表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君は意外と  作者: CK
4/26

噂をすれば

噂をすれば影。

もしくは曹操のことを話していたら曹操が来た…みたいな感じ?


恵子のこと考えていたら恵子の情報が入った。

はは。




コンちゃんは専門学校のときの同級生。

一年の夏休み服部先生の小学生対象のワークショップを手伝うグループ分けが一緒だった。

それでなんとなく仲良くなった。

存在自体は入学当初のオリエンテーションのときから気にはなってたんだけどね。


最初はワークショップ手伝った三人で飯食いに行ったりしてたけど、途中で一人抜け、今は俺とコンちゃん、あとその時々のコンちゃんの友達と遊ぶことが多い。


コンちゃんはまあまあの美人だけど女度ゼロ。

変人。

大人数での行動を嫌う。

嫌うというより、団体に所属できない。

いや、所属できないわけじゃないんだけど、なんか妙におとなしくなってしまう。


そして上手いんだけどいまいち面白みのない絵を描く。


本人は面白いのになぜそれが絵に投影されないのか不思議に思う。

…案外根は真面目な人間なのかも知れないな。

ブッ、ないか、それは。


でもコンちゃんは絵を描くのがほんとに好きだ。

だから絵を描く事を生業なりわいにできることを感謝しろと常々俺に言ってくる。


コンちゃんは小さいTシャツ会社で企画のような、事務のような電話番のような仕事をしている。


コンちゃんの人付き合いは変わっていて、いつも一人の友達とガッツリ付き合う。

そして全てをその一人でまかなう。

で、その友達は二年周期くらいで変わる。

趣味が変わると友達も変わる。

つまりコンちゃんの趣味の周期が二年なのだ。


恵子もコンちゃんの友達だった。

コンちゃんが競馬に凝っていた頃の。

初めて三人で飲みに行ったとき、なんか俺は恵子がすごく気にいってしまった。

美人だったし、なんでもはっきり物を言うところがすごくいい女に思えた。


俺は初めて俺に涙を見せない女と付き合った。


私の友達に手を出すとは、佐太郎お前は出入り禁止じゃ!とか言って恵子と付き合っている間はコンちゃんからの連絡は途絶えてしまっていた。


あの人はリアルな男女交際を嫌うんだよね。

生臭いと言って。

恋愛漫画なんにはのめり込むのに…

きっと神聖な自分の友達に俺が手を出したことが許せなかったんだろうな。


恵子にふられてしばらくしてから俺は許されてまた一緒に遊ぶようになった。


その頃はすでにコンちゃんの趣味は競馬ではなく、ミュージカル役者の追っかけに変わっていたし、恵子との付き合いもなくなっていたみたい。


でも、ま、ゆるく付き合いはあったんだろうな。

結婚の報告が入るくらいだから。


相手は合コンで知り合ったというあの商社マンかな?丸の内に勤める…

それは週末飲みに行ったとき聞けばいいか。

どーでもいいけど。


いや、どーでもよくないな。

恵子がその男に振られてたらいいなと思う。


程々の会社の程々のサラリーマンが相手だといいな。

あんまり出世しなさそうな。


ふふ。

…小さいなぁ、俺。

と、少々自嘲する。


とりあえず、行くとコンちゃんに返信しておこう。




週末の予定が出来たな。

それを言い訳に実家に帰らずに済むな。


最近母親と父親の仲が良くない。

ちょっとしたことでケンカになる。

ん…まあそれはもともとか。


お前の顔を見ると母さんの機嫌が良くなるから週末実家に顔出せとか父親に言われてるんだけど、ちょっと面倒くさいからのらりくらりかわしてる。

けど両親には仕事面で世話になってるとこあるからむげにはできないところもあるんだよね。


今住んでるマンションだってもともとは母親が投機目的に買った部屋だし。


親父は六十をすぎても未だにヤンチャな男をやってる。

それがケンカの火種になる。


…あの人いつ引退するんだろう。


推測するに、俺が女の涙に弱いのはあの人のせいなんじゃないかと思う原体験がある。


俺は子供の頃、良く親父に新築の建物を見に連れて行かれた。

個人の住宅とか、小さな公民館とか、親父が手がけた物件。

それは英才教育的理由ではなくではなく、子連れの外出なら母親に勘ぐられないから。


出かけた先ではよく女の人と一緒だったような気がする。



一人印象に残ってる女の人がいる。

四、五歳のくらいのときに会った人。

なんか泣いてた。

多分別れ話にも立ち会っていたんじゃないかな?俺。


目鼻立ちはよく覚えてないけど、ただふっくらとした頬を伝う涙が目に焼き付いてる。


あ、キレイだなと思った。


あの光景を見たことが、今の俺の女性の嗜好の元になってるんじゃないかと推測する。


親父…

幼児に何見せてくれてんだ?


…まっ、いいけど。




あれこれ考えているうちに部屋に着いた。

買ってきた唐揚げ弁当を電子レンジに突っ込む。


温まった弁当をダイニングで食いながらコンちゃんのとこに送られて来た缶詰ってどんなんかな?と考える。


缶詰つまみに飲むのもいいけど、缶詰おかずに炊きたての白飯食いたいな…

うん、コンちゃんにメッセージ送っておこう。


「白飯も炊いといて」


これに対してコンちゃんから返ってきた返信はOKのスタンプではなく、「佐太郎〜ほんとは恵子の相手を知りたいんじゃないのか〜」だった。


この質問には返信はしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ