TJS ティーチャー・ジャッジ・システム
私立石ノ宮学園校則第4条 TJSの運用についての規則
本校は学園生活の質の向上を目的とし生徒による、教師判断システム、通称TJSを導入する。それに伴い以下をTJS実施の際のルールとする。
・このシステムによるジャッジはディベート形式で行うものとする。
・両者は互いの要求を事前に提示し承諾を得ること。
・会場は両者の合意があれば自由とする。
・フロア(第三者)として教師と生徒を必ず同じ人数立ち会わせること。
・勝敗はフロアによる多数決で決定されるものとする。
・このシステムによって教師をジャッジすることのできる生徒は
前学期の期末試験において学年首位の者のみとする。
・上記の者には学期中にTJSを3回実施する権利を付与する。
・以上の規則は絶対のものとする。
「あー、だりぃ……」
俺の渾身のつぶやきに返す声はない。
二学期も始まったというのに俺の周囲には誰もいない。
ぼっち、というわけではないが近寄りがたいらしい。
ま、自分でもそんな空気出してるのは気が付いてるけど。
暑い、だるいとぶつぶつ言いながら帰り支度を始める。
夏休み明け初日ということもあってか今日はプリントが盛りだくさんだ。
クラスで話されているのはもっぱら今日配られたこのプリントのことだろう。
ティーチャー・ジャッジ・システム、通称TJS。
俺が通うこの私立石ノ宮学園でこの秋から試験運用されるという制度。
まあ、授業の質の向上を目的とした一種の話し合いのようなものだ。
自称進学校と名乗るこの学校にはお似合いの制度と言える。
それにしても二年生は不幸だなぁ。
この制度はいわば生徒が教師に正々堂々文句が言える場なのだ。
しかし使えるのは学年主席のみときたもんだ。
おそらくこれを機に学力向上を試みる輩を増やそうという魂胆だろうが、残念ながら二年生主席の座が揺らぐことはない。
そう、なにを隠そうこの俺こと小布施 壮真こそがこの学年のトップだからなっ!
俺は一年の時はそれこそ部活に打ち込み勉強も頑張ろうというどこにでもいそうなありふれた人間だった けれどあるとき気がついてしまったのだ。
これ将来なんも役に立たないんじゃね?
一度そう思ってしまうとあとはさぼりの連続だ。
けっきょく去年の年末にやめてしまった。
そこからはだらだらと勉強の毎日。
部活の友達とはいづらいし、クラスではグループがとっくに出来上がっていた。
そこに入れるはずもなく二年生の夏休みも誰とも遊ぶことなく勉強、勉強また勉強。
そのかいあってか、一年生の学年末試験から俺は学年首位を維持している。
まあ、だからといって面倒くさいことは嫌いなのが俺。
少なくともうちの学年でこのシステムが使われることはない。
なにせ俺が主席なのだから。
「はあ……。帰ってゲームでもするか……」
そうして今日も変わらない日常が過ぎていく。
この日常がどこかつまらないと感じる自分の存在をその時の俺は見て見ぬふりをしていた。