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君は意外と  作者: CK
6/26

これはこれは

ずいぶん想像していたのと違う。


えっと、なんというか…

デブ…あ、いや失礼、えーと、うん、小太り。

小太りで、少し前髪後退してんじゃん。

俺と同い年だったよな、確か。

身長も恵子と同じくらいだ。


ちょっと拍子抜けした俺をコンちゃんはニヤニヤ見ていた。


「ふ…佐太郎、見た目的に俺の方が上っておもった?」


嫌なこと言うなぁ。

まあ、そうだけど。


「けど、年収はアンタの三倍以上あるよ」


そりゃそうでしょう。

ユーラシア大陸の名前覚えられない国の天然ガスの輸入交渉してるって言ってたからな。

日本のエネルギー攻略の一端を担うデカイ仕事してるんだろうし。


そんな話から俺は勝手にお弁当屋の子の彼氏みたいな精悍なやり手風の男を想像していた。


けど実物はコレ。


ハハハハ、恵子…

幸せになれよ?


なんだろう、少し気分が上向いてる。

恵子の結婚相手見て少し溜飲が下っている自分がいる。

何かを捨てて、何かをとったんだよな、お前。


…しかしそう思うとあのお弁当屋の女の子すごいな。

どうやってあのハイスペックそうなイケメン捕まえたんだ?


コンちゃんの家から帰る電車の中では俺の興味は恵子の結婚から、あの女の子に移っていた。




最寄り駅で降りて自宅に向かう。

サブーサブーと呟きながら。

そして自宅へ通じる角を曲がらず、そのまま道を南下してあの商店街へ。


ちょっと飲みすぎたから、コンビニでウコンのお力を買って帰ろう。


ふ、それなら駅前のコンビニで買えば良かったのなぜわざわざマンションを通り過ぎた商店街のコンビニへ?と、自分にツッコミを入れる。

ま、心のどこかで今日もあの子が歩いてないかな…ばったり会えないかななんて思っちゃってるんだけど、そう思いどうりには…


!!

いた!


コンビニの手前の歩道を歩く俺の前方、反対側の歩道をこっちに向かって歩いている。

うつむきがちに。

あの安そうなダッフルコート着て。


迷ったけど、狭い車道越しに思い切って声をかけてみた。


「はひふ弁当さん!」


はひふ弁当っていうのはあの子が働いてる弁当屋の名前だ。


ハッとしてあの子が顔を上げた。

そして道を渡ってこっちにきた。


「あーこんばんわイラストレーターさん」


あ、今日は泣いてない。


「よく会いますね、今週二回目」


「ううん、三回目。俺、日曜日も君を見た」


「え…」


女の子はちょっと変な顔をした


「夜の散歩は君の習慣?」


「え、ああ、まあ…」


俺も酔っ払ってなかったらこんなことサクッと言わなかったんだろうけど…


「あの日、泣いてなかった?なんかあれから気になっちゃってさ」


「ああ…

ああ、それで…それでコンビニであった時、あんなこと言ったんだ。

私もちょっと気になってた、木月さんなんであんなこと言ったのかなって。

そうか、そうか、私が失恋して泣いてたと思ったんだ…」


そう言って女の子あははと笑った


「良かった。私てっきり木月さんって見える人なのかと思って…予言されちゃったのかなと不安になっちゃってた」


予言?


「あ…それはゴメン、デリカシーのないことを言った。

デリカシーないついでに聞いていい?なんで泣いてたの?」


「木月さん…酔っ払ってます?」


そう言って彼女は眉をひそめ俺をじっと見つめる。

…丸いなぁ顔も、瞳も。


「うん、友達の家で飲みすぎた。二日酔い予防にウコンのお力買いにコンビニ行こうかと思って」


「そうか…うーん、木月さんが酔っ払ってなかったら話すんだけど」


「じゃあ酔ってない、酔ってない」


「ぷ、嘘つき。

あー、じゃあうちのサービス券十枚ためてくれたら話します」


そう言って女の子はにしゃっと笑う。


あれ…

この子意外と商売人。


「十枚ね、ちょろいちょろい」


と言ったら彼女今度はふふっと肩をすぼめて可愛らしく笑った。

おお、ずるい笑い方するなあ…


「あんまり夜遅くの散歩はお勧めできないな、今日はもう帰りなよ」と忠告したら「最近太ってきちゃったから、少し夜歩こうかとおもってここを何往復かしてるの…でも今日はお言葉に従いもう帰ります」と言った。


う…

この素直さもずるい。


で、俺たちはちょっとだけ一緒に歩いてコンビニ前で別れた。


ウコンのお力を買ってコンビニを出たあとお弁当屋のある方をちらと眺める。

不思議だ、好みとは外れた野暮ったい子でも若い女の子と話すと気持ちが華やぐ。


はは、オスというのはそういうかわいらしい生き物なのですよ。




そして週明け。

昼夜一日二回のはひふ弁当通いが始まる。


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