蛇には、去り行く理由があった。2
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うわっ。
こいつ、あたしに巻きつきやがった。
失敗ったッ、逃げれにゃい。
「や、やめなさいって!」
『ねぇ、あなた、知ってた?』
『蛇は、情のない冷血動物っていわれるけど』
『だいたいの動物、大嫌いだけど』
『一度、好きになったら、死ぬまで好きなまま』
『ねぇ、猫さん、私の告白覚えてる?』
『あの時の気持ち、まだ、普通に燃えてるよ』
『ふつふつと、普通に、燃え続けているよ』
『ねぇ? 猫さん?』
『なんて?』
『なんて、呼んだら、いーい?』
『私も、ダーリンって、呼ぼうかな?』
「やめろって!」
あたしは、なんとか蛇のヤロー(といっても女系)を
引き剥がそうとして、バランス崩して
木の枝から、落っこちた、猫のくせに。
下に、
ちょうどあのバカ女がいて、
ダーリンッ、て叫んであたしと蛇を
引き剥がしてくれた。
ま、たまには、役に立った訳だ。
その蛇は、あたしがバカ女に
抱きかかえられるのを
ちゃんと見届けるようにこっちを、
こんどは蛇にそんな目ができるんだと
不思議になるほど、あたたかい目で、
ほほえむ感じで、見ていたんだ。
冷たい蛇のくせに。
そして、まるで、あたしの大好きな
「偽悪もの」のように
ケンカしていた
あたしとバカ女を仲直りさせ、
あたしには嫌われたまま、
去って行こうとするのか?
「ちょっと、待ちなさいよ、……」
あたしも、叫ばずにいられない。
「あたし、あなたを見てるから。」
「いつまでも、見てるから。」
『バーカ、恋人の前で、なにいってるのよ?』
『じゃあね、もう、2度と会わないわ、安心して?』
そしておそらく、この街を出て行く。
その言葉どおり、2度と帰っては来ないだろう。
カッコつけやがって。
カッコつけやがって。
蛇は、いつも冷たいままなのか?
あたしは、この女の胸に抱かれて、
あたたかい部屋へ戻ろうとしている。
バカだにゃ〜、バカだにゃ〜、
て、あの蛇のために心の中で呟きつづけ、
やべ、と思う。
あたし、相手のこと、バカっていうの、
好きになった相手だけじゃない?
で、でも、勘違いは、しないでよね。
べつに、蛇さん、あなたのこと、
好きになったって訳ではないんですからねッ?
50回記念で、猫登場?
いや、蛇って厚顔無恥で押しは強いけど、
あんましおしゃべりって訳でもないし。
知ってる人だけ知っている、猫の物語のその名も『吾輩』猫。
だから、実は、この詩の中で、じぶんのこと、吾輩っていっているのは、そういうことなんだ。
でも、もともとその名前、大嫌いだったから、自分で自分のこと吾輩なんていうのは、よっぽどのことがあったのではないか、と想像はできる、というシーン。
やっばり、
ややこしい話は、忘れてください。
長々しいのを、最後までお読みくださり、本当にありがとうございます。




