94/180
毒よ、さらば
黄昏の阪急三番街で
嫌われることに身悶えする細い毒蛇に出会った
居酒屋『河童の滝』であの人にあう前に
哀しい毒の銀色を見てしまった
踏み潰すためにはヒールの高さが足りず
呑み込んでしまうには喉の渇きが足りなかった
だからしゃがみ込んで干からびた眼を見て
うろつくんじゃ無いよと言ってあげた
嫌われることに耐えられないなら
生きて行く資格がないのですよと
誰も彼も『誰そ彼』どきには死にたくなるんです
という真実に一番近い毒に近づきたくなるんです
毒蛇の心の痛みを感じる神経が
この三番街にはないように
人間の心の痛みを伝える言葉は
この黄昏にはないのだから




