とくべつな愛
とくべつな愛されかたをしたかった
紅色の、燃えるような声で。
まるで悲しみをすべて暴き出してしまう
慈悲のかけらもない冷たい蛙の眼つきで。
寂しいひとり寝の暮らしなど
暮らしではないとほざくいやらしい蛇の舌つきで。
あたたかかった夕方かがやくひとつ星のように
散りゆく桜を見上げてしまう戸惑いの瞳のように
諦めてしまうまえにできることはあるのだろうか。
さまざまなぬくもりが心に広がる孤独ゆえの
泣かない決意のような小さな虫のような生命が、
どこへ降り立つ涙の軌跡をみせるのか。
ぼんやりと声を出さないままで
生き残れると教えられた新しい子供たちの
夜の闇は深いか、朝の訪れは遠いか。
とくべつな愛されかたをしたかった
紅色の、燃えるような声で。
いつもいつも、寒い朝食を済ませ
初めてのことなどなにもない時間を
整えてしまう牛乳を飲みながら。
そのとき、冷蔵庫のまえに立つ
正義の顔は朝のまぶしい日の光を見もせず
燃える悲しい希望の星を妄想し、
ただ、愛されたかったという戦わない鬼に
成り下がることだと気づくなら。
とくべつな愛されかたをしたかった
紅色の、燃えるような声で。
とくべつな愛されかたをしたかった
空色の、凍るような声で、でも。




