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蛇の娘
あゝ、そうさ。
ぼくが、くだんの蛇ずきさ。
理由は、ぼくは、蛇なのだから。
だれもかれも、
嫌がる姿を、
していることが、
罪なのか?
それは言ってはいけないんだよ。
やめてあげて、
ジロジロみるのは、
ぼくをみるのは、いいんだけどね、
やめてあげて、
彼女が蛇でも
とくべつな目でみないであげて。
罪を犯したことがないものだけ、
つみびとである彼女に石をぶつけなさい
とは、
人類の、救いの父の言葉だが、
自分自身に、
なにひとつ人と違う、
おかしいところがない人だけ、
異端者である彼女に石をぶつけなさい。
とは、
この愚かな蛇の言葉だよ。
蛇が好き。
それでいいから、
蛇のからだを嫌わないでね。
ぼくを嫌がるのは、まだ、いいから、
彼女のことだけは、
彼女、ほんの少し、変わってるだけだから。
嫌わないで、ね?
あゝ、それにしても、
忘れられない人ではあるよなぁ、
とくべつな存在なんだから。
この、ぼくにとっては、
さみしげな笑顔が
愛おしい、最高の、
蛇の娘なんだよ。
ぼくが大好きな、
鳥獣戯画の、なかでは、ね。




