名を名乗るにはまず名前がいる
朝の放送もなんとか無事に終わり、放送室での録画や録音を終えた機材を片付けながら今後の予定を確認する。
「ナナさんお昼までどうしますか?」
「ふむ、何かしたいことあるか」
「アイドル活動ですかね」
「その前に私達は名前を覚えてもらわないといけないな」
実に正論である。
「とりあえず売名行動するにも材料ないとねぇ、脱ぐ?」
「ナナさんならともかくアミさんはそもそも、脱ぐという需要あるんですか」
天使であるナナさんのスタイルと、悪魔のアミさんのスタイルはどう頑張ってもナナさんとの差がありすぎて、需要を満たしているかは疑問しかない。
「ヒナ、悪魔なめんな」
その言葉には、お前がいうなよという意味がひしひしと伝わってくるようだった。
確かに天使と悪魔という魅力の前には人間の私は太刀打ちなどできないし、需要があるかどうかの議論さえ馬鹿馬鹿しいだろう。
「いやそもそも不祥事を起こすな」
脱ぐ事自体は不祥事ではないと思うのだが、却下された。
「まぁその前にグループ名ですよね」
売名行為というより名を覚えてもらうにも、所属グループの名前が決まっていないという最も重要な事項が現実にはあるのだ。
「会社に問い合わせてみた?」
「あぁだが向こうは向こうで忙しいみたいだ、勝手に決めろとの事だ」
ナナさんが見せてくれたケイタイの画面には、ご自由に、決まったら連絡頂戴というそっけない文章だけであった。
「うわぁ最悪だよ」
「忙しいのだろう」
「まぁ考えようによっては事務所でへんな名前決められなくてよかったですよ」
慰めにもなっていない事が自分でも言っていて分かるが、とりあえず決めない事には今後の活動するときに困ってしまうのもまた事実だ。
「とりあえず聖クロス学園隊とでもいっておく?」
「いや、アミさんそれは適当すぎでしょう」
「冗談、冗談」
「いざとなったらにしましょう」
「冗談っていっているでしょこんな可愛げのない名前つけないわよ」
「前言った聖歌隊でどうだ」
「それも却下よ、ヒナあんたはなんかない」
「三人の名前から文字をとるというのは?」
「よくあるけど妥当よね」
「ナナさんはナ よしこさんはよ、わたしのヒ」
「はい、ちょっと待った私はアミよアミ、アでもミでも良いからそっち使いなさい」
「じゃあそれも含めてナとヨとヒとミで行こう」
「話聞きなさいよ、」
その4文字を使って可愛く聞こえるものを頑張ってさがした。
時間をかけて、考えれば考えるほど深みにはまりそうになり比較的マシと思われる名前を三人で選び始めた。
「ひよなみで良いと思うど?」
「そうだな、これでいいんじゃないか」
「あぁでもひよこ並のアイドルの略称っぽいですよね」
「卵じゃないだけましでしょ」
「そうだなまぁとりあえずこの名前でしばらくやっていこう」
とりあえず、アイドルの卵よりはアイドルのひよこの方がいという事でひよなみと言うことに私たちで決まったグループ名をナさんがスタッフからメールしてじゃあそれを使おうということになり、正式にグループ名がようやく決まったのだった。