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蛇の女王様



蛇の詩を、

歌い継ぐものなり。


我、蛇の司祭なり。



そういって、ながいあいだ

蛇を祀っていた蛇の親玉みたいなヤツが

死んだ。


あ、違う。

「蛇の詩」の女親分みたいなヤツだった。


なぜか、

自分が蛇を一番理解しているつもりになって

もの言わぬ蛇の代弁者のような顔して

いい気になってた

自己愛のカタマリみたいな

蛇使いは、死んだんだ。


僕が戯れに「蛇の詩」を書くと

そんなものは、蛇足の詩だと、

わけのわかんない貶しかたをして、

ほら見てごらん、

と、ちょう上から目線で語りかけ

披露してくれた「蛇の詩」は、

蛇に心情委ねたようだか、

蛇を悪魔王ルシフェルに見立てた勧善懲悪もので、

ルシフェルの最期を描いたものだった。


なにか、裏の蛇の意味があるのかと

考えうる知識と思考力全開で考えたけど

それ以外の意味は見つからず

尋ねようと思っていたんだが、

ヤツめ、とっととくたばっちまいやがった。


もとい、お亡くなりになられた。


ほんとうは、わかってるんだ


彼女が蛇の代弁者の振りしてたのは、

自分が蛇のようなものになりたかったから。


巷間つたわるかの、蛇の王のような

悪のカタマリになりたかったからなんだ。


弱かったから、

懸命に生きて、

少しでも弱くないところを

見せたかったんだ。


蛇使いで、

蛇の司祭のような顔してたけど、

だってそれは、

彼女を許す、

数少ないサークルの中だけだったじゃない。


ミンナ、それを、

彼女に知らせないように

気を使っていたから

彼女、裸の女王様みたいになっちゃって、

僕だけ、

彼女の信者じゃなかったから

ひとり、

チンプンカンプンなこといわれてる

気がしてたんだろうな?

あの女王様?


正直、彼女の詩を読むの、つらかったけど、

人間的にも、問題ありまくりの

欠陥人間だったと言い切ってしまって

いいと思うのだけれど、

彼女の艶然とした笑みとか、

玉を転がすような笑い声とか、

そのくせ歯切れのいいものの言い方とか、

僕は、おそらく、

そして、彼女を女王様と仰ぎ見てた信者達も、

彼女の女性としての魅力に

イカれていたんじゃないかな?

これは、《蛇》推だけど。


僕に関していえば、

もうあきらかに一目惚れで、

ただ彼女と同じ空間で

同じ空気を吸いたいので

蛇の結社に加盟していた。


まぁ、いい。

あまりに急すぎて、

いまだに彼女が

君だけ、わかってないんだなぁ、

とかいいながら

片目を瞑って笑いながら、

姿を現してくれそうで、

それが、望むべくもない夢だと

わかっていながら、

それを、心のどこかで待ちわびているのも

僕の本心で、

だから、

こんな、詩の中で、

彼女を貶める言い方しながら

彼女に怒られるのを待っているんだ、

彼女を悼む詩はたぶん

僕には書けないな。


僕に書けるのは、彼女を貶める詩と、

彼女がどれほど魅力的な女性で、

僕にどれほど多くのものを

与えてくれたかという感謝の言葉だけだと思う。


あと、どれほど彼女を愛していたかを

連綿とつづる言の葉。






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