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夕暮れの街を見下ろす

蒼い陽炎が翔ぶ昼下がり、

短い影をアスファルトに刻印する蛇の、

唾液まみれの純白の牙は、

貴女のマシュマロの喉元を、

ぼくの命の軽さほどもない覚悟で、

食い破ろうとする残酷な牙だ。


それは、

好きな小説を買う程の躊躇ためらいもなく、

目覚まし時計を止めて二度寝するより容易く、

為されてしまう、尊い自傷行為に近い。


茜色の夕陽を浴びて翔ぶ赤蜻蛉の、

空中の一点で羽だけ動かし、

胴体は静止している姿の、

早く忘れなければならない長閑のどかさは、

絶望で基礎を固め、

見栄と欲望で建ち上げたビルの屋上から、

この街の夕暮れを見下ろす愚かさに近い。


罪は、何かと問われても、

何を許せば良いのかがわからない。

この、冬へ向かう街の、

見渡す限り明日の見えない

黒ばかりが深い闇の暗さは、

誰の眼にもあきらかなのに、

ただ、雪の降り来るのを待つしかない。

一夜ひとよにして真っ白な、

聖域に染め変えてくれる、

峻烈な裁きを、待つしかない。


不透明な夜を前にし、


自分を抱き締め、震えるよりほか、

なすこと、なにひとつない、無力さが虚しい。

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