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栗月とモンブラン(すみれ恋歌)
あのね夜は、栗月がしろくて
庭いちめんを、てらしてくれるよ
かげまでこくて驚くあかるさこころも霽れる。
珈琲はブラックでも、あまいモンブランをほお張って
くちびる 舌でぬぐうさま こどもみたいに可愛いよ
せっかくブラックでも、にががるなというから
舌を誤魔化すためにもあまいものたべていたのにね。
ミーナの横でちいさな菫子が
凝ーッとミーナの顔を憧れこめて見ている
ほんとうにほしいものを誤魔化すために
かわいい瞳をコロコロと転がし、
苦しい嫉妬をはりつけつづけている
私の笑顔をかんちがいして
私まで、ミーナを愛していることにさせられた。
でもねそのかんちがいの笑顔が菫子の、おまえの
愛情を欲してのものだと気づく前に、ましろな
にががるなにががるなとミーナにいい続けながら
モンブランをほお張る頰に、菫子よ、
おまえの頰に
人差し指のばし、マロンクリーム取ってあげるね?




