前途は多難というものです
廃墟寸前の学校に住み込んで、なにか面白いものをとろうという事らしく、わざわざ学校の電気、ガス、水道等は使えるようにしてくれ、体育館のシャワー室や給湯室に宿直室とまぁ住み込みするには困らないだろうし、好きに使ってくれてかまわないという事だ。
正直、そこにお金をかけるぐらいならもっとまともな企画を思いつけばいいのにと思うが、思いついていたら私のような無名のアイドルの仕事なんて、回ってこないだろう。
「とりあえず掃除だな」
第一回のラジオが終わり、ナナさんに言われて私たち3人はこれから住む場所の掃除をすることにした。
3人が使うところだけといっても、学校というのは一般住宅よりは広い、そりゃあ広いしそもそも住むようにできていないから、住みやすいようになんて考えられていないので不便だ。
階段、廊下、トイレ、体育館のシャワー室や宿直室、掃除をおわらせる頃には、日が暮れてナナさん以外は疲れていた。
「さて私達のグループ名や番組名を決めようか」
「それとりあえず、明日にしましょうよ」
「賛成、今日は疲れたし、急ぐもんじゃないでしょ」
「そんな、たるんでいてどうする、掃除しただけだろ」
そりゃあ生き生きと掃除していたナナさんは疲れていないでしょうし、疲れたそぶりをみせるアミさんも実は所々サボっていた事を私は知っている。
まぁ私も多少サボったので、それを言う事はしなかったけれど。
「とりあえず何かいい名前あるの」
「聖歌隊というのはどうだろう」
「こっちは悪魔だっての」
「そうでしたらアミはなにかあるんですか?」
本気だったらしく、即否定されてナナさんは若干すねてしまったようだが、アミさんは気にすることなく
話を続けた。
「全く浮かばない、ねぇそっちはなんか浮かぶ?」
全くといって思い浮かばない、そもそも芸名とか考えるの面倒なので望月レナという本名を使っているのだから。
首を振りながら、ただ意見を言わないのもどうかと思ってなにか聞いたような提案をだしてみる。
「アイドルグループの名前の基本は、可愛さとかあざとさですから悪魔のアミさんのほうが浮かぶんじゃないんですか?」
「可愛い名前ねぇ、小悪魔ラバーズとか?」
「それはイタイ名前ですね」
「いやそもそも私は天使ですよ アミ」
「天使っぽいって事でラバー入っているでしょ、ラブでカバーしているよ」
「そうなると私入っていないんですが?」
「ラバーズで複数形で入っているでしょ」
「適当ですね」
「こういうの事務所が決めるでしょ、とりあえず後で社長とかに聞いてみればいいじゃん」
事務所に問い合わせるという事で、ひとまずは私らのグループの名前は棚上げすることにして、ラジオ番組の名前を決める事にした。
「これもスタッフに聞いたらいいんじゃない?」
「その場合いつになるんでしょうね」
「確かに聞いても返ってこなさそうですし、もう聖クロス学園放送局でいいんじゃないですか」
「えーありきたりだし、なんていうか地味だよね」
「分かりやすさがいちばんですよ」
「まぁ確かに分かりやすいといえば分かりやすいですね、地味ですが」
「いや、そう地味地味言われると少し傷つきますよ」
「すいません」
「まぁいいですよ、放送されるかすら分からないですし仮の名称と言うことにしましょう」
他の二人もとりあえず納得して、仮とはいえようやくラジオ番組の名前が決まった。
本当にこれを企画したスタッフ達はやる気があるのかと疑いたくなるが、とりあえずアイドルとして仕事はある事はいいことだ。
小さい事からコツコツとやっていけば、そのうち大きな仕事にめぐり合えるかもしれない。
そう思わないとやってられない。