朗報
夕方のタイムセールのチラシをチェックしながら、買いだめしておくべき品にチェックを入れていると、ナナさんが、めずらしく大きな声を上げた。
「朗報だ」
「卵の安売りですか、それともお肉ですか」
「私的には、ラーメンの安売りがいいわね」
「お前達、それは朗報なのか」
私たちの返事に呆れた声を出しながら突っ込む。
「朗報といえば、朗報ですがこれといって騒ぐほどのものじゃありませんね」
「まぁ嬉しいのには変わりないけどね、ナナだって高いよりは安いほうが良いでしょう」
「出費が少ないのはたすかるが、そうじゃない、もっと別の事だ」
別の事といわれても、想像がつかない。
「宝くじでも当たったとか、さすが天使」
「そういうことではない」
「じゃあ、何かお菓子でももらったとかですか」
「そういうことでもない、もういいからコレを見ろ」
突き出された携帯の画面を見る。
「これで分かったか」
ナナさんが声をかけてもその内容が信じられず、握ったチラシを無造作に捨て、私とアミさんはナナさんから携帯をひったくるようにその内容を凝視していた。
「本当ですか」
「詳しい日時は決まっていないみたいね」
「それはこれから調整するんだろうな」
差出人はマネージャーからだった。
文面をみるとラジオの放送が1回だけテストで流すと言う旨とこれは他人に漏らしてはいけないしと、書かれていた。
「先日のサインといい、今回の朗報といい、なんかこう実感がわきますよね」
「そうよね」
「まぁ実感も良いが、その前に私の携帯を返してくれ」
ナナさんが申し訳そうに言うまで、まったくきづかなかった握っていた携帯をナナさんに渡す。
手から離れると、まるで夢だったような気持ちになってしまい、実感が遠ざかったような気になってしまった。
それをごまかすように、手を握っては開き、握っては開いた。
「前祝いといきたいわよね」
「そうですね、アミさん何かおごってくださいよ」
「50円アイスならおごってあげるわよ」
いつもなら、否定してくれるのに50円とはいえおごってくれるらしい。
アミさんも、嬉しいのだろう。
「詳しい日程などが、決まればまた連絡があるだろう」
「待ち遠しいですね」
「これを励みにして、もっと頑張っていかないといけないな」
ナナさんは、気をひきしめながらも頬が弛んでいる。
アミさんも、笑いを抑えきれないようだ。
それをみた私もようやく握ったり開いたりした手を腰のほうに少し動かし、小さくガッツポーズをとった。




