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綺麗なのは思い出補正と言うやつですね

 何かラジオのネタになるかも知れないという事で、ナナさんが提案して、実家からそれぞれのアルバムを送ってもらった。

 しかしアルバムの写真を見ていると、やっぱりというか案の定というか、いや定番というのだろう。


 ネタ探しというよりは、妙なテンションではしゃいで、遊んでいる状況になっている。


「アミさん、やっぱり成長してませんよ」

「しているって言っているでしょ」

「じゃあ縮んでいるんじゃないですか?」

「縮んでないっていっているでしょ」


 小学生高学年になっても中学生になってもそこに写っているアミさんは、あまりというか時間の経過を感じないと言うところは、さすが悪魔というべきか、それともアミさんがただ幼いだけだろうか。


「お前たち、遊んでないでちゃんと探すんだぞ」

「はいはい」

「あっアミさん、みてくださいこの写真、よしこって書いてます」

「それは破棄していい思い出ね」

「お前が、よしこという確かな証だろう、大事にとっておけ」

「いやよ」

「アミさんのも変らないですが、ナナさんのも凄いですね」 


 運動会、文化祭、学芸会、授業風景、遠足、修学旅行、合唱コンクールと、色々あるのだが、どの写真も、ピシっと音が聞こえてきそうなぐらいに真面目に写っていると言えば良いのか、緊張で堅くなっていると言えばいいのか分からない、もしかしたらある意味、こういうのも写真うつりが悪いのではないかと思ってしまう。

  

「子供らしさゼロよね」

「ピースサインとか、笑っている写真もありますけど、子供らしくないです」

「そうか、自分では普通だと思うがな」

「まぁ確かに、まわりも似たり寄ったりではあるわね」

「そういうところは、さすが天使というべきなんでしょうね」


 ある意味軍隊の写真を見せられているようで、これをカッコイイととるか、不気味ととるかは、私には判断はできない。


「ヒナのは今のところ普通みたいね」

「まぁ、そうでしょうね」


 アミさんや、ナナさんじゃあるまいし、そうそう面白そうな写真というのはないはずだ。


「何かおねしょして、泣いている写真とかないの」

「なんで、おねしょしをして泣いている写真とか探そうとしているんですか、ありませんよ」


 大体、おねしょをしているところを写真に残すような事はしていない。

 しかし、アミさんの執念だろうか、それとも怨念だろうか、私のアルバムのページをめくっていくと、

一枚の泣いている写真が見つかった。  

 

 ランドセルを背負って、周りが暗い事から夕方だとは、思うし、写真の日付で私の誕生日というのは、わかるが、何をして、泣いていたのかさっぱり思い出せない。

 

 こんなにまで泣いていただろうか?


「泣いている写真あるじゃないの、それで何やったの? おねしょ?」

「違いますよ、初恋が叶わなくて泣いたんじゃないですか?」

「そんな愁傷な心、ヒナにあるわけないでしょ」


 アミさんは失礼な事を言うがその横では、ナナさんが写真の私をじっくりと見ていると、なにやら気づいたようだ。

 

「なぁところどころ、体中に小さい傷とかあるようだが、喧嘩でもしたのか」


 喧嘩の言葉で思い出した。


「思い出しました、クラスの男子とかに、からかわれて喧嘩になったんですよ」

「そいつらヒナの事好きだったんじゃないの?」

「それはないとは、思いますがわすれましたね」


 アルバムをバタンと閉じた。

 

「嫌な事でも思い出したの」

「まさか、今でも覚えていますよ」


 先生や、クラスメイト、親にまで、アイドルになれるはずがないと言われ続けていた日のこと。

 自分では、意地だけで、アイドルになってやると決めた時んな風に泣きじゃくっているつもりはなかったのに、写真でみるとあんなにも泣いていたのかと思うと恥ずかしい。



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