反省会に爆弾はいらない
「ミケらんさん、お疲れさまです」
「はい、お疲れさまです」
ラジオの収録が終ると同時に、つかれきった声ながらもこちらにも挨拶を返してくれた、実に最初の初対面の時より距離間は縮まったのではないかと勝手に思ってしまう。
ミケらんさんは、深く息をはいて終わった事を実感しているようで、もし誰も見ていなかったら、緊張と疲れた体を、今のアミさんのように机に突っ伏して、だらけきっていたかもしれないぐらいだ。
「ヒナ、あんた今失礼な事思い浮かべなかった?」
「まさか、私はアミさんに対して常に失礼な事を浮かべていますよ」
「あんたねぇ」
「見苦しいからシャッキとしろアミ」
「はいはい、分かりましたよ」
文句を言いつつ、体をおこすアミさんは、こちらに視線を運び、にやりと笑った。
「ところでヒナ、さっきの収録で、わざと話変えたよね」
「何の事ですか」
「とぼけちゃって」
くすくすと笑うところとか、獲物をいたぶるきまんまんに、もったいぶるところなんかは、悪魔そのもののように思えてくる。
「アイドルになりたい理由よ」
「あれはつまらないと思っただけですから」
やっぱり気づかれていたし、ナナさんにも収録中も、まともと言っていたのに、私はわざと話を変えた。
「やっぱりつまらない質問でしたか」
「もちろんですよ」
肩をおとし、しゅんとする様子があざといミケらんさん。
まぁミケらんさんには、悪いですがアミさんに、つけこまれないようにキッパリと毅然とした態度で、押し通そうとする。
「アミ、あまり無理強いするな」
「はいはい」
ナナさんの注意をアミさんが受けて、話がおわると思ったのですが、その横でやっぱりつまらないんだと、つぶやきながら顔色が少し悪くなるミケらんさん。
そのミケらんさんをどうしたものかと思案するナナさん。
アミさんが話を蒸し返さなければ、こんな事にはならなかったのに、そのアミさんは私になんとかしたらという、笑みを浮かべてくる。
「まぁ実際は私が言いたくなかったということですよ、だから気にしないで下さい」
「はい」
「それに、つまらない話をしてもミケらんさんは、あざとさで、どうにかカバーできますよ多分」
ミケらんさんは意気消沈してしまったようで、それを見たアミさんは苦笑していた。
「ヒナ、あんた慰めたいの突き放したいの?」
「すいません、つい」
「ヒナはたまに毒があるからな」
「たまにじゃない気もするけどね」
ナナさんは、少しため息をつきながらも私と少し泣き出したミケらんさんを見て、何か思いついたようだ。
「ヒナ、明日の収録でミケらんは最後だから、明日二人でラジオしてみろ」
思いつきで投下された爆弾のような発言に私の顔はひきつるばかりで、ミケらんさんをみると困ったような顔と泣きそうな顔をしていた。
その後掃除を終えて、明日の放送の打ち合わせを空き教室でミケらんさんと二人でする間に、のこるナナさんとアミさんは夕食の準備をすることになった。
「困りましたねぇ」
「はい」
「何かアイディアでもありますか?」
弱弱しくクビをふる。
先程の私の失言のようなもので、初対面の時よりは若干縮まったような距離間も開いたようで、話が一向に進まない。
「もうフリートークするしかないですね」
「でもまたつまらない話をしてしまうかもしれないです」
「だからアレは、私が話したくないというだけですよ」
「本当ですか?」
「何をそんなに疑っているんですか?」
「不安なんです、うまく喋れなくて、私が足を引っ張っているんじゃないかと、うまくできていないんじゃないかと」
人気上昇中のアイドルグループにいれば、無名アイドルと違った苦悩があるみたいですが、悩んでいるから、練習のためにこんな所までゲストとして来て、なんの成果も感じなかったら、いやそこでつまらないと言われたら、練習どころの話ではないでしょう。
「つまらないとかそういう事を気にしていたら先に進めないんです、大丈夫です、こっちは引っ張る足も無いぐらいの無名アイドルの番組です、放送されるかどうかも分からない程度の番組です」
どう返答したらいいものかと困っているミケらんさん。
「一度しかいいませんよ」
「えっ」
「私には、天使や悪魔の皆さんのような可愛いさも、美しさもないですよ、地味ですよ、アイドルになりたい理由なんてものは、負けつづけたくないんですよ、負けているからといって負け続ける気なんて、サラサラないです、見返してやるんです、アイドルになんかなれっこないといった先生、旧友、親、その他諸々に、見せ付けてやるんです、私はアイドルになりましたって言うために頑張っているんです。」
悔しさ、不安を振り切るためには頑張るしかない。
顔が赤くなる、こんなアイドルとしてキラキラとした夢も輝く希望もなく、かといって野望とも呼べない、意地だけで私はアイドルを目指している。
「この話を今日の収録時に言うべきでした、ただ私は恥ずかしいから言えませんでしたコレは失敗です、すみませんでした。」
「いえ」
「この番組つまらないとか関係なく好きにしゃべっているんですよ、多分アミさんもナナさんもそうです。」
「はい」
「だから明日つまらないとか、楽しまそうとか考えずに喋っていきましょう」
「はい、わかりました」
少し顔の熱がまだつづいているような気がして、顔を手で仰ぎながら教室をでようとする。
「あっさっきの恥ずかしいので、誰にも言わないで下さい」




