私の名前
ー君は特別な力をもっているねー
そう言われたのはついさっき。
10分ほど前、検査室に連れていかれ、検査をされた時のこと。
新しい服に着替えた私はそう言われた。詳しくは教えてくれなかったが、何だか特別という響きが嬉しかった。
「(特別な力ってなんだろう?)」
部屋に案内されてから改めて思う。
案内してくれたひとに礼を言ってベッドに横になる。
「柔らかい…」
ベッドはダブルベッドで、レースで華やかに彩られている。
部屋も広い。教室とやらの約4倍はあるだろう。
リラックスしていると部屋にノックが響く。少し間があいて一人の青年と一人の男性が入ってきた。
「…あ……」
一人は見覚えがあった。あの夜、何者かに襲われそうになったときに助けてくれた青年だ。
もう一人は見たことがない。二人とも同じ、黒いコートを着ている。
「大丈夫?」
青年に優しく声をかけられる。はい、と答えれば柔らかな笑顔で、良かった、と返された。
隣でひとつ咳払いをした男性は続けて
「初めまして。僕はナチ。突然でごめんね。君は特別な力を持っているかもしれないから、ここ、純輝の古城[トワイライト]で預かることになったんだ。だから、これからはここがホームだよ!」
と語った。
ここがホーム。私の帰る場所。
ならあの夜私がいたあの場所は?
何故あそこにいたの?
思い出そうとすると頭が痛くなる。まるで拒絶されているように。
じゃ、僕は忙しいからあとよろしく。
早足でニチさんは部屋を出ていった。しばらく沈黙が続く。
何か言おうかと思った時、彼が口を開いた。
「…僕はリョウ。ここで仕事をしているんだ。」
淡々と語る。私はどうしても気になっていたことを聞いた。
「………特別な力って…何?」
「あぁ、……命を助ける救いの力…だよ。君、名前は?」
名前?改めて考えてみると自分には“名前”が無い事にきがつく。あったのかもしれないが、記憶に無い。
「…わからないの……」
そう言うしか無かった。
「なら僕がつけてあげよう。」
無邪気に笑うその顔は好意しかなかった。
「………ミカなんてどうかな?この国の言葉で“優しさ”“愛”“純粋”って意味があるんだ。…どうかな?」
「ミキ…ステキ……」
優しさ、愛、純粋。素敵な言葉だとおもった。
「ミキ……リョウ…………ありがとう^^」
初めて名前というものをもらった。
ーどこだ?どこにいる?ー
そんな声が聞こえた気がした。
それからというもの、キラという者になった。特別な力を持つもののみがなれ、任務に着ける役職だ。勉強や訓練に必死になってやった。近くの土地の歴史や風習、特徴はもちろん。任務に必要な知識は全てリョウが教えてくれた。物騒ではあるが、剣や弓矢、魔法、銃なども。私に向いていたのは弓矢と魔法だった。リョウはトランプを使う戦い方をするらしい。
風や大地、海、そら、緑。
自然が大好きになった。
私たちはいつも一緒にいた。
まるで兄妹のように。
一年後、私はリョウと一緒に初めての任務に着くことになった。