仕事前の緊張という言葉はどこかへ旅立っているようです
「さて今日で20回目だな」
「これ終ったらまた待機ですか」
「そうなるな」
「最終回ね」
「アミさん縁起でもないですね」
終ればだいたい一ヶ月近く、この学校で過ごしている事になるけれど、なんの手ごたえも何も無いというのは正直不安になるが、縁起でもないというのは確かだけどわざわざ言わないでもいいと思う。
「そうだぞ」
「いつ終ってもおかしくないというのは、頭に入れておいたほうが、心の準備できるわよ」
「まぁそれは否定しませんけどね」
「ヒナ、あんたも大概よね」
「そうならないように頑張らないといけないと気を引き締めていく事が重要だ」
「そうですね」
気を引き締めていくといっても、あのラジオは結構ゆるいと思いますが、それをいうのもどうかと思いますし、またアミさんに何か言われるのも、なんかおもしろくないと思っているとアミさんがニヤニヤしながら聞いてきた。
「ヒナ何かいいたそうじゃない」
「いえいえ」
「まっ別にいいけどね」
別にいいのなら突っかからないで下さいよと言いたいが、まぁアミさんはすぐに興味を失ってジュースを飲みだした。
「そうそう、そろそろ買出しにいかない」
「なら収録してからいくか?」
「あぁそれ良いですね、せっかくだから何か食べたいですねぇハンバーガーとか」
給料が振り込まれるのはもう少し先だから、それまでは貯金を切り崩さないといけないのだけど。
それでも学校で自炊ばかりだと、何かファーストフードなどは食べたくなってくる。
「贅沢はできんがまぁハンバーガーならいいんじゃないか」
「バイトしようにも契約でできないしね」
「その分ギャラを多く貰うからいいじゃないですか」
「そういった点だけはいたせりつくせりよね」
「そうですね、その点だけはいたせりつくせりです」
本当に何か裏があるといわれても、それはそうだなとおもうぐらいに金銭面は、無名の私達がありたがいぐらいに羽振りが良かった。
「その点だけというのは言いすぎだと思うがな」
「えーそうですか?」
「学校に寝泊りするという貴重な経験もさせてもらったりするだろう」
「まぁ確かにこの状況は貴重ですけどね」
「ヒナでも、アイドルとしての仕事がもらえているんだから確かに貴重よね」
「うるさいですよ」
「おぉ怖い、怖い」
全然怖がっていないというか、からかっているだけのアミさんに言われるまでもなく、私でもアイドルとしての仕事をさせてもらっているのは確かに貴重だと思う。
まぁアイドルの仕事というには微妙ですが、確かに貴重な体験をさせてもらっていると思えば、あまり悪く言うのもどうだろうと思いますけど、それでもこの放置っぷりは悪態をつくには十分すぎるともいえなくもない。
「まぁとにかく今日も頑張っていくぞ」
「ナナさんによしこさん今日も宜しくお願いしますね」
「よしこって言うな」
「さっきの仕返しですよ」
「いいから放送室に行くぞ」
今日もなかなかに貴重な体験をしているのか、騙されているのかわからないままに、それでも放送室へと向かう。




