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『 』にあるという蛇の庭園へ
震える冬の夜、
駅から家まで
歩く。
ぼくの息は清潔ではない。
言葉で穢れている。
清涼飲料水を飲む。
真っ黒な
歩道を
蛇と並び歩く
その
濡れた鱗から跳びはねる
水滴や血の飛沫をよけるために
清潔で純情な眼を瞑る。
ぼくの影は素早く家に向い
ぼくが部屋に入るのを首を
長くして待つ
「お帰りなさい」
をいうために待つ。
蛇は橋から見下ろす
真っ暗な
水の枯れた河原から
さやさやと音を立てて
真っ白な光を降り注ぐ 『 』の庭園へ、
帰る、という
それが本当か真っ赤な嘘か、
ぼくにはわからないけれど。




