表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は意外と  作者: CK
8/26

進路

絵を描くことが特別好きだったわけじゃない。


中高一貫の男子校に通っていたけど、目標もなくぼーっと生きてきた。


弓道部に入ってたけど、それだって弓道に惹かれたって言うよりは練習日が少ないのに魅力を感じての事。


兄貴は割りと早いうちから美大を目指して、絵の塾にも行っていたし、勉強も頑張っていたから一流の美大に合格した。

部活や生徒会活動もこなしつつ。


けど俺は高3、いよいよ進路を決めなきゃいけないというときになって美大進学を決めた。

特に他に思い浮かばなかったから。


ノートに漫画とか描いていたことはあったけど、美術部でもなかったし、成績も良くなった。


だから落ちた。

当たり前だよな。

絵、描けないんだから。

デッサンが特に下手。


で、デザイン系の専門学校に進学。

そこでコンちゃんと出会った。


まあ、なんか当時から浮いた存在だったけど、俺とは気が合った。


まさかこんなに長く付き合うことになるとはな…

専門学校時代の友達で未だ一緒に遊ぶのってコンちゃんと上野さんだけだ。


コンちゃんは変だけどいい人だ。

それがわかってコンちゃんの友達になる人を俺は信用する。

だからコンちゃんの友達とはすぐ仲良くなれる。


紗綾ともすぐ打ち解けた。


紗綾は28歳の町工場の事務をやってるOLだ。

紗綾には強烈なコンプレックスがある。

胸がでかいという。


ほーんとにデカイ。

不自然にデカイ。

スイカ二つくっつけているみたい。




「もう、中学のときからこの胸が嫌で嫌で。

街を歩けばみんな振り返って見るし、声かけてくる人みんなスカウトだし、うつ伏せで眠れないし、肩こるし」


と、よく彼女は嘆いている。


「女の子の友達は無遠慮にうわ〜触らせてとか言ってくる。

死ねっって思う、口には出さないけど

でもねえ、コンちゃんに同じこと言われても全然嫌じゃないの。

不思議だよね」


とも言っていた。

なんか、わかる気がする。

コンちゃんは不思議な人で、他人がそんな台詞吐いたら絶対許せないようなことを言ってもなぜか彼女には腹が立たない。

いろんなことが許せてしまう。


ちなみに紗綾は胸を小さくする手術を受けようかと思案中らしい。

俺やコンちゃんは反対してるけど。


そう言えば、コンちゃんは俺がサラリーマンになるのも反対したっけ。


俺は全然絵で生計を立てる気なんかなかった。

ただ在学中課題でやった公募されていた公共施設のマークやファンシー商品のキャラクターデザインが二つ続けて入選した。


そしたら父親がそれに気を良くして付き合いのある企業のパンフレットの仕事を取ってきてくれた。

住宅メーカーの営業風の男が○○工法を説明するイラスト。


そんな感じに学生時代から少しづつ実績を積んできた。


卒業後の進路をどうしようか迷ったけど、就活用のスーツがあまりに似合わなかったことに思うところがあり、サラリーマンにならず不安定だけどフリーで絵を描いて生きていくことを選んだ。


絵は上手くないけど、それなりの感性はある気がする。

ハハッ自分で言っちゃったよ。


でも、ほんと絵は上手い下手じゃない気がする。

受け入れてもらえるか、もらえないかだ。

で、職業にできるかできないかは営業力があるかないかにかかってくる。

あと運ね。


作者男?女?って思うような絵を描くね、と言われる。

だからいろんな仕事を雑多にしている。

タウン誌なんかは明らかに女子向けだ。


一応男なので、男子のトレンドは収集しなくても肌で感じる。

けど女子のトレントはそういうわけにはいかない。

ある程度アンテナ張ってないと…

そんなわけで、俺には女子と付き合うことが必要だなって思ってる。


今は彼女いないからコンちゃんと紗綾が情報収集源。

…あの人たちを女子と括っていいのかは謎だけど。


そんなことを考えていた時、ピンポンとインターホンが鳴った。


モニターを見たら兄貴だった。




「佐太郎、熱どう?これうちのカミさんからの差し入れ」


それだけ言ってタッパーが二つ入った紙袋を渡して速攻帰って行った。

…兄貴、インフルエンザが移るの恐れているな。

まあ、家に幼児いるしね。


俺の兄貴の口癖は「佐太郎、俺に感謝しろよ」だ。

なんのことかというと…


兄貴は小学生のとき好きだった子に告白して振られたことがある。

理由は背がその子より低かったから。


それから兄貴は何かというと「佐太郎牛乳を飲め、背が低いと女にモテない」と俺に言ってきた。

あんまり牛乳好きじゃなかったけど、俺は兄貴の勧めに従った。


「お前の身長が伸びたのは俺が牛乳飲ませたおかげだ」と兄貴は言うけど…

でも兄貴も一生懸命牛乳飲み続けたけど背、伸びなかったよね?

俺とは15センチくらいの差がある。


そういうことから鑑みても俺の背が伸びたのは牛乳のせいではなく俺という個体の個性ではないかと推測する。


でも…いろいろありがとう、兄貴。

差し入れの料理、ありがたくいただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ