3話
三年前、ルーカス・オーウェンとミヒャエル・グリーンバーグはアメリカ軍第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊通称デルタフォースに属していた。
基地内のマンションで、その二人ともう一人生活していた。もう一人とはジラルディー・フレイジャーだ。
彼と二人は直ぐに気があった。二人と比べるとジラルディーは軍人としての素質は低かったが、性格は温厚で知的で指揮官向きだった。
元々、二人の軍人としての能力は極めて高かったためで、フレイジャーは軍人としての能力は悪くはない。
だが、彼には欠点があった。金に対して非常にルーズなのだ。だから、彼は金で、事件に巻き込まれ、最期も金に溺れた。
フレイジャーは別の友人に詐欺をしないかと持ちかけられる。最初は渋るが報酬の多さに乗ってしまった。最初の仕事が、詐欺の顧客リストを同じ軍人で悪行に手を出していたラファエル・マルティネスに渡すことだった。この仕事は極めて簡単で無事顧客リストを渡し終えた。しかし、彼が渡し終え帰る道中に狙撃兵であったマルティネスに口止めとして狙撃されフレイジャーは殺された。
しかし、オーウェンは顧客リストの口封じだけで殺された訳ではないと思う。もっと、大きく、黒い何かが。
「ルーカス、ルーカス?」
オーウェンの頭の中では、過去の記憶が渦巻いていた。そのため終始無言だった。そんなオーウェンにミヒャエルは呼びかける。
「すまない。深い考え事をしていた」
「分かるよ。ジラルディーのことだろう」
「そうだ…。俺は、奴を殺るために裏社会に入った。俺は前私怨で人は殺らないと言った。だが、こいつだけは私怨で暗殺を決行する」
「僕も同じさ。あいつを殺すために殺し屋になった。僕も私怨では殺さない。でも、あいつだけは、人間として殺す」
「今回はお前と俺はライバルだな」
「標的が同じだからね。成功報酬を争うことになるんだよな」
「お前とは穏便に事を済ませたい」
「僕も、君とだけは争いたくなかった」
「少し話しすぎてしまったな。切るぞ」
「昔から変わってないな」
「話は短く、それが俺のポリシーだ」
と言ってオーウェンは切った。




