(ストール)したのだ。その瞬間、機長は急激な変化機体姿勢の変化を感じた。勝手に機首が右側へ強く向く。

「!?」機長は焦って操縦桿を左手前に引く。同時にコックピット周辺に大量の雹が当たる音がした。しかしびくっとしながら反射的に操縦桿を元に戻し、左側のラダーペダルを踏む。機体は水平に戻り、機首方向も元に戻った。機長は急に思い出した。それはF-14の機体特性だ。F-14は左右エンジンが離れている為、片方がストールすると機の空力重心を軸にその方向へフラットスピンするのだ。特に初期のF-14のエンジンはストールが発生しやすく、とある映画でもその場面は再現され、実際の運用でも40件の事故報告があった。しかし何故第2エンジンがストールしたのか。出発前の第2エンジンの不調が原因なのか?エンジン計器を見ていると、MFDの気象レーダーが目に入る。それは先程まで黒い雨量の少ない領域だったのが、今では真っ赤な領域のど真ん中だったのだ。確かに風雨が激しい領域を回避したコースを選んだはずなのに。しかしそれらの原因究明をしている時間は無かった。今はメディケーションの真っただ中で、しかも1機のエンジンだけで推力を絞って飛んでいる。まずは推力を保たねばならない。第1エンジンの推力を80%まで引き上げる。それに反応し第1エンジンは再び轟音を上げる。恐らくこれでこっちはストールしないだろう。そして事務官の事が気になり、声を掛けた。

「事務官、驚かせて申し訳ありません。ご覧の通り第2エンジンがストールしました。しかし当機はエンジン一基でも飛ぶことが可能です。ですが念のため第2エンジンを再始動させます。」

「だ、大丈夫なのかね?」事務官は突然のトラブルに当然動揺を隠せない。

「ええ、大丈夫です。心配はありません。」と答え、エンジン再始動の手順を始めようとする。その瞬間、LGGGから無線が入る。

「PBA238便、こちらLGGG。MSR598便の通過を確認しました。38000feetへの上昇を許可します。」その連絡はなんとも間が悪かった。これで二つの選択肢が出てきたが、そのどちらもが上手く行けば通常飛行に戻れる。しかし間違った方向に転ぶと最悪の結果となるかもしれない。一つは今この場で第2エンジンを再始動させ、38000feetまで上昇する。だが再始動に失敗すると…不吉な考えが頭に浮かぶ。もう一つはこのまま38000feetまで上昇し、更に安定する高度である40000feetまで上昇し、そこで第2エンジンを再始動させる。問題は第1エンジンだけでスムーズにそこまで上昇できるかだ。推力不足の場合、やはり風に煽られ最悪の場合は錐もみ、そして…。取りあえず先にLGGGにこちらの状況を伝えることにする。

「LGGG、こちらPBA238便。第2エンジンがストール。事態解決の為、上昇申請は一時取り消します。」

「PBA238便、こちらLGGG。第2エンジンストール了解。緊急事態ですか?」と問い返しが来る。

「LGGG、こちらPBA238便。現在第1エンジンのみで飛行中。再始動を試みるが、現在高度で始動する方が良いか、もしくは38000feetへ上昇後に始動する方が良いか、直ぐには判断できません。判断が決定しましたら再度連絡します。」と答えた。さてどうするか。このままでいるのは当然出来ない。

事務官は心配しながら再び大丈夫なのかと問いかける。その質問も今は焦りしか生み出さない。機長は当初の判断通り今すぐに第2エンジンを再始動することに決めた。第1エンジンだけでも現状飛べているので、第2エンジンが始動しなくても通り抜けられると判断したからだ。まずLGGGに連絡をする。

「LGGG、こちらPBA238便。現在の高度のままエンジン再始動を試みます。念のため、周囲に便がいたら離れるよう指示をしてください。」

「PBA238便、こちらLGGG。了解しました。周囲に別便はいません。エンジンが始動したら連絡をして下さい。」

「LGGG、こちらPBA238便。了解しました。」そしていったん無線を切る。すぐさまエンジン再始動のチェックリストをフライトスーツ膝にあるポケットから取り出す。第2スロットルをニュートラル位置へ移動。OK。燃料ポンプを一度閉め、エンジン内に入った余剰燃料と入って溶けた雹、つまり水を排出。30秒ほどその状態を維持。再び燃料バルブを開き、第1エンジンの圧縮空気を第2エンジンに送る。そして30秒間エンジン駆動スイッチを入れた状態にホールド。最初は圧縮空気で空回りしていた第2エンジンに火が灯り、力強いタービン音が聞こえだす。計器類を確認。回転数アイドル、吸気圧力正常。排気圧正常。排気温度正常。油圧異常無し。機長は再始動を確認した。

「スロットル、80%へ。」そのままスロットルを第1エンジンと同様に80%まで上げる。

「ふぅ。第2エンジン再始動確認。」とチェックリストを確認後、実際に計器でも始動していることを確認した。

「お騒がせしました、事務官。第2エンジン再始動しました。これで大丈夫です。」と彼を安心させた。

LGGGにも問題が解決されたことを報告しなければならない。

「LGGG、こちらPBA238便。第2エンジン再始動しました。ご心配をおかけしました。このまま38000feetへの上昇を再申請します。」

その瞬間だった。後方で派手にオレンジ色に輝いているのを視界にとらえた。事務官もそれに気づき、小さな悲鳴を上げる。第2エンジンからジェット排気とは明らかに違う炎が噴射されていた。機長は慌てて第2エンジンの排気温度と排気圧の計器を確認した。排気温度は異常加熱、排気圧は基準値以下だった。正面のMFD(多機能ディスプレイ)には第2エンジンの異常燃焼の報告と緊急カットの指示が表示される。とっさに正面パネル右上にある第2エンジン緊急停止レバーを引く。そして燃料供給バルブを閉じる。第2エンジンは完全に破損。再始動の見込みは無くなった。これでかなり危険な状態に陥った。何かの影響で第1エンジンも同じ事になるかもしれない。すぐさまLGGGに連絡を入れる。

「LGGG、こちらPBA238便。再始動した第2エンジンが破損。消失しました。再始動は不可能です。」機長の声に焦りが再び滲む。LGGGからは何なんだよという雰囲気の返答がきた。

「PBA238便、こちらLGGG。緊急事態を宣言しますか?」その回答に機長は逡巡する。緊急事態宣言はよほどのトラブル、例えば操縦不能やハイジャックなどかなり厳しい状況下での宣言だ。この状況が該当するか悩ましい。しかしPeace Bird Air Conpany社内規定での安全優先は一番が乗客の命と身の安全、2番目は機材である機体の保護。機長は会社の備品であり、優先順位は無きに等しかった。天候、機体の状態等を鑑みて、事務官を無事に守るのは最寄りの空港に着陸する事だと機長は判断をした。

「LGGG、こちらPBA238便。緊急事態を宣言。PAN-PAN、PAN-PAN、PAN-PAN。現在エジプトのカイロ国際空港方面へ飛行しています。最寄りの着陸可能な空港を教えてください。乗客乗員は2名。機材はF14D(国際民間航空期間、ICAOのコード)。」

「PBA238便、こちらLGGG。緊急事態宣言を確認。但しこれよりLGGGは管轄外となる為HECC(エジプト航空管制センター)へ連絡を移管します。無線周波数はそのまま。HECCへ現状報告及び最寄りの空港について連絡をしています。現状を維持してください。」再び機長はくそっ!と思った。またタイミングが悪い。なんて酷い厄日だ。

「LGGG、こちらPBA238便。了解しました。無線周波数はこのまま。HECCへ航空管制への移管を確認します。HECC、こちらPBA238便。聞こえますか?返答をお願いします。」

「PBA238便、こちらHECC。無線感度良好。貴機の位置を確認しました。現在設備の整っている着陸可能な空港を確認中。候補はHEAX(アレクサンドリア国際空港)か、HEBA(ボルグ・エル・アラブ空港)、もしくはそのままHECA(カイロ国際空港)を推奨します。位置と距離、滑走路の長さを鑑みて、飛行可能なら設備に於いてHECAが良好と判断します。返答を願います。」HECCから的確で具体的な提案が出される。HECC航空管制域に入るとメディケーンの影響がかなり弱まってきた。機体に異常が無ければHECAに着陸をした方が良いだろうと機長は判断する。

「HECC、こちらPBA238便。HECAへの緊急着陸を要請します。滑走路は一番長い所を要請します。」

「PBA238便、こちらHECC。要請了解しました。至急HECAに連絡します。」とりあえず緊急着陸への準備は整った。心配且つ緊張しているであろう事務官に声を掛ける。

「事務官、お怪我はありませんか?」その問いかけに事務官は特には無いと機長へ伝える。

「これよりカイロ国際空港へ緊急着陸を行います。念のためシート上にある黄色いハンドル二つをいつでも引けるよう準備しておいてください。私の指示があり次第、ハンドルを引いて脱出をお願いします。」かなり緊張が混じった声で事務官に指示を出す。

「わかった。」事務官も考えていなかった緊急事態に緊張していたが、およその安全確保への道筋が見えてきたので少しだけ安心をした。

「事務官、このような結果になってしまい非常に申し訳ありません。しかし必ずあなたの命と安全だけは守って見せます。」機長は約束をする。その一言は事務官にとって機長を信頼するのに十分な答えだった。彼ならきっと果たしてくれるだろう。

着陸の前に機長はPeace Bird Air Company社内無線で現状を報告する。

「カンパニー、こちらPBA238便。メディケーン暴風圏内で第2エンジンが破損、完全喪失。現在第1エンジンのみでメディケーン内を飛行。もうすぐメディケーン影響圏内から脱出。そのまま設備が充実されているHECA(カイロ国際空港)に緊急着陸をします。」その報告に対し、運行管理係は機長に対し質問をする。

「機長、事務官は無事か?けがはないか?機材の破損状況は?分かる範囲で答えてくれ。また着陸後で良いので、必要な処置や状況、行動を連絡して欲しい。無事着陸する事を期待する。」運行管理係はそこで無線を切る。しかしカンパニーからもう一度連絡が来た。

「PB238便機長、こちら女社長だ。規定通りに乗客の安全を最優先に確保しろ。次に機材の破損も最小限に抑えること。お前は会社の備品であり乗客の安全と機材を守ることが絶対だ。それを忘れるな。以上。」と冷徹な指示が機長に掛かる。ああ、分かっている。アンタにとって俺は人間ではなく会社の備品でしかない。

こんな会話は事務官に聞かれたくなかった。しかし非常事態なので、耳には入ってしまう。しかし彼が気にした様子は無かった。

エジプト領空に入り、メディケーンの影響はほぼ無くなっていた。遠くにエジプトの陸地、アフリカ大陸への入り口が見える。機体の異常の影響を考え機長は高度を下げる事にした。

「HECC、こちらPBA238便。高度を34000feetから26000feetへ降下、速度を430knotから300knotへ減速を要請したい。可能ですか?」

「PBA238便、こちらHECC。空域は確保してあります。申請があり次第こちらで対応しますので、その都度連絡をください。」

「HECC、こちらPBA238便。協力に感謝します。高度、速度を変更します。」オートパイロットの高度と機速を設定し、その速度に操作をする。暫くするとHECAの滑走路が見えてくる。それをみて機長は安心をする。第1エンジンは今の所異常はない。更に高度を3000feetに下げ、速度も230knotに減速することをHECCとHECAに申請する。HECAはそれを許可する。速度が下がったため、機長はフラップを10°の位置まで下げる。スロットルは50%に落とす。進入はILS(計器飛行)。並行でVFR(有視界飛行)での確認も行う。一度空港全体を確認するため上空を旋回することをHECAに許可を求める。HECAから許可が下りる。上空を旋回し、滑走路23Lに着陸する事に決める。機長は着陸パターンをHECAに報告する。

「HECA、こちらPBA238便。滑走路23Lに緊急着陸を行います。消防及び救急車の手配を要請します。1度30kmほど距離を取り燃料を余剰分だけ投棄。その後ゆっくりと降下し150knotでタッチダウンします。準備に入ります。」機長は着陸プランをHECAに報告をする。火災を防止するため、28km手前付近から後部燃料投棄口から余剰燃料を排出する。フラップはフルダウン。そしてギアダウン。前脚、主脚ともに固定位置、スリーグリーン。尾部エアブレーキ開放。滑走路23Lへの進入へILSを合わせる。高度はどんどん下がり、着地目標のタッチパッドへ機体を綺麗に降ろす。主脚が接地し次は前脚が接地。両足ペダルを全力で踏み主脚ブレーキを最大に効かせる。スロットルはアイドル位置。滑走路端、05Rの停止位置では完全に機速が安定操作状態になっていた。そのまま誘導路の邪魔にならない場所へ機を停止させる。機の周りはあっという間に消防車と救急車に囲まれた。幸いにも事務官に怪我は一つもなかった。機材であるF-14D(R)はあちこちが雹で塗装が剥げ、凹み、第2エンジンが完全に破壊されていた。機長はカンパニーラジオで無事着陸したこと、事務官は無傷であることを伝えた。直ぐにタラップがつけられ、事務官は空港スタッフの手でベルトと酸素供給を外され、機から降ろされた。機長は機の動力系、電源系全てをカットオフし降りた。


そこからが大変だった。機長はカンパニーに現状の報告。事務官が休んでいる間にカンパニーからビジネスジェット(ホンダジェット)で女社長、書類作成のお姉さん、じんぺーさんがサポートでカイロ国際空港へ来た。女社長は事務官への謝罪と今後についての相談、書類作成のお姉さんはナイロビまで行くためのルート検索と便の手配。じんぺーさんは支払いや女社長と今後の処理についての相談。等々。

運よくカイロ国際空港からナイロビまでエチオピア航空が21:30から出発することがわかり、その便のファーストクラスを予約する。そして機長はというと…

機長はカイロ国際空港運営会社であるカイロ航空公団の応接室に待機していた。彼はこれから今回の顛末について、これからやってくる事故調査委員会に報告をしなければならなかった。事故調査委員会のメンバーは機体製造国であるアメリカのNTSB(国家安全運輸委員会 建物の立派さは推定1000BEA以上)。機体が元アメリカ海軍運用機だったため、アメリカ国防省内で特別に設置された事故調査委員会(国防省ペンタゴンの建物の立派さはNTSB以上と考えられ目下検討中)、機の国籍があるイギリスのAAIB(航空事故調査局 建物の立派さは推定300BEA以上)、最後にジュネーブ支部があるSTSB(スイス事故調査委員会 建物の立派さは現在調査中)の4組織である。調査団メンバーは空港到着から8時間後には全員そろっていた。

調書を取るために機長が状況を説明する。まずメディケーン外縁を飛行中に気象レーダーで黒で示された風雨の弱い空域があり、そちらに進んだこと。その際にその領域の上空はもっと弱い可能性がある為上昇を申請したこと。背後からMSR598便が接近していた為、減速し追い越させてから上昇をしようとしたこと。そのタイミングで第2エンジンがストールを起こしたこと。エンジンを再始動させたところサージング(ジェット排気の逆流)が発生し、エンジンが破損したこと。以上が今回の事故のあらましと説明をした。

彼らからはいくつかの質問をされた。気象レーダーの黒い領域が風雨の弱い領域と判断した理由。またその上空はもっと弱まると考えた根拠、メディケーションの中で第2エンジンを再始動させた判断は正しかったか。もう一つの選択肢である上空での再始動を選ばなかった理由、等々。結局調書は3時間にも及び、機長は完全に困憊していた。調査団はPeace Bird 2号機、F-14D(R)のブラックボックス、FDR(フライトデータレコーダー)CVR(コックピットボイスレコーダ)を持ち帰る事をカンパニー側に伝えた。(海水に漬けてから真水に漬ける必要性は無かった。)

また国防省からはこのまま機はここで保管し、数日後にアメリカ海軍が回収する旨を伝えてきた。機体はどうやらその後、国防省事故調査委員会とNTSBによって綿密な調査をされるらしい。


数時間後、事務官はケニアの国連ナイロビ支部へ無事到着したと連絡があった。実は今回の飛行は国連として彼へのサプライズプレゼントと今後使用するかもしれないという理由での体験飛行だったと説明をされた。その中で起こった事故は国連での任務において起こりうる危険への危機感と対処を養わせるための良い機会だったとも説明を受けた。事務官は書類を届けた後、数日間の休暇を取ったとの事だった。

最大の損失を出したのは当のPeace bird Air Companyだけである。

数週間後、本事故の事故調査報告書がカンパニーと関連各所に配布された。本件は次のように結論付けられた。


1)今回の事故の発端は気象レーダーにおける気象への特性がパイロットに誤解を与えた。

2)ストール発生はエンジン推力を絞ったため雹、つまり水が大量に入ったため失火した。

3)エンジン再始動のタイミングは、シミュレーションでエンジン1基のままで上昇を行った場合、機体が非常に軽量である為、簡単にバランスを崩し墜落をしていた可能性が非常に高かった。また同じようにF-14D(R)の設計上の特徴である間隔のあるエンジン配置は片方が推進力を失った場合、機体重心を軸としたフラットスピンが発生しやすく、同様に機体特性上、推進方向に対し機首がエンジン吸入口を塞ぐ形になると乱流が発生し、コンプレッションストールが更に発生しやすくなる。但し本機のエンジンであるGE F110-400エンジンではFADECの追加等でこの点は解消されており、引き続き調査が必要なことも挙げられる。

4)エンジン再始動後に発生したサージングに関してはストール直前のスロットル位置が40%と比較的高い位置に長い時間置かれており、エンジン始動時燃料排出時間がアイドル位置に設定して30秒では足りなかった。チェックリスト通りに行ったパイロットの行動は手順通りである。今後必要に応じてチェックリストの改定を行う。

5)重要点として本機体のエンジンGE F110型はアメリカ空及び海軍戦闘機の主力ターボファンエンジンであり、また本エンジンのジェットエンジンコアF101は民生用ターボファンエンジンCFM56のエンジンコアの原型である。このCFM56は類似事故があり、都度対策を行ってきたが本件でも再発したため更なる改良が必要である。同様にF110エンジンにおいても検討及び改良の必要性がある。


とされた。機長の判断と行動は正しく行われ、Peace Bird Air Companyとしての対応にも非は無いこととなった。結局は自然の猛威に対して、Peace Bird Air Companyの財力は無力で、ただ悪いくじを引かせられ無駄な出費をすることになっただけだった。女社長はどうやらお金を持っていてもその支出に対しては運が無かったようだった。


更にその数日後、この会社にだけ特別に発行した事故調査報告書を女社長と機長だけが受け取った。

その内容は二人に重要な疑問を与えることになった。

各便名、空港コード、航空管制IDは国際民間航空機関(通称ICAO:International Civil Aviation Organization)のルールに則り命名づけています。今回の便名はPBA(Peace Bird Air Company) 2号機 38回目の便という事になります。1,2号機ともに国籍は英国で固有番号もあるのですが、それを出す機会はなかったようです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ