チョコレートについて
チョコレートについて、我々が求める物は何だろうか?
何度も考えたのだが、私にはどうにも、思いつかなかった。
嗜好品である以上、求めるものは人それぞれだろう。
さて、私たちは普通に、当たり前の様に、チョコレートを食べる事が出来る。チョコレートの製造行程を考えれば、日本の技術力を想い知らされるわけだが、一つ日本のチョコレートへの問題を上げたいと思う。
常々思うのが、『品質への拘り』が少ない。これこそが欠けているように思う。なぜ、そうなるのか、と言えば、大量生産に重きを置く事ではないだろうか?
チョコレートの製法を考えれば致し方ない事にも感じるが、昨今、チョコレートへの注目度は上がって来ている。今、力を入れなければならない。
だが、日本のパティシエ、ショコラティエがそれを怠っている訳ではないのが、辛い。コンクール等に出品する物と一般販売の物とで隔たりが強いのではないかと、考えている。悲しいかな、一般的に売られる日本のショコラティエの商品は何れもいまいちなのだ。これは、元のレシピがある程度同じだとしても、元の作り手の手から離れすぎていると言うことも多分に含まれるだろう。個人の店ならいざ知らず。日本の有名なパティシエの店等は、幾つかの店舗があるのは勿論のこと、製造するための工場まで有している店もあるのだ。一定の商品を絶えず作り続け、多くの商品を発信することで、せっかくの延びしろを自ら絶っているように感じる。
しかし、もう一つの理由は、日本のチョコレートの多くが『一人でも多くの人に一定品質の物を提供する』その事に重きを置いていること。そのために、作ることに意識を向けすぎ、材料に気が向かない事が多くある。
一つ、有名なフランスのショコラトリーを引き合いに出すと。そのショコラトリーでは、年の始めにフルーツのコンフィを作ることから始まり、使われるナッツの皮剥きも手作業。カカオは幾つかの契約農園から仕入れたものをチョコレートになるまでの行程を丁寧に行い、今ムーブのシングルオリジンにはせず、数種類をブレンドして作り続けるという徹底ぶり。これを知った時、私は本当に感激した。
こんなにも一つ一つの作業行程に向き合い、一つのチョコレートを作り続ける人がいるのだと。私自身下手の横好きで、チョコレート作りに嵌まり、業者用のチョコレートを年間12キロ位は仕入れている人間であり、どれだけの手間がそこに掛かるのかは知っているつもりだ。だからこそ、本当にフランスのチョコレートに向ける情熱に脱帽し、これが、日本のチョコレート業界に足りない物ではないかと、そう、強く思うに至った。
日本では、ナッツは皮の剥いたものからロースとしたもの、生、ペーストまで、業者で販売され。果物も、幾つかのシロップから、ペースト、フリーズドライ、ドライフルーツ、冷凍品まで。全ての材料を業者任せに作ることが出来るのだ。手間や、安定した供給、食品衛生上安心出来る反面。これで作ったとしても、どこにでもある物から抜け出す事は出来ない。
全てがそうだと思わないが、それでも、思って仕舞うのだ。私が嗜好品等にお金を払うのは、そういった人の手間、拘りに、敬意をはらい代金を支払っているのだと。売る側の顔が見えるのであればなおのこと、そう感じる人は多いのではないだろうか。
だが、締めくくりとしてこれだけは、言わせて欲しい。
チョコレートは幸福の味だと。
チョコがお好きな方。知っているかもしれない、知らないかもしれないそんな方々にオススメしたいチョコレート。
『イタリアのドモーリ社』
『ベルナシオン』
美味しいです。