83/180
夏の蛇の切れはし
あかるいあの夏の日差しが切れ目なく
あればきっと誰も悲しまない
窓から見える灰色の景色にも
洗われる清々しい風が吹くかもしれない
家の周りで住んでいる冷たい猫の舌舐めずりが
一匹っきりの自由を舐めるから
雪の降る自由の行き先を
玄関先を這う蛇の目が
雪のせいにしない清貧を
炬燵の上でとぐろを巻く蛇の目が
この程度のしあわせなの?
って問うかもね
蛇は這うから足音はせず
なのにこころには聴こえる不思議
林檎をウサギにする鼻歌を
自由なキッチンに立ち口ずさむ無神経
鏡は僕をみて
涙の跡うつす奇天烈
呼び込む不幸のノスタルジーは
世界の問いかけに答える不在証明




