初心にかえって、過去を振り返って
「本当に脱げるんですね、その天使の羽」
「まぁな」
「うわぁ本当に脱いでるよ」
天使の羽根を脱いだナナさんとは対照的に、アミさんの羽根はそのままの様だが、汚れてもいいように体操着には着替えている。
これからやる、遊びというか作業にはその方が適しているのだろう。
しかし、純白の羽根はキラキラとしている、確かにコレを汚されたら怒るだろう。
「しかし、習字なんて学校卒業してからやっていないわね」
「確かに、やる機会なんてそうそうないですからね」
「何だ正月にやらないのか?」
ナナさんに、そういわれるとやる期間はあるが、ただわたし達が面倒なのでやっていないように思えてしまうから不思議だ。
もっとも少数はナナさんのほうで、私達が多数のほうだとは思うけれど。
「やるわけないでしょ、それよりナナ私達の事信用していないわけ?」
「何がだ?」
「羽根、汚すわけないでしょう」
「お前達というより、アミお前を信用していない」
「少しは信用してよ」
「いや、お前悪魔だしな」
「悪魔だからってやらないわよ」
「そこまで嫌がると、フリみたいになっていますよ」
「ヒナのほうが、ある意味信用できないな」
「芸人としては正解なのかもしれないわよ」
「いや私達アイドルだからな、それより始めるか」
そういうとナナさんは、真剣な目つきになり、筆に墨を蓄えさせ、文字を一気に書き上げていく姿はとても綺麗で、文字も綺麗だ。
「おぉ凄い上手ですね」
「それで、なんで初志貫徹?」
「放送室に飾るならこういったものがいいんじゃないか?」
「あぁそうかもしれませんね」
身が引き締まるような思いになってほしいという意味合いだろうか、いやただ単にこういった熟語が好きなだけだろう。
「それじゃあ次は私が書くわよ」
鼻歌でも歌っているように軽快に書いていく、先程のナナさんとは違う適当さが文字に現れている。
見ているだけで、脱力しそうな適当っぷりだ。
書いた文字はがんばる。
「せめて、漢字で書きましょうよ」
「えぇでもこれはこれでいい感じでしょう」
「駄洒落か?」
「違うわよ、私達のラジオってこんな風でしょ」
「まぁ間違っていないかもな」
「そっそっじゃあ次はヒナの番ね」
渡された習字の紙をしいて、筆を手に取って書いてみる、意外と上手くかけたのではないか。
「面白いの期待したのに、字が下手とかさ」
「そこまで下手じゃありませんよ」
「進むか、いい字じゃないか」
「まぁでもなんか普通よね」
「ほっといてください」
三人が書いた字を放送室に飾ると、私の普通の文字もなかなかいい感じに見えてくるから不思議だ。




