表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/180

あたまを石畳にすりつけて感謝するしかなかったんだ

あの日、

蛇のように

心も体も冷え切ったあたしに、

肌をあたためて

あげるから信じてねって

姫さまがおっしゃってくれるから

「ありがとうございます、救われます」

あたまを石畳にすりつけて感謝するしかなかった。

ただ、

今でもあの時のこと思い出すと、

泣いてしまいそうで困るんだ。


生きていくと

色んなことがあるよね。


昨夜も凍えた人が

「幸せになるには、なにを

どうすればいいのですか?」

姫さまに尋ねるんだ。


睫毛を伏せて

すこし震えていた姫さまは

「それがわからないのは、

つらいことですね。

けれど、あなたの絶望は

わたくしが聞かせて頂きます。

聞かせて頂くだけなので、

あまり意味はなく、

それでは、生きいく上で

なにが正しいのかの答えにも

迷ってしまいますよ、ね?

これからいっしょに

考えていきません?」


それがきこえたのか、

凍えた人は

依存心は捨てますと反省しながら、

「…………はい、お願いいたします」

ちいさな声でそう告げた。


しばらくすると

けもののような、

かすれた嗚咽が聞こえた。


姫さまは

なにも聞こえないのか、

「今夜はもう眠りましょうか、

ねえ、眠ってしまいましょう?」

そして、優しくほほえみかけてくれるのだ。

この冷たい、暗い世界に

あかりを灯すように。


「わたくしも、もう眠りますね」


いうとどうしてこんなに

素早く眠れるのか

不思議なんだけど、

今夜もまるでねむり姫のように

もはや近寄りがたい

白い陶器のような綺麗な寝顔で眠る。

でも、寝息だけは

聞いているだけで

幸せになれるくらいの可愛さで、

この

あたしなんかが不遜にも

寝言でいいから

名前を呼んで頂けないものかと

焼けつくほどの願望を

もってしまったりする、

恥ずかしながら。


さとられては、

ここに居させてもらえなくなる気がして

つとめて冷静に、就寝の挨拶を行なう。


「姫さまのみこころのままに、

こんやは、おやすみなさいませ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ