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あの人の名前を云って御覧?
そうだね
君は痛いほどわかっていたんだろう
自分ひとりで哀しみを癒すことなどできやしないと
紅葉の一葉が痛ましいほどの
清冽な激流の人生
悔やまない瞳 真っ直ぐに前を向き
ひるんでも ひるんでないからと
精一杯 見開いた 涙 見せても恥じやしない
傲岸さ矛に「ひとりでも生きていける」
言葉にしてしまえる無様を盾に
「ふーん そうなんだ」
心 みとおした風な言葉
きこえよがしに口にする
偽悪を装った 底意地悪い 優しさよりも
その 見る者すべてを蛇にしてくれる
清さ正しさ美しさを具現化した
イメージ色 純白 以外にありえない
ひどい悲しみを内に秘めたる風情に
こんな蛇でも この人の為なら 何かしてあげたいと
思わせる 魔法だけが
誰もの情熱を 価値あるものにしてくれる
そんな人のこと 美しい魔女と呼ぶ
だからね
あの人に救ってもらうしかない
声ももらさず泣いたって
涙の流し損になる
あの人の名前を呼べばいい
ジャンヌダルクは 笑顔で応えてくれるから