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君は意外と  作者: CK
2/26

翌日

朝風呂に入った。

昨日風呂入らず寝てしまったので。


風呂から出て髪の保湿用のオイルを塗ってから丁寧に髪を乾かす。

髪に艶がないと、ひどくビンボ臭く見えるから。長い髪は特に。


髪は前も後ろも肩くらいの長さに伸ばしている。

作業する時にそれをざっくり一つにまとめて結ぶのが一番鬱陶しくない前髪の処理の仕方だと気づいてからはずっとこの髪型。


乾わかした髪を全部ひっつめて後頭部下の方で結ぶ。

これは仕事バージョン。

外出する時はセンターで分けて少しだけ前髪をたわませる。

そっちの方が女の子からの受けがいいので。


さて、仕事に入るか。




絵は手書きで描いてそれをパソコンに取り込み線を調整したり、彩色するスタイルで仕上げてる。

とりあえずシリーズの一巻目のイラスト分だけでも今日に仕上げてしまおうと思っていたら乗ってきて気がつけば三時。


買い置きのカップラーメンで遅い昼食。

ああ、弁当買いに行こうと思っていたんだけど集中して忘れてた。


…まあいいや、あの子のことは。


机に向かい再び絵を描く。

ここからは二巻用。


軽いめまいを感じ時計を見たら九時過ぎてた。


うそ、俺今日カップラーメン一個しか食ってない。

その事実に気づいたらひどく腹が減ってきたしフラフラしてきた。

今日は集中切れなかったな。

乗れば乗る。


最近父親経由で来る企業のパンフレットのデザインやイラストなんかが多かったから…

やっぱり本のイラストはリキ入るな。

金銭的に割が合わなくても。


とりあえずキッチンに向かい冷蔵庫の中のコーヒー牛乳を飲む。


よし、少し糖分入った。

これで外を歩いても貧血起こさないだろう。


駅前の牛丼屋にでも行こうかな…

そう思って部屋を出たんだけど、足はなぜか逆方向の古い商店街に向かう。


あれあれ、どうした俺?

あの子のいる弁当屋はとっくにしまってる時間だぞ。

まあこっち来ちゃったからしょうがない。

コンビニで弁当でも買って帰るか。


そう思ってお弁当屋の少し手前にあるコンビニのドアを開けたら、いきなり目の前に昨日泣いてた女の子。


「わっ!」


思わず声を上げてしまった。


「?」


カウンターに置いてあるコーヒーメーカーで抽出を待っていた女の子が振り返りキョトンとして俺を見た。


そして戸惑ったように「あ…どうしました、木月さん?」と声をかけてきた。


えっ!なんで俺の名前を知ってんの?

驚いて固まった俺の思考を読み取ったのか女の子は


「私人の名前を覚えるの得意なんですよ、最近ご無沙汰だけどチョコチョコうちの店に買いに来てくれてましたよね?」


と言った。


「確かイラストレーターさんでしたよね?」


「わ…すごいな、杏奈ちゃん記憶力…」


って驚いたら今度は女の子がビックリした顔をした。


「いや…木月さんこそすごい、よく私の名前を…」


そう言って俺を見上げた顔がちょっとだけかわいく見えた。


野暮ったい子なんだけど…


目は大きくはないけど丸くてかわいいな。

鼻は少々の団子っ鼻。

唇はぽってり厚め。

若干の二重あご。

推定身長150センチ。


うん、やっぱり総合的に野暮ったい。

着ている黄色味の強いベージュのダッフルコートもこの上なく安っぽい。

アクリルだろうな…

袖口に毛玉が目立つ。


今まで付き合った中にはいないタイプ。

どっちかというとファッションにこだわる女が多かったもんな。

…恵子も。


好みじゃないけどなんとなくこの子興味を引かれる。

ちょっとかまってみるか…




少し見つめてから「ん?、君、なんか失恋したての顔してるな…」って言ったらばっとお弁当屋の女の子の顔色が変わった。


お、当たった?

あ、 

でもちょっとデリカシーなかったかな。

傷、えぐってしまったかも…

と反省しかけたところにレジを終えた男が声をかけてきた。


「杏奈、知り合い?」


すっと男が女の子の斜め後ろに立った。

そして彼女越しに俺を見た。


うわ、威嚇してきた。

明らかにこいつらカレカノの雰囲気。

予想外した、俺。


それにしてもこの男…

いい感じに俺の嫌いなタイプ。

27、8くらい?

カシミヤ特有のぬめるような艶のあるコートをスーツの上に着て、ブラック○ーベルのビジネスバッグ持ってる。

仕事帰りか…


お弁当屋の女の子とは間逆なスタイリッシュな感じ。

似合わない二人だな。

でも、間違いなくこいつらはできている。


イラストレーターは観察力と洞察力が命。

いろんなことがわかっちゃうんだな〜


「あ、お店のお客さん」ってお弁当屋の女の子が軽く紹介してくれたので、男にペコッと頭を下げてから「また弁当買いに行くわ」と彼女に声をかけ店の奥の弁当並べてある棚に向い歩きだす。


弁当を物色しているふりをしてちらり肩越しに二人が一緒に店を出て行く姿を見送る。


男がドアを開けた。

女の子はコーヒーカップ二つ持ってる。

これからあの子の部屋にでも行くんだろうか…


なんだ、仲良さそうじゃん。

失恋とかケンカして泣いていたわけじゃなかったんだ。


じゃあ昨日のあの涙は何?

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