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蛇なのに、甘い夢みたの?

ねぇ、想い描いてみて?


言葉がまったく通じない世界、

彷徨いたどり着いた

行き倒れの蛇だから、


じゃなくて。


この国で、

同じ言葉を話す人々と、

話しても話しても、

なにひとつ、

私の言う言葉が伝わらないんだ。

蛇だから、


じゃなくて。



まわりの人の言葉はわかるのに、

私の言葉はみんなに届かない。


深い海の底を、

ひとり、歩いて

いるみたい。



高い雲の上を、

ひとり、歩いて

いるみたい。



そんな静かなくらしのなかで

私は、あなたを、知ったんだった。


あの夜、

あなたからいただいた

キラめくダイヤモンドの光のような

真心を今も持っている。


遠い異国から来た蛇だという嘘は

何一つ信じなかったけれど、

あなたの心の深くに流れている

優しさだけはなぜだか無条件に

信じることができたんだ。


『春がまだ来ないだろうか?』


あなたと2人で桜の花の下に立ち、

愛を確かめ合いたい。


それは確かめ「合う」じゃなくて、

たったひとりで、「確かめる」だね。


あなたはそんなつれないことを言うだろう。

私の心を弄ぶように。

あなたは私を愛してなどいないと言いたいの?

あんなに素敵なキスをプレゼントしたでしょう?

(嘘。言ってみただけ。私のは全然拙いものです。)

寂しさを上塗りするかのように、

私の心は涙色になっていく。


『空を自由に泳ぐ燕はまだですか?』


その時が来たら、私はきっと

あなたの前から消えるだろう。

その時になって、寂しいとか言ったって

知らないよ?

私の心を弄んだバツさ。


『遠くで聞こえる幸せそうな鐘の音は、

愛する2人の結婚のお祝いの鐘?』


私とあなたにそんなものが訪れないことが、

当たり前すぎて泣きたくもならないよ。


今夜流れる流星の群れが、

私の心に蛇のプライドに与えてくれるのか?


野原に寝転がって観る星空は綺麗で、

横にいるあなたのキスはとても優しくて、

私はもうこんな愛に酔ってしまっている

幸せなひとときを

この人生で2度と味わえるわけがないと

知っている。


ええ、なぜだか知っているのだ。








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