出勤
エロい夢を見た。
どんな夢だったかって?
朝からパンツを洗っている俺の姿を見てもらえればある程度伝わると信じているよ。
もみ洗いしたパンツを洗濯機に放り込み、男は天秤に似たロゴがプリントされた上着を羽織る。
銀色に鈍く光る名刺入れを手に取り中身を確認、「D級、マツサカ」と印字された紙が顔を覗かせている。
一枚抜き取りしげしげと観察し、ほくそ笑むと名刺入れを上着の内ポケットにしまい、部屋を出た。
「マツサカかぁ、もっと横文字っぽいのが良かったなぁ」
部屋の鍵を閉めながらつぶやく彼、マツサカは言動とは打って変わって広角が上がっている。
「名刺って渡し方とかあったよなぁ、誰か教えてくんないかなぁ。」
ブツブツと呟く彼は銀杏の葉が作った絨毯の上を歩く。
「さながら初出勤を歓迎するレッドカーペットのようですな。」
歩くこと5分といったところ、首の可動域一杯見上げなければ、その先端を捉えることは出来そうにないほどの高さを誇示する鴉羽色のビルが彼を迎える。
指紋、声帯、網膜認証を済ましロビーに足を踏み入れる。
と、彼を呼び止める低い声。
「君がマツサカ君だね?君の雇い主のカマタマーレだ。どうぞ宜しく頼む。」
「あ、どうも。マツサカです。まだこの名前には慣れませんね。」
「それはそうだろうね。まぁ、そう気負わずに気楽にやってくれて構わないよ。さて、早速だが初仕事だ。付いてきてくれ。」
彼が通されたのはブリーフィングルームの様なところだった。
中には2人席についている。
「紹介しよう、今日からウチの社員となったマツサカ君だ。仲良くしてやってくれ。」
「ども、マツサカです。よろしくお願いします。」
「で、そっちのロングヘアの女性がクロシオ、金髪の男性がガッデム君だ。わからないことがあれば彼らに聞くといい。」
クロシオ、ガッデムと呼称された2人は各々マツサカに対し会釈をする。
「さて、今回3人にやってもらう仕事だが、とある中規模商人の護衛になる。
まぁ、中規模とは言っても今回は商談に行く道中の護衛任務だから、大した危険は伴わないと推測している。
商品の運搬も無いので3人での小隊任務とするが何か質問のあるものはいるか?」
「商談の内容は?」
と、クロシオが質問を投げかける。
「内容に関しての情報はこちらに入ってきていない。」
「目的地は?」
と、ガッデム。
「α領だ。」
「遠いな、それに今いるβ領との間にはスラムが横切っているわけだし、一筋縄ではいかねぇかもな。」
「確かにその可能性はあるが、そうでなければ我々に護衛など頼まんだろう?」
「ちげぇねぇな。」
「マツサカ君は何かあるかな?」
「あー、それじゃあお2人の移植箇所を一応教えてもらえます?」
「あぁ、そうだったね。
彼女は肩甲骨を烏の羽にコンバートしている。
彼に関しては、まぁ見てもらえばわかると思うがカブトムシの角が生えているな。」
「あー、まぁまた目通りっすね。」
「説明するまでも無かったかな?」
「あなたは?」
と、クロシオが口を開いた。
「あ、シャコっす。肘がシャコなんすよ俺。」
「は?」
あ、やっぱり変だったんだ。
ちょっと恥ずかしい。
「それってどう役に立つのかしら?」
「あー、裏拳がめちゃくちゃ強いっすよ?」
「あぁ、そう。」
あ、ちょっと幻滅されたっぽい、ショック。
「さて、ブリーフィングも無事終わりってことでいいかな?
それなら、ロビーに依頼人を迎えに行っておいで、
検討を祈るよ。」
「「「はい!」」」