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君は意外と  作者: CK
11/26

コンちゃんと飯を食う

「うわ、ほんとにいる」


コンちゃんはコンちゃんの部屋の前で佇む俺を見てそう言ったあとガチャガチャと部屋のカキを開けて入んな、と目で促した。


コンちゃんが電気を点けた部屋を見てうっ、と思ったけれど、顔には出さなかった。


顔に出したら出入り禁止になってしまう。


廊下はペットボトルや、通販のダンボールの空き箱、ゴミ袋で足のふみ場もなかった。


コンちゃんの部屋に出入りするには部屋が散らかってることを非難してはならない。

じゃあ来るなと言われてしまうから。


足先でゴミを避けて部屋にたどり着いた。

で、テーブルの前にわずかな空間を見つけてそこに座る。


「今から米研ぐから時間かるよ?」


とコンちゃんに声をかけられる。


「じゃあ、これ冷蔵庫に入れといて」と行って魚卵とサラダをコンちゃんに手渡す。


「…ほんとに買ってきてくれたんだ」


「ん、ごめん、でもウニ高くて買えなかった…こんなちっちゃい箱で四千円…

だからウニは瓶詰めにした」


「律儀だな、佐太郎」


「うん、どうしてもコンちゃんの白飯食いたかったから」


「アホか…」


コンちゃんは俺の白飯への執着をディスってきたんだけど、なんとなくいつもの勢いがないような気がした。


「な、コンちゃん、なんか今日元気なくないか?」


「気づいたか、佐太郎。最近ちょっとした事件があった」


「何?」


「や、ま、たいしたことじゃない」


なんか気になるじゃん。口に出したんだから最後まで言えよ。


「佐太郎、そういえばお弁当屋の子落とせた?」


「え?なに急に」


「すっごいご執心だったじゃん?」


「いやいや、そんなんじゃなかいから。

でも気になってたことは解決した」


テーブルに肘ついていた俺の前にコンちゃんは座った。ゴミをかき分けて。


「ほうほう、で、その子なんで夜中に泣いてたの?」


人並みの好奇心はあるんだ、コンちゃんにも。

へぇ〜


「やっぱり彼氏絡みのことだった。


あの子が泣いて歩いてたのは日曜だったんだけど、昼間の出来事を思い出して眠れなかったんだって。だから真夜中の散歩に出たらしい。」


「昼間何があった?」


「その前に、コンちゃん俺腹減った。

サラダつまみに先に飲まない?」


「うん、そうするか。その前に私も着替える。佐太郎はトイレに行ってきな」


「いや、いいよ」


「いいよじゃない。部屋を出てって話」


「面倒くさい。俺の後ろで着替えなよ」


「…徹底的に私を女として扱わないやつだなwお前は」


コンちゃんはブリブリしながらも座ってる俺の後ろにあるベッドの上でギシギシマットレスの音を立てながら着替えをした。


ただズボンを短パンに。


コンちゃんはなんか足に布がまとわりつく感じが嫌いらしい。

モアモアするとか言ってる。


まあ、きれいな足だもんな。

出しても差し障りないよな。

俺も何度かスケッチさせてもらったことがある。


形がキレイすぎてなんだか生身の女を感じさせない足。

マネキンの足みたい。


コンちゃんは冷蔵庫からサラダを取り出したり、常備してあったビールを運んだりしだした。


部屋が片付いてるときはお前も手伝えと言われるのだけれど、部屋が散らかってて魔窟と化しているので、魔窟の歩き方を知っているコンちゃんのみが働く。


魔窟にはスケッチブックが何冊かうもれていた。

相変わらず絵、書いてるんだ…


コンちゃんは絵を描くことを職業にしたかったのだけれど、それは叶わなかった。

それでも絵が上手になるように日々研鑽は欠かさない。

その努力が…なんだか少し哀しく感じる。


視線を床からコンちゃんに移し改めて観察する。


スタイルいいし、顔立ちも整っている。

長い髪をセンターで分けた髪型も似合っている。

美人じゃなきゃ似合わない髪型だよな。


だけどこの人なんでこんなに無機質な感じがするんだろう。

最新式の人形ロボットみたい。


俺はコンちゃんの面白さや、地味に面倒見がいいことを知っているけれど、彼女の内面を知らない人にはひどく不気味に見えるんじゃないかな。


その証拠にコンちゃんはナンパと言うものをされたことがないそうだ。

美人なのに。


そういえば話し方も変だよな、この人。

いまさらだけど。


「おい、私を観察するな」


「あ、ごめん、美人だなって思って見てた」


「嘘つけ。この人変だよなとか思ってたくせに」


はは、さすがよくわってる。


テーブルの上に置かれた湯葉と鶏肉の入った胡瓜のサラダの容器のフタを開けたら「お、うまそう」とコンちゃんのテンションが少し上がった。


付属のドレッシングをかけて二人でつつく。

350のビールを開けて。


「ね、佐太郎、なんでお弁当屋の子泣いてたの?」

むしゃむしゃとサラダを頬張りながらコンちゃんが聞いてきた。


コンちゃんはモノを食ってるときだけ生身の人間を感じさせるな。


「佐太郎?」


「あ、うん。


イケメンスーツ男と日曜デート中にヤツの同窓生にばったり出会ったんだって。


イケメンスーツ男は中学から私大の付属に通っていて、その同窓生とずっと付き合いがあって年に、二回くらい会うグループがあるらしい。


で、たまたま会ったそのメンバーの女の子二人組に、須崎くんずいぶん好みが変わったねえ、みたいなこと言われたらしい。

あ、須崎ってイケメンスーツ男の苗字ね。


自分のことを上から下まで見られてなんだかすごく馬鹿にしたような目で品定めされたらしい。彼氏の女友達に」


「ふーん、なんか少女漫画にありそうな展開」


「だな。


その時の雰囲気として、イケメンスーツ男はもっさいお弁当屋の女の子サイドじゃなく、その同窓生のオサレ女子よりの発言したんだって。


俺も何を血迷ったか…みたいなことを言ってその子達と笑ったらしい。


すごく頭にきたんだけど、そのときはただ女の子も自虐的に笑って遣り過ごした。」


「漫画だと俺の彼女を馬鹿にするな…みたいな展開になんのにね。

現実はそ~じゃないんだね」


「うん、あ、コンちゃんそろそろ炊飯器のスイッチ入れたら?」


「…白飯に対する情熱すごいな」


そうつぶやいてコンちゃんは立ち上がり廊下についてる台所に向かった。


それにしても…

かなり際どい短パン履いてるなあ…

下着が見えないギリギリのライン。


無防備、無防備。


アンタこそ俺を男として見てないよね?と言いたくなるコンちゃんの後ろ姿。




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