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沈んで浮いて

「ふむ、タイムセールまでは少し時間があるな」

「じゃあしばらく自由行動って事で」

「遅れないで下さいよアミさん」

「わかってるわよ、あんたこそボォーとして遅れないでよ」

「騒ぎを起こすなよ二人とも」

「騒ぎなんてそうそうおきませんよ」

「じゃあ時間にはおくれるなよ」


 気まぐれにブラブラと町を回る。

 廃校となる学校周辺の田舎くささとは一転、一時間近くかけて町へくりだせばそれなりの都会の町なみにの賑やかさがが、さらに賑やかになっている。

 

 もう人が行列をというより、群れを成している場所ができており、何かあったのかと周辺を伺うと人気が出始めている新人アイドルグループがきているようだ。


 ミーちゃんズがいた。

 世間で言うところの可愛いらしい衣装を身にまとい、ファンと触れ合って、笑顔を振りまいている。

 

 向こうは、忙しくしていたし、私とも視線は合っていないし、そもそも、こっちの顔も名前も知らないだろうし、こっちに気づくはずはないけれど。気づかれぬ様に、顔を背け今来た道を引き返すことにした、


 営業といえばそれまでだが、それでも近くの本屋で写真集の手渡しをする、それを間近でみていたら私は冷静ではいられないだろう。


 アイドルとはこういうものだよと見せられたような気がした。


 BGMとして流れているアイドルソングに、お前がアイドルになれるわけ無いだろうと言われているような気がした。


「あぁキミ写真集買わない?今ならサイン会もあるから」


 こっちの気も知らずに、引き止めるように声をかけてきたでぶっとした体型のオジサン、よくよく顔を見なくても、そのたぷっとした頬やお腹はまぎれもなく元社長の神さまだ。

 

 向こうはこっちに気づいていない、いやそもそも忘れてしまったというか覚えてもいないのだろうと思うと、自然に不機嫌になってしまった。


「いらないです」


 そう答えて、不機嫌なまま通り過ぎると後から声が私にだけ聞こえるぐらいに小さな声で元社長は呟いた。


「やっぱり可愛くないねぇキミは」


 私だと知っていて声をかけてきたのかと思うと、本当はもう一度殴りたかったが、また歩き出した。

 元社長は足早に去る私を見て。それをみてさぞや痛快だっただろう。


 人目につかない場所につくと、声なのか叫びなのか分からないものを喉から出した。

  

 息を大きくすいながら、気分を落ちつかせる。

 私は頑張るしかないと言い聞かせ、待ち合わせ場所にいく。 

 

 沈んだままではいられない。

 いつかアイドルとして浮き上がるそう決意した。

 





 

 

 

 

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