蛇の詩(蛇と眼鏡とチクワの歌が、聴こえる?)《改》
お酒をのんでは泣き疲れて眠る
あなたは空の色が怖いという
かつて愛して裏切られた写真の色と
よく似ていて寂しすぎるからという
悲しみの声は、聴こえる?
眼鏡の似合う蛇の舌は
少し理知的に重ねて出ている
計算づくで出して入れている
太陽の黒点の意味を知っている
私の弱点の悲劇好きを知っている
お酒の鷹揚な襟のただし方を知っている
蜜を舐めると どこでも裏切られた声を上げ
一匹カブト虫のいる砂漠に旅に出る
朝になれない
夜の静かな雫はかたくり粉より清潔で
忘れたい不潔な私の悲しみを 透明な悲しみへと
歌で染め上げてくれる
泡を吹く蛙の親子が獣の声に脅えるから
おたまじゃくしはひとりで泳ぎ去る
蛙の子供はその時 存在を見失ない
逃げるおたまじゃくしを見ながら
静かに首を振り微笑みを浮かべた
夜の街を歩くあなたの脚は
裸足でおまけに当然目も耳も顔もなく
ただ生き残ることを選んだ魂の入れ物
街中に吹き上げられた愛のないつながりは
何も無いカレンダーを彩る意味を持つ
日曜日を凝視するチクワの穴をとおして
蛇は好きでもないがチクワを一口で食べる
それで、悲しみの声は、聴こえる?
その夜からほのかに落ちる
こんぺいとうのかたちをした
1年に3度だけ降る新しい雪たち、
魂の叫びを拾い上げ、
死の直前にはせめて
堕ちた蛇の最後の希望を掬い上げられるように、
夜も家に帰らない道化の者は、
口を開けて空を見上げ、
真新しい雪たちを
パクパク食べるんだ。
蛇の詩のことを、忘れないために。




